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工法解説

ウォータージェットはつりとは ― 打撃のはつりとの違い、削る深さ、工期の考え方

2026-08-12 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 「はつり」には、打撃で砕くものと水で削り取るものがある。壊し方が違うので、削ったあとに残るものが違う。
  2. ウォータージェットが効くのは「残すものがあるとき」。健全なコンクリートと鉄筋を残しながら、劣化した部分だけを取り除ける。
  3. ただし水の段取りが必ず要る。丸ごと撤去してよい範囲なら、打撃のはつりのほうが速く、段取りも軽い。

補修工事で「はつり」と言うとき、実は性質の違う2つの工法が同じ言葉で呼ばれています。

ひとつは、ブレーカーやチッパーで叩いて砕く従来のはつり。この記事では「ピックはつり」と呼びます。もうひとつが、超高圧の水で削り取るウォータージェットはつりです。同じ「劣化部を除去する」という目的でも、壊し方が根本的に違うため、残るものが違います。

この記事では、発注する側が判断に使えるところまで整理します。工法の違い、どこまで削るかの決め方、出来形をどう確認するか、そして工期を何が左右するかまでを扱います。

まず結論

打撃のはつり ウォータージェットはつり
壊し方 ブレーカー等で叩いて砕く 超高圧の水で削る
健全な部分 微細なひびが入りやすい 残しやすい
鉄筋 傷つく・曲がるおそれ 削れない。サビだけ落とせる
粉じん 多い 湿式のため抑えやすい
水の段取り 不要 給水と排水の処理が必須
複雑な形状 苦手 非接触で曲面・入隅にも対応
向く場面 単純な撤去・解体 断面修復・補強下地・繊細な除去

※現場条件により結果は異なります。

どちらが優れているという話ではありません。 丸ごと壊してよいならブレーカーのほうが速く、段取りも軽い。残すものがあるときにウォータージェットが効きます。

「水で削る」とはどういうことか

ウォータージェットという言葉は、まったく別のものを指す場合があります。金属を切る製造業の加工機、歯の間を洗う器具、船の推進装置——検索すると全部出てきます。ここで扱うのは土木・建築の施工で使う超高圧ウォータージェットです。

仕組みは単純です。水を 200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで押し上げ、直径0.1〜3mm という髪の毛ほどの細いノズルから、マッハ1〜3 の速さで噴射します。この水が対象に当たると、2つのことが同時に起こります。

水圧 ― ぶつかった瞬間、水の勢いが押しつける力に変わり、表面を壊してひびを生みます。 水くさび作用 ― そのひびに水が入り込み、内側から押し広げてはがしていきます。くさびで木を割るのと同じです。

装置は、超高圧の水をつくる発生装置をトラックに積んで現場へ持ち込み、そこからホースを延ばして先端の道具に水を送ります。現場で人が持って使うのが「ハンドガン」です。

トラックに積んだ超高圧水発生装置から、超高圧水切替装置を経てホースが延び、作業者がハンドガンを構えている構成図。別にエアーコンプレッサーが接続されている

なぜ劣化部だけが取れて、鉄筋は残るのか

ここがこの工法の核心です。

コンクリート側 ― 健全でしっかりしたコンクリートは削れにくく、劣化して隙間が増えた部分から先に取れていきます。水が入り込む隙間があるかどうかで、効き方が変わるためです。だから「劣化部を選んで除去する」ことが成り立ちます。

鉄筋側 ― 金属は内部に隙間がなく、水が入り込めません。水くさび作用が起きないため、母材そのものは削れません。表面に付いたサビや脆弱物だけが落ち、鉄筋は残ります。切ったり曲げたりするおそれが小さく、そのまま防錆処理と断面修復へ進めます。

