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工法解説

石綿含有仕上塗材の除去とウォータージェット工法|公的マニュアルでの位置づけと、電動工具では届かない部位

2026-08-12 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 超高圧水洗工法(100MPa以上)は、国のマニュアルが挙げる15種類の処理工法のうち⑥として正式に位置づけられている。
  2. ディスクグラインダーでは物理的に除去できない部位があり、マニュアルは高圧水洗工法等の併用が必要と明記している。
  3. ただし「水を使えば養生が要らなくなる」わけではない。廃水は全量回収して処理する必要があり、負担は別の形で増える。

石綿含有仕上塗材の除去について調べると、工法の名前は出てくるものの、それが公的にどう位置づけられているのかまでは、なかなか書かれていません。

この記事では、厚生労働省と環境省が出しているマニュアルの原文を引きながら、超高圧水洗工法(ウォータージェット)がどこに置かれ、何が求められ、何が求められていないのかを整理します。都合の良い部分だけを取り出すことはしません。 水を使う側の負担も、そのまま書きます。

なお、ここで扱うのは仕上塗材(建物の外壁や内壁に吹き付け・塗り付けで施工された仕上げ材)です。吹き付けアスベストとは別の分類なので、混同しないようご注意ください。

参照する資料

本記事で引用するのは次の1点です。

文書名 建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル
発行 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課/環境省水・大気環境局環境管理課
版 令和3年3月策定(令和8年2月改正)

以下、引用箇所には印刷ページを添えます。

15種類の処理工法のうち、どこに位置づけられているか

マニュアルは、仕上塗材の処理工法として15種類を挙げています(p.208)。もとは平成28年4月に建築研究所と日本建築仕上材工業会が作成した技術指針によるものです。

そのうち、超高圧水を使うものは3つです。

分類 工法名 圧力の定義
⑥ 超高圧水洗工法 100MPa以上
⑦ 集じん装置付き超高圧水洗工法 100MPa以上
⑪ 剥離剤併用超高圧水洗工法 100MPa以上

比較のため、水を使う工法はほかに ①水洗い工法、④高圧水洗工法(15MPa以下、30〜50MPa程度)、⑤集じん装置付き高圧水洗工法、⑩剥離剤併用高圧水洗工法 が並びます。「高圧」と「超高圧」は、マニュアル上で明確に別の分類です。

サンテックが用いる超高圧ウォータージェットは水を200MPa以上に昇圧するものなので、分類上は⑥または⑦にあたります。

★ ディスクグラインダーでは、届かない部位があります

ハンド直射ガン。長い延長パイプの先に噴射口があり、本体には自社で付けたカバーと肩当てが見える

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。マニュアルは処理工法の選定について、こう書いています(p.212)。

狭小部、入隅部、出隅部など(平面部でない部分をいい、窓や柱型、軒先部分がある)工法によっては除去できない部位がある。例えばディスクグラインダーを用いる場合は、刃が当てられない入隅部などは除去できない。この場合、他の工法(高圧水洗工法や超音波ケレン工法等)を併用して除去を行う必要がある。 複数の工法を併用する場合、適切な粉じん飛散防止措置が実施されるよう十分留意すること。

「あったほうがよい」ではなく「必要がある」と書かれています。

ディスクグラインダーは平面を削るには効率的ですが、刃が円盤である以上、入隅(内側の角)には物理的に当たりません。窓まわり、柱型、軒先——建物には平面でない部分が必ずあります。

ウォータージェットは水を噴射する非接触の工法なので、刃の形に縛られません。ノズルの向きを変えれば、角にも当てられます。サンテックが人の手でハンドガンを扱う施工を続けているのも、この「届く」を成立させるためです。過去には約60cm角・高さ約2mの塔の内部という現場も手がけました。

注意点:マニュアルは「高圧水洗工法や超音波ケレン工法等」と併記しています。超高圧水洗だけが指名されているわけではありません。

「電動工具を使用する除去には含まれない」の正確な意味

もうひとつ、よく引用される記述があります(p.60)。

「石綿含有仕上げ塗材を電動工具を使用して除去する作業」とは、ディスクグラインダー又はディスクサンダーを用いて石綿含有仕上塗材を除去する作業をいい、高圧水洗工法、超音波ケレン工法等により石綿含有仕上塗材を除去する作業は含まれない。

これは石綿則第6条の3に関する説明で、同条は電動工具で除去する作業について「ビニルシート等で隔離した上で常時湿潤な状態に保つこと」または「除じん性能を有する電動工具の使用」等の措置を求めています。高圧水洗工法はこの条文の対象外、という意味です。

