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工法解説

ウォータージェット工法とは ― 水で削る仕組みと、できること・できないこと

2026-08-04 / SANTEC COLUMN

この記事の要点


「ウォータージェット工法」を調べはじめた方が最初につまずくのは、たいてい言葉そのものです。検索すると、工場で金属を切る機械、歯の間を洗う器具、船を進める装置――別のものが並んで出てきます。名前が同じだけで