この記事の要点
- ウォータージェット工法とは、水を大気圧の約2,000倍以上まで昇圧し、髪の毛ほどの細いノズルから噴射して、対象を削る・はがす・洗う・切る工法です。
- コンクリートは削れるのに鉄の母材が傷つかないのは、金属に水が入り込む空隙がないためです。塗膜やサビだけを落とし、鉄筋や鋼材は残せます。
- 一方で給水と排水(濁水)の段取りが前提になり、騒音も発生します。水の手配を組めるかどうかが、この工法を使えるかの分かれ目です。
「ウォータージェット工法」を調べはじめた方が最初につまずくのは、たいてい言葉そのものです。検索すると、工場で金属を切る機械、歯の間を洗う器具、船を進める装置――別のものが並んで出てきます。名前が同じだけで、中身は違う技術です。
この記事で扱うのは、土木・建築の施工現場で使う超高圧ウォータージェットです。どういう機械で、何ができて、何ができないのかを順に説明します。
まず、言葉を切り分けます
「ウォータージェット」は、4つ以上の別分野で使われている言葉です。検索した情報が噛み合わないのは、書き手が別のものを指しているからです。
| 「ウォータージェット」と呼ばれるもの | 何をするものか | 関係 |
|---|---|---|
| 超高圧ウォータージェット(土木・建築) | 現場でコンクリートを削る、鉄の塗膜をはがす、配管を洗う | これを扱います |
| ウォータージェットカッター(製造業) | 工場に据え置き、金属・樹脂・石材を切断する加工機 | 別分野 |
| 口腔洗浄器・ウォーターフロス(歯科用) | 水流で歯と歯の間を洗う器具 | 別分野 |
| ウォータージェット推進器(船舶) | 水を後方へ噴射して船を進める装置 | 別分野 |
| ウォータージェット併用圧入工法(土木) | 鋼矢板や鋼管杭を打ち込む際、先端から水を出して地盤の抵抗を減らす | 目的が違う |
紛らわしいのが一番下の圧入工法です。同じ土木で使われますが、水の役割が違います。圧入工法の水は杭を入りやすくするためのもので、対象を削るためではありません。以降はすべて、一番上の行の説明です。
仕組み ― 水をどこまで押し上げるのか

やっていること自体は単純です。水を 200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径 0.1〜3mm という細いノズルから、マッハ1〜3 の速さで噴射します。
使う材料は水だけです。圧力・水量・ノズルの種類を変えることで、やわらかい塗膜の剥離から硬いコンクリートの除去までを、ひとつの原理でこなします。
家庭用の高圧洗浄機とは圧力の桁が違います。汚れを流し落とすのではなく、構造物の表層を破壊して取り除く道具です。(関連:水でコンクリートが砕ける仕組み)
なぜコンクリートは削れて、鉄は傷つかないのか
同じ水を当てているのに、コンクリートは崩れ、鉄筋は残る。削れる側では、2つのことが続けて起こっています。
水圧 ― 飛んできた水がぶつかった瞬間、その勢い(動圧)が押しつける力(静圧)に変わり、表面を壊してひび(クラック)をつくります。
水くさび作用 ― そのひびに後続の水が入り込み、内側から押し広げてはがします。木にくさびを打ち込んで割るのと同じ働きです。
コンクリートには目に見えない空隙が無数にあるため、この2つがよく効きます。しかも劣化して隙間の増えた部分から先に取れていくので、健全な部分を残したまま、もろくなったところだけを落とせます。叩いて壊すわけではないので、削った面の内側に微細ひび(マイクロクラック)がほとんど発生せず、新旧のコンクリートが一体化しやすい下地になります。(関連:ウォータージェットはつりとは)
一方の鉄は、内部が詰まっていて空隙がありません。水が入り込めず水くさび作用が起きないため、母材は削れず、落ちるのは表面の塗膜・サビ・固着物だけです。「鉄を傷めずに塗装だけをはがす」という作業が成り立ちます。(関連:鋼構造物の塗膜除去)
現場に何が来るのか ― 装置とガン

装置の構成は次のとおりです。
- 超高圧水発生装置 … 昇圧する心臓部。吐出圧力0〜240MPa、水量は最大30L/min前後、出力140kW級。4tトラックに搭載します(能力はメーカーにより異なります)。
- ハンドガン … 超高圧水を対象へ吐出する道具。穴数・穴径を用途で選びます。
- エアーコンプレッサー … 2tダブルキャブに搭載し、高圧エアーを供給します。
- 超高圧水ホース … 内径Φ5・Φ8など。スパイラルスチールワイヤ6層の特殊構造です。
- 超高圧水切替バルブ … 噴射を手元で切り替えます。
先端に付けるガンは6種類あり、対象と目的で使い分けます。
| ガンの種類 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| ①ハンド回転 | コンクリート全般 | 手持ちで面をまんべんなく削る |
