ウォータージェットの騒音・振動・粉じんについて、実際に何が発生し、何が発生しないのかを整理します。騒音は「打撃音」と「躯体振動音」に分けて考えると、ピックはつり(ブレーカーやチッパーなど打撃工具によるはつり)との違いがはっきりします。
先に要点です。
- 噴射音と装置の運転音は発生します。ハンドガンの近辺では、音の大きさが最大で約120dBに達します
- 打撃工具と違い、躯体を伝わって遠くへ広がる音(躯体振動音)は発生しません。音が発生源の周りに集中するため、防音の養生がその場で効きます
- 水を使う湿式のため、乾いた粉じんは舞いにくくなります。代わりに水の飛散・ミスト・濁水が出るので、その段取りが要ります
騒音は「打撃音」と「躯体振動音」に分けて考えます
工事の音には、道具や装置そのものから出る音のほかに、打撃の衝撃が躯体(構造物)を伝わり、離れた場所で聞こえる音があります。ブレーカーやチッパーによるピックはつりでは、この躯体振動音が発生します。現場から離れた部屋や隣の棟まで届くのは、主にこの音です。
ウォータージェットは、ノズルから噴射した水で削り、対象物に道具を当てません。打撃がないため、躯体振動音が発生しません。ハンドガンの近辺の音は最大で約120dBに達し、現場のすぐ近くで比べれば打撃工具と大差ありません。違いは音の大きさではなく、広がる範囲です。音が発生源の周りに集中しているので、防音シートで囲う対策が、その場で効きます。作業時間帯の調整も、他の工法と同様に使えます。
音の出どころは2つです

1つ目は、噴射そのものの音です。 ウォータージェットは、水を200MPa以上に昇圧し、直径0.1〜3mmのノズルからマッハ1〜3の速さで噴射する工法です。その水が対象物に当たる音は決して小さくなく、ハンドガンのすぐ近くでは大きな音になります。(関連:ハンドガン職人の世界)
2つ目は、装置の運転音です。 超高圧水発生装置やエアーコンプレッサーは、施工中ずっと動いています。装置は現場に据え置いたまま稼働し、削っていない時間も運転音が発生します。装置をどこに据えるかが、近隣への影響を大きく左右します。
目安として、ハンドガンによる施工では約120dB、削りカスと洗浄水をその場で吸い込む吸引型アクアブラストでは約80dBとされています。ただし置き換えられるのは削れる深さ3mm程度の表面処理に限られ、対象物や形状にもよります。条件をうかがったうえでのご提案になります。(関連:メリットと注意点)
同じ装置でも、対象物・面積・周囲の反射・作業時間帯によって聞こえ方は変わります。現場でこの通りになるとお約束できる数字ではありませんので、方式による差の目安としてご覧ください。
振動と粉じんは、実際どうなのか
振動は、打撃で壊す工法ではないため、構造物に伝わる分が打撃工具より小さくなります。稼働中の施設や供用しながらの補修で選ばれるのは、この点が理由のひとつです。ただし装置は動いていますので、据付場所によっては装置側の振動が伝わります。「建物の中にまったく振動が伝わらない」と考えるのは正確ではありません。(関連:コンクリートの除去・はつり)
粉じんは、水で湿らせながら削るため、乾いたものは舞いにくくなります。乾式のピックはつりでは、乾いた粉じんが滞留し、風に乗って運ばれます。浄水場のように飲み水を扱う施設では、乾いた粉じんが立たないこと自体が利点になります。アスベスト除去で湿式が有効とされるのも同じ理由です。(関連:アスベスト除去と湿式の強み)
代わりに出るのが、水の飛散、湿ったミスト、水を含んだ削りカスです。遠くまでは飛びませんが、養生をしなければ周囲の車両や設備に付着します。施工後には濁水も残ります。(関連:濁水の処理)
近隣への配慮として、実際に行うこと
現場ごとに詰めるのは、次のような内容です。
養生の範囲を決める 水やミストの届く範囲を見て、シートや仮囲いをどこまで張るかを決めます。近くに車両・機器・洗濯物があるかで必要な範囲は変わります。
装置の据付位置を決める 音源を近隣から離します。作業場所は変えられなくても装置の位置は動かせることが多く、それだけで印象が変わります。
作業時間帯を調整する 早朝・夜間を避ける、昼休みは止める、通院や登下校の時間帯を外す――といった調整です。時間帯を絞ればそのぶん工期は延びますので、見積もりの前に決めたい項目です。(関連:工期の考え方)
事前に周知する いつから何日間、どのような音が出るのかを、発注者とご相談のうえ近隣にお知らせします。始まってから説明するより行き違いになりにくい、というのが実感です。
飛散を抑え、水の行き先を決めておく 吸引型の装置を使う、水の流れる経路を決める、濁水を回収して処理する。この段取りを施工計画に織り込みます。(関連:施工の安全と体制)
いずれも条件次第で工期にも費用にも効く項目です。見積もりの前にうかがっておきたいと考えています。(関連:現場条件チェックリスト)
工法の説明を受けるときに、確かめておきたい条件
打撃工具より振動が小さいのは、一般論としては事実です。ただし「この現場でどう聞こえるか」は、条件で決まります。打ち合わせの段階で次の点を確かめておくと、判断がしやすくなります。
- 装置はどこに据えますか(音源がどこに来るか)
- 1日のうち、音が出るのはどれくらいの時間ですか
- 養生はどこまで張りますか
- 水はどこへ流れて、どう回収しますか
- 作業時間帯の希望に合わせられますか
どう答えるかそのものが、判断材料になります。(関連:業者の選び方)
条件が厳しい現場ほど、事前の協議が要ります。病院や学校では作業できる時間帯が限られ、住宅密集地では距離が近いぶん周知の仕方が大切になります。稼働中の工場やプラントでは生産を止められないため、他工種との調整が前提です。なお、この工法は火を使わないため火花が出ず、可燃性ガスが想定される環境でも施工しやすい面があります。
サンテックは1993年(平成5年)の設立以来、この工法だけを手がけてきました。日本ウォータージェット施工協会の設立にも参画し、実績は年平均92物件、累計1,500件以上。橋梁・プラント・下水道・道路・滑走路など幅広い分野に対応しています。条件の厳しい現場も含まれますので、うかがった条件では難しいとお伝えすることもあります。(関連:施工事例一覧)
まとめ
ウォータージェットは、噴射音と装置の運転音が発生する工法です。同時に、躯体を伝わって遠くへ広がる躯体振動音が発生しない工法でもあります。現場のすぐ近くの音の大きさは打撃工具と大差なくても、広がる範囲が違います。
騒音・振動・粉じん・飛散は、防音シート、装置の据付位置、作業時間帯の調整、養生といった対策で、他の工法と同様に抑えられます。その現場の条件で何が効くかを、着工前に詰めておくことが大切です。
ご相談ください 「近隣が近いので、この現場で使えるだろうか」という段階からで構いません。周囲の状況、作業できる時間帯、譲れない条件をうかがったうえで、対応できるかどうかも含めて率直にお答えします。(関連:ご相談から施工までの流れ)