この記事の要点
- 床のはつりは、目的で取る深さが決まります。 国の改修仕様書は、塗床の除去を「コンクリート表面から3mm程度」、設備の基礎の撤去を「床面仕上げの可能な深さまで」と書き分けています。
- 仕様書に名前が出てくる道具は、打撃・研削・ブラストのものです。 電動はつり器具・電動ピック・ディスクサンダー・ブラスト機械が挙がっており、ウォータージェットを床で使う場合は、特記仕様書で指定します。
- 劣化部を取るときは、鉄筋と残す面をどう扱うかで工法を選びます。 打撃は残す面に微細なひび割れが生じる場合があり、ウォータージェットは鉄筋と健全な部分を残しやすい一方、濁水の処理と下地を乾かす日数を工程に入れます。
床のはつりとは、コンクリートやモルタルの床を、目的の深さまで砕いたり削ったりして取り除く作業です。 改修工事では、仕上げ材を剥がす、床の凹凸を直す、配管を通す溝を掘る、使わなくなった設備の基礎を撤去する、といった場面で必要になり、目的ごとに取る深さも使う道具も変わります。この記事では、国の標準仕様書と国立研究開発法人土木研究所のマニュアルを開いて確かめた内容をもとに、目的と深さごとに工法を整理しました。
取る深さは、目的で決まります
床をはつる作業は、目的ごとに別の項で定められています。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書と土木研究所のマニュアルから、取る深さの書き方を並べました。
| 目的 | 取る深さ(原典の書き方) | 出典 |
|---|---|---|
| 表面の処理(汚れ・付着物の除去) | 取る対象で書く。埃・汚れ・塩分など、被覆材の性能を下げるものを除去する | 土木研究所マニュアル 表面被覆・含浸工法編 3.4 |
| 凹凸・段差の修正 | 不陸の著しい箇所は「目荒し、水洗い等のうえ」補修する。凹凸はサンダー掛けや充填で「コンクリート金ごて仕上げ程度に仕上げる」 | 改修・建築工事編 6.15.5(1)/6.2.2(2)(ア) |
| 塗床の除去 | コンクリート下地は「コンクリート表面から3mm程度」、モルタル下地は「モルタル下地共」 | 改修・建築工事編 6.2.2(1)(イ)(a) |
| 床タイル・フローリングの撤去 | タイル片を撤去する。モルタル下地のフローリングは、モルタル部分ごとはつり取る | 改修・建築工事編 6.2.2(1)(ウ)(エ) |
| 配管の溝 | 「はつり深さは、特記による。」 | 改修・電気設備工事編 2.11.4 |
| 設備の基礎の撤去 | 「床面仕上げの可能な深さまで床をはつる。」 | 改修・電気設備工事編 2.13.1(6)(ウ) |
| 劣化部の除去(断面修復) | ひび割れ部や鉄筋腐食部は全て除去し、鉄筋が腐食している場合は鉄筋裏まで | 土木研究所マニュアル 断面修復工法編 3.2 |
表面を整える処理から、鉄筋の裏まで取る除去まで、同じ「床のはつり」でも深さの幅は大きく開いています。塗床を剥がす段取りはエポキシ樹脂塗床の除去方法に、劣化部をどこまで取るかは断面修復のはつり深さにまとめました。橋の床版は、橋梁の床版はつりとウォータージェットで扱っています。
凹凸を直すときの目安になる数値は、新築の仕様書にあります。公共建築工事標準仕様書(建築工事編)の表6.2.5は、コンクリートの仕上りの平たんさを、仕上げの厚さに応じて3つの種別に分けた表です。
| 種別 | コンクリートの内外装仕上げ | 平たんさ |
|---|---|---|
| a種 | コンクリートが見え掛りとなる場合又は仕上げ厚さが極めて薄い場合その他非常に良好な平たんさ及び表面状態が必要な場合 | 3mにつき7mm以下 |
| b種 | 仕上げ厚さが7mm未満の場合その他良好な平たんさが必要な場合 | 3mにつき10mm以下 |
| c種 | 仕上げ厚さが7mm以上の場合又は下地の影響を受けにくい仕上げの場合 | 1mにつき10mm以下 |
同じ仕様書の15.4.2は、床コンクリートの直均し仕上げについても、幅木の張付け方向と仕上り面のむらを除いて、この表によるとしています。仕上げが薄いほど、下地に求められる平たんさは厳しくなります。
工法は4つ:打撃式・研削・ショットブラスト・ウォータージェット
床を削る・はがす方法は、壊し方で分けると次の4つです。
| 工法 | 取り方 | 主な目的 | 出てくるもの |
|---|---|---|---|
| 打撃式のはつり(ピックはつり) | 電動ピック・ブレーカ・チッピングハンマー等で叩いて砕く | 仕上げ材の撤去、配管の溝、基礎の撤去、劣化部の除去 | コンクリートガラ・粉じん |
| 研削 | ディスクサンダー等の回転する工具で表面を削る | 接着剤の除去、目荒し、凹凸の修正 | 削り粉 |
| ショットブラスト | 研削材を床面に投射して表面を削る(仕様書では「ブラスト機械」) | 塗床の除去、表面の処理 | 削り粉・塗床片 |
| ウォータージェット | 超高圧の水の水圧で削る | 表面の処理から劣化部の除去まで(ガンで取れる厚みが変わる) | 削りカスを含む濁水 |