| ②ハンド直射 | コンクリートの局部 | 一点に絞って当てる |
| ③吸引型アクアブラスト | 周囲を汚せない広い面 | 削りカスと水をその場で吸引。飛散なし・約80dB・約80㎡/日(2ガン)。削れるのは3mm程度の表面処理まで |
| ④配管ガン | プラント配管の内面 | スケール・固着物を落とす |
| ⑤マグネットクローラー | 鋼構造物の壁面 | 磁力で吸着して自走。1台150㎡/日。塗膜除去で7mm程度 |
| ⑥アブレーシブカット | 金属 | 研磨材を混ぜて切断。火花が出ない |
どのガンを使うかで進む速さも、騒音も、飛散のしかたも変わります。(関連:装置構成とガン6種のはたらき/ハンドガン職人の世界)
どんな現場で使われているか
「削る・はがす・洗う・切る」が要る場面なら、分野を問わず使えます。
土木 ― 橋梁の断面修復、トンネルの補修、耐震補強の下地処理、道路の白線消去、空港滑走路の防滑性回復。(関連:橋梁の補修・断面修復/耐震補強の下地処理)
建築 ― 石綿含有仕上塗材の除去、タイル下地の目荒らし、屋根防水材の除去、外壁の意匠仕上げ。(関連:石綿含有仕上塗材の除去)
プラント ― 配管内面の洗浄、スケール・固着物の除去、塗膜除去、解体。火花が出ないため、可燃性ガスのある雰囲気下でも施工が可能です。(関連:配管のスケール・固着物除去)
鉄道車両・船体 ― 外板の塗装剥離。
対象が違っても原理は同じで、変えているのは圧力・水量・ガンの組み合わせです。
できないこと、気をつけること
人体に触れれば重大な事故になります。 目に見えない細さの水が、極めて高い運動エネルギーを持っています。装置さえあれば施工できる工法ではなく、手順の管理・保護具・立入制限・教育がそろって成立します。(関連:事故はなぜ起きるのか)
音は発生します。 目安はハンドガンの近辺で約120dB、吸引型アクアブラストで約80dB。静かな工法ではありません。発生装置やコンプレッサーは削っていない間も回り続けるため、据える場所が近隣への影響を左右します。
鉄が濡れるので発錆対策が要ります。 塗膜を落とした鋼材は塗装のない状態で濡れています。防錆剤の塗布や、次工程までの時間管理が欠かせません。
使った水はそのままでは流せません。 出てくるのは削りカスの混ざった濁水です。回収・処理や産業廃棄物としての処分が必要になる場合があり、削る作業より水の処理のほうが手間の大きい現場もあります。(関連:排水・濁水の処理/デメリット7つ)
つまり、水を引ける・使った水を処理できる・装置を据えられる。この3つが揃わない現場では、工法そのものが成立しません。
どんな会社が施工しているのか
株式会社サンテックは、1993年の設立以来、超高圧ウォータージェットの施工だけを手がけてきた専業の会社です。日本ウォータージェット施工協会の設立に参画しました。施工実績は年平均92物件、累計1,500件以上。1980年代には国会議事堂の洗浄を、1995年には阪神・淡路大震災の復旧工事を手がけています。
何を、どれだけ削ってきたか
「実績1,500件」とだけ言われても、中身が見えないと判断材料になりません。2000年から2024年までの25年分を、工種別に開きます。
| 工種 | 件数 | 面積 |
|---|---|---|
| 劣化部除去 | 1,167件 | 427,290㎡ |
| 塗膜剥離 | 147件 | 28,380㎡ |
| はつり | 129件 | 298㎡ |
| 固着物除去 | 64件 | 1,400㎡ |
| 模様付け(意匠仕上げ) | 23件 | 7,255㎡ |
| 合計 | 1,530件 | 464,624㎡ |
見ていただくと分かるとおり、件数でも面積でも劣化部除去が大半を占めます。コンクリート構造物の傷んだ部分だけを取り除いて、断面修復や防食塗装に引き渡す——それが実際にいちばん多く手がけてきた仕事です。
一方ではつりは129件で298㎡と、件数のわりに面積がごく小さい。深く掘る作業なので、面積では大きくならないためです。同じ「削る」でも中身が違うことが、この表からも見えると思います。
まとめ
ウォータージェット工法は、残したいものがあるときに効く工法です。水圧と水くさび作用で劣化部だけを選んで除去でき、金属には水が侵入できないため、母材を残したまま塗膜やサビだけを落とせます。
その代わり、給水と排水の段取りが前提になり、騒音も出て、機材を据える場所も要ります。向く現場と向かない現場がはっきり分かれる工法です。
ご相談ください 「この現場でウォータージェットが使えるのか」という段階からで構いません。図面や現場写真をもとに、条件をうかがったうえでお答えします。当社で対応が難しい場合や、別の工法のほうが良い場合は、そのようにお伝えします。 他社で断られた案件のご相談も日常的にお受けしています。