施工前の鉄筋。コンクリートの付着物が白く残り、表面が粉をふいたような状態になっている

同じ鉄筋の施工後。付着物とサビが落ちて黒い地金が露出し、節(リブ)の形がはっきり見えている。曲がりや欠損はない

上の2枚は、同じ鉄筋の施工前と施工後です。付着物とサビだけが落ち、鉄筋そのものは残っているのが分かります。

もうひとつ、補修の品質に直結する違いがあります。打撃で壊す工具は、削り取った面の内側に微細ひび(マイクロクラック)を残すことがあります。所定の深さまで取れていても、その下に傷が残れば弱点になります。ウォータージェットはこれを残しにくいため、新しく打つコンクリートと一体化しやすい下地になります。(関連:ウォータージェット工法の仕組み)

どこまで削るか ― ここが一番むずかしいところです

補修の目的は、劣化した部分を取り除き、健全な部分を残すことです。ところが「どの深さまで取れば健全な層に届くか」は、現場ごとに違います。

中性化(コンクリートがアルカリ性を失い、鉄筋が錆びやすくなる現象)の進み方は、同じ構造物でも面によって変わります。雨がかりの有無、日照、風の当たり方で差が出るためです。図面に一律の深さを書いても、その通りにならないことがあります。

正直に申し上げると、削り始めてから「思っていた状態と違う」ということは起こります。事前の調査で見当はつきますし、私たちも図面や調査結果から段取りを組みます。ただしそれは出発点であって、答えではありません。

だからこそ、想定と違ったときにどう扱うかを着工前に決めておくことをおすすめしています。範囲や深さが当初と変わるなら、費用と工期への影響を含めて相談したうえで進める。この取り決めがあるかどうかで、着工後のやり取りがまったく変わります。

出来形をどう確認するか

「劣化部だけを取りました」は、どうすれば確かめられるのか。発注者側からすれば、ここが一番知りたいところだと思います。

実際の現場では、削った面を打音とテストハンマーで確認し、脆弱な部分が残っていないかを見ます。もろい部分が残っていれば音で分かりますし、健全な層に届いていれば手ごたえが変わります。あわせて鉄筋の露出状況、サビの落ち具合、次工程で必要な清浄度を目視で確認します。

この確認を誰がいつ行い、どの状態で次工程に引き渡すかは、着工前に決めておくべき項目です。断面修復材を打つ側からすれば、下地の状態がそのまま仕上がりの耐久性になります。(関連:除去深さと中性化層の考え方)

何日で終わるのか

工期は「削る速さ」×「1日に削っていられる時間」で決まります。面積は入口の情報にすぎません。

削る速さは方式で変わります。削りカスと水をその場で吸い込む吸引型アクアブラスト(約80㎡/日・2ガン)や、鋼構造物の壁面を自走するマグネットクローラー(150㎡/日・1台)という数字もありますが、これらは削れる深さ3mm程度の表面処理や塗膜除去の目安であり、深く斫る作業には使えません。 はつりは人の手でノズルを追っていくハンドガン施工が中心で、深さと劣化の程度によって進む速さが変わります。

目安になる実数を挙げます。上下水道施設の劣化部除去(深さ20mm程度)では、サンダーによるカップ掛けが1人あたり1日4〜5㎡。ウォータージェットは最低3人の班で施工し、1日40〜80㎡が目安です。深さ20mmなら40㎡程度と見ています。

ここで効いてくるのは、単価よりも人数です。同じ40㎡を1日で仕上げようとすると、サンダーでは8人から10人が要ります。その人数を毎日揃えるのは、現実には難しい。ウォータージェットは3人で同じ面積を進められるので、実質的には倍以上の速さで進み、工期の短縮につながります。

金額は、最低でも同程度。劣化が進んだ現場ほど差は開き、案件によってはウォータージェットのほうが安くなります。

そして見落とされやすいのが、1日に実際にノズルを当てていられる時間です。段取り、養生、給水、排水、他工種との入れ替わりに取られるほど、削る時間は短くなります。

打撃のはつりより必ず速い、ということはありません。 単純に壊してよい範囲であれば、打撃のほうが速く段取りも軽い場面があります。(関連:工期はどう決まるか)