改修仕様書の床の項を見ると、打撃・研削・ブラストの道具が並んでいます。床タイルとモルタル下地のフローリングには「電動はつり器具」、塗床には「ケレン棒、電動ケレン棒、電動はつり器具、ブラスト機械等」、接着剤には「ディスクサンダー等」とあります。無筋コンクリート等に配管の溝を掘る場合について、機械設備工事編は次のように定めています。
原則として、はつりを行う箇所にカッターを入れた後、手はつり又は電動ピックで行う。
(国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)」5.1.4(1)(ア))
ウォータージェットを床で使う場合は、特記仕様書で指定することになります。
表面の処理:乾式は粉じん、湿式は乾かす日数を引き受けます
表面の汚れや付着物を取り、次に塗る材料が付きやすい面をつくる処理は、土木研究所のマニュアルで「素地調整工」と呼ばれるものです。コンクリート構造物の表面を被覆する前の処理として、方法を湿式と乾式に分けて次のように書いています。
素地調整工の施工方法としては,水を使用した湿式処理方法と,ブラスト工法や動力工具工法(ディスクサンダーなど)などの乾式処理方法とがある。
湿式処理方法では,水の使用により施工面が湿潤状態となるため,適用する補修工法(材料)によっては,施工面を乾燥させる必要がある。また,乾式処理方法では,粉じん等が発生するため,保護メガネ,防塵マスクなどの着用が必須である。
(国立研究開発法人土木研究所「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」表面被覆・含浸工法編 3.4)
研削とショットブラストは乾式なので、処理した面は乾いたまま次の工程へ渡せます。代わりに削り粉が発生し、集じんと保護具が欠かせません。ウォータージェットは湿式で、粉じんは舞いにくくなる一方、塗る材料によっては下地を乾かす日数が要ります。
ウォータージェットで表面を粗くする処理と、止める位置の決め方は、高圧洗浄でコンクリートは削れるかにまとめました。
劣化部の除去:鉄筋と残す面をどう扱うかで選びます
コンクリートの劣化部を取る方法について、土木研究所のマニュアルは次のように書いています。
はつりの方法には,2.3 施工方法の設定で述べたように,主にチッピングハンマー等による人力はつり方法や,ブレーカやウォータージェットによる機械はつり方法がある。チッピングハンマーやブレーカのような打撃系のはつり方法の場合,鉄筋等の鋼材を痛めないように注意する必要がある。また,打撃による衝撃で既存コンクリートに微細なひび割れが生じることによって付着性能が低下する場合があるため注意が必要である。
(国立研究開発法人土木研究所「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」断面修復工法編 3.2)
ウォータージェットは、当たった水の水圧で表面にひびを入れ、そのひびに入り込んだ水が内側から押し広げる水くさび作用で削ります。劣化して隙間が増えた部分から先に取れていく仕組みです。健全な部分は水が入り込みにくいため残りやすく、削った面に微細なひび割れを残しにくくなります。金属は内部に隙間が無く水が入り込めないので、鉄筋は残り、落ちるのは付いたサビと脆弱物です。同じマニュアルは、浅い部分をブレーカで取り、付着界面に近い部分だけにウォータージェットを使う工夫にも触れています。
ウォータージェットで取れる厚みは、先端のガンで変わります。目安は、面をまんべんなく削るハンド回転ガンで10mm、狙った箇所を深く掘るハンド直射ガンで300mmです。ハンドガンの近辺では、音の大きさが最大で約120dBに達します。打撃工具と違って躯体振動音が発生しないので、防音シートで囲う対策がその場で効く工法です。(関連:ウォータージェットの装置構成/ウォータージェットの騒音・振動・粉じん)
丸ごと撤去してよい範囲なら、打撃式のほうが速く、段取りも軽くなります。ウォータージェットが効くのは、鉄筋と健全なコンクリートを残したい床です。(関連:ウォータージェットはつりとは)
配管の溝と設備の基礎:埋設物を調べ、仕上げまで考えた深さで止めます
既存の床に配管の溝を掘る作業と、設備の基礎を撤去する作業は、設備工事の改修仕様書に定めがあります。電気設備工事編の2.11.1は、はつり作業の注意として埋設配管と主鉄筋への損傷を挙げ、放射線透過検査等で埋設物を調べる場合は特記によるとしています。電動ドリル等の刃が鉄筋や金属配管に触れたときに、電源を自動で遮断する装置を使うことも、同じ項に書かれた要件です。溝のはつり深さは2.11.4で特記によるとされ、鉄筋等が露出した場合は監督職員と協議します。
設備の基礎を撤去するときの深さについては、電気設備工事編に次の一文があります。
既設基礎の撤去は、床面仕上げの可能な深さまで床をはつる。
(国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」2.13.1(6)(ウ))