ただし、養生が不要になるわけではありません

ここは誤解が生まれやすいところなので、はっきり書きます。大気汚染防止法の側の記述です(p.25)。

「電気グラインダーその他の電動工具」とは、ディスクグラインダー又はディスクサンダーをいうが、高圧水洗工法、超音波ケレン工法等を用いる場合についても各作業現場の状況に応じて湿潤化に加えて養生を行うことが望ましい。

「ウォータージェットなら養生が要らない」は誤りです。 また同じ箇所に「作業場の負圧管理は要しない」とあり、そもそもこの条項は負圧の話をしていません。負圧隔離が不要になる、という説明も的外れです。

工法を変えれば要件がまるごと消える、という話ではなく、かかる条文が変わるだけだとご理解ください。

水を使う側の負担は、別の形で増えます

マニュアルは高圧水洗工法の留意事項として、こう書いています(p.214)。

水を使って除去するため、未処理の廃水が作業場外へ流出・地下浸透しないようすべて回収し、適切に処理した上で放流する必要がある。(中略)集じん装置付き超高圧水洗工法は、作業場所からの飛散というより、吸引バキューム排出口及び排水処理装置からの飛散に注意を要する。

つまり、飛散のリスクが消えるのではなく、注意すべき場所が移動します。 作業面から、排水処理装置のほうへ。

実務上は、水が集まる形を先に作ること(養生シート・堰・ポンプ)、回収した廃水の処理方法、沈殿物の扱いまでを施工計画に織り込む必要があります。削る作業より、水の段取りのほうが手間の大きい現場もあります。(関連:排水・濁水の処理)

今日、10分で確認できること

工法を決める前に、次の3つを手元で確かめてみてください。

  1. 対象が「仕上塗材」か「吹き付け材」かを図面と現況写真で確認する。 分類が違えば適用される条文も工法も変わります。事前調査の結果報告書に記載があるはずです
  2. 平面でない部位が現場にどれだけあるかを数える。 窓まわり・柱型・軒先・入隅。ここが多いほど、単一工法では終わらない可能性が高くなります
  3. 廃水をどこへ流すのかを、着工前に決められるか確認する。 既設の排水設備が使えるか、回収して場外搬出になるか。ここが決まらないまま日程を組むと、着工後に止まります

3つ目が「分からない」で構いません。分からない前提で段取りを組むほうが、着工後に判明するより影響が小さくて済みます。

まとめ

石綿含有仕上塗材の除去において、超高圧水洗工法(100MPa以上)は国のマニュアルに正式な処理工法として位置づけられています。とくに、ディスクグラインダーでは刃が届かない入隅部などについて、マニュアルが併用の必要性を明記している点は、工法を選ぶうえで押さえておく価値があります。

一方で、水を使えば要件が軽くなるわけではありません。養生は求められますし、廃水は全量回収して処理する必要があります。 注意すべき場所が作業面から排水処理装置へ移るだけ、というのが正確な理解です。

どちらが良いかではなく、現場の形状と、水の段取りが組めるかどうかで決まります。

ご相談ください 「この現場は入隅が多くて、グラインダーだけでは終わらないのではないか」という段階からで構いません。図面と現況写真をもとに、併用が必要かどうかも含めて率直にお答えします。 当社で対応が難しい場合や、別の工法のほうが良い場合はそのようにお伝えします。株式会社サンテックは1993年の設立以来この工法だけを手がけ、日本ウォータージェット施工協会の正会員として、年平均92物件・累計1,500件以上の現場を重ねてきました。

よくある質問

ウォータージェットは、石綿含有仕上塗材の正式な除去工法として認められていますか?
国のマニュアルが挙げる15種類の処理工法のうち、超高圧水洗工法(100MPa以上)は⑥として位置づけられています。集じん装置付きが⑦、剥離剤併用が⑪です。いずれも100MPa以上が定義です。
ウォータージェットなら養生は不要になりますか?
なりません。マニュアルは高圧水洗工法等を用いる場合も「湿潤化に加えて養生を行うことが望ましい」としています。電動工具に課される要件の一部が異なるだけで、養生が免除されるわけではありません。
ディスクグラインダーで除去できない部位があると聞きました。
あります。マニュアルは、狭小部・入隅部・出隅部などディスクグラインダーの刃が当てられない部位について、他の工法(高圧水洗工法や超音波ケレン工法等)を併用して除去を行う必要がある、と明記しています。
水を使うぶん、他に負担は増えますか?
増えます。未処理の廃水が作業場外へ流出・地下浸透しないようすべて回収し、適切に処理したうえで放流する必要があります。集じん装置付きの場合は、吸引バキュームの排出口や排水処理装置からの飛散にも注意が要ります。

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