発注前に押さえておきたい3つ

水をどこから引き、どこへ流すか。 ウォータージェットで最も重いのはここです。出てくるのは水ではなく、削りカスが混ざった濁水です。そのまま流せるとは限らず、回収・処理や産業廃棄物としての処分が必要になる場合があります。削る作業より水の処理のほうが手間の大きい現場もあります。(関連:排水・濁水の処理)

音は発生します。 ハンドガンの近辺では最大で約120dBに達します。吸引型アクアブラスト(約80dB)もありますが、置き換えられるのは表面の浅い処理に限られ、深く斫る作業の音は下げられません。他の工法と同じように、防音シートの設置や作業時間帯の調整で抑えます。(関連:騒音・振動・粉じんの実際)

機材が入るか。 発生装置はトラックで持ち込みます。車両をどこまで寄せられるか、ホースをどこまで延ばせるかで段取りが変わります。逆に、人が手で持って施工できるため、ロボットや自動装置が入れない狭所にも対応が可能です。当社では、約60cm角・高さ約2mの塔の内部という現場も手がけました。

劣化部を取るはつりの金額は、市場単価ではなく見積で決まります

土木の積算基準書には、ウォータージェットの市場単価として「コンクリート表面処理工(ウォータージェット工)」があります。対象は、健全なコンクリートの表面を粗にする処理です。劣化部の除去を目的とするはつりは、この市場単価が適用できない「特別調査」の扱いで、金額は見積で決まります。(関連:ウォータージェットはつりの積算・単価・歩掛)

見積を比べるときに、金額と並べて見たいのが作業の中身です。

同じ「はつり」でも、ここが違えば出来上がるものは変わります。

まとめ

ウォータージェットはつりの価値は、残すものがあるときに効くという一点にあります。健全なコンクリートと鉄筋を残しながら劣化部だけを取り除けるため、断面修復や補強の下地では仕上がりの耐久性に直結します。

一方で、水の段取りが必要で、音も出て、工期が必ず短くなるわけでもありません。丸ごと撤去してよい範囲なら、打撃のはつりのほうが合理的です。

判断の分かれ目は「何を残したいか」です。ここが決まれば、工法はほぼ決まります。

ご相談ください 「打撃のはつりで進めるべきか、ウォータージェットが向いているか」という判断からお手伝いします。図面や現場写真をもとに、当社で対応が難しい場合や、別の工法のほうが良い場合はそのようにお伝えします。株式会社サンテックは1993年の設立以来この工法だけを手がけ、年平均92物件・累計1,500件以上の現場を重ねてきました。他社で断られた案件のご相談も日常的にお受けしています。

よくある質問

ウォータージェットはつりと、ブレーカーによるはつりは何が違いますか?
壊し方が違います。ブレーカーは打撃で砕くため健全な部分にも微細なひびが入りやすく、鉄筋を傷めるおそれがあります。ウォータージェットは水で削るため、もろくなった部分だけが先に取れ、健全なコンクリートと鉄筋を残せます。
鉄筋は残せますか?
残せます。金属は内部に隙間がなく水が侵入できないため、鉄筋そのものは削れず、付着したサビや脆弱物だけが落ちます。そのまま防錆処理と断面修復へ引き渡せます。
どこまで削るかは、どうやって決めるのですか?
事前の調査で見当をつけ、削りながら対象の状態を見て調整します。中性化の進み方は同じ構造物でも面ごとに違うため、一律の深さでは決められません。想定と違ったときの扱いを着工前に決めておくことをおすすめしています。
打撃のはつりより工期は短くなりますか?
一概には言えません。削る速さだけでなく、給水と排水の段取り、養生、作業できる時間帯によって1日に進む量が変わります。単純な撤去であれば打撃のほうが速い場面もあります。

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