機械設備工事編の5.1.5(5)も、基礎を撤去したあとのはつりは「床仕上げを考慮した深さまで行う」としています。基礎を取るだけで終えず、新しい仕上げ材を載せられる深さまで床を下げる、という組み立てです。どちらの編も、はつりガラやほこり・粉じんの飛散防止を求めています。
ウォータージェットが向くのは、残すものがあり、水を受けられる床です
ウォータージェットは水だけを使う湿式の工法で、研削材も薬剤も使いません。火花が発生しないため、可燃物を扱う場所でも選択肢の一つになります。床で使うときに先に決めるのは、次の3つです。
- 排水:床の排水溝やピットに流せるか、回収して場外へ運ぶか
- 乾かす日数:次に塗る・張る材料が求める乾燥の日数を、工程に取れるか
- 装置を据える場所:超高圧水発生装置は4t車に搭載するため、車両を寄せられる位置と、そこからホースを延ばす距離
削りカスを含んだ水は、そのまま流せるとは限りません。何を削ったかで扱いが変わります。(関連:ウォータージェットの排水処理)
この3つが組めない床や、丸ごと撤去してよい床には、打撃式や研削・ショットブラストが向いています。水平な広い面を機械で削る装置については、ウォータージェットはつりの機械で紹介しました。
費用は、深さ・範囲・段取りで決まります
床のはつりの費用は、面積だけでは決まりません。取る深さと範囲、床の状態、水や粉じんの扱い、装置を据える場所、作業できる時間帯で日数が変わり、金額は日数と連動します。見積書のどこを見れば比べられるかはウォータージェット工事の費用は何で決まるのかに、土木の積算でウォータージェットの項目を探す手順はウォータージェットはつりの積算・歩掛にまとめています。装置を借りて自社で施工するときの体制・汚泥・給水の要件は、超高圧洗浄機はレンタルか、専門業者かで整理しました。
着工前に確認すること
- 目的を1つに決める。 表面の処理か、仕上げ材の撤去か、溝か、基礎の撤去か、劣化部の除去か。取る深さも道具も、ここで変わります
- 特記仕様書で、工法と深さの指定を読む。 塗床の除去工法も、溝のはつり深さも「特記による」とされています
- 埋設物を調べる。 配管・配線・鉄筋の位置を、図面と調査で確かめてからはつります
- 次に載せる仕上げを決める。 仕上げが薄いほど、下地の平たんさは厳しくなります。湿式を選ぶなら、乾かす日数も工程に入れます
- 有害物質の有無を確かめる。 改修仕様書は、改修部で石綿・鉛等を含む材料を見つけた場合、監督職員と協議するとしています(6.1.4)
まとめ
床のはつりは、目的で取る深さが決まり、深さで使う道具が決まります。 国の改修仕様書は、塗床の除去を表面から3mm程度、設備の基礎の撤去を床面仕上げの可能な深さまでと書き分け、配管の溝の深さは特記に委ねています。
表面の処理なら、乾式の研削・ショットブラストか、湿式のウォータージェットかを、粉じんと乾燥のどちらを引き受けられるかで選びます。劣化部の除去では、打撃式は段取りが軽く、ウォータージェットは鉄筋と残す面を傷めにくい工法です。濁水の処理と乾かす日数が組める床なら、ウォータージェットは選択肢に入ります。
ご相談ください はつる目的と深さ、特記仕様書、床の写真を見せていただければ、ウォータージェットで段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 打撃式や研削のほうが合う床なら、そのようにお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。
本記事で参照した資料
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」令和7年3月21日(最終改定 令和7年5月12日)(6.1.4 有害物質を含む材料の処理/6.2.2 工法/6.15.5 下地処理)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」令和7年3月21日(最終改定 令和7年5月12日)(第1編 第2章 第11節 はつり工事/第13節 基礎工事)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)」令和7年11月5日(第2編 第5章 はつり及び穴開け)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」令和7年3月21日(最終改定 令和7年5月12日)(6.2.5 表6.2.5 コンクリートの仕上りの平たんさの種別/15.4.2 床面の仕上り)
- 国立研究開発法人土木研究所「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」(土木研究所資料第4433号)令和4年12月(表面被覆・含浸工法編 3.4 施工工程/断面修復工法編 3.2 既存コンクリートのはつり)
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。仕様書は改定されます。 工事の計画には、発注時点の最新版と、その工事の特記仕様書をご確認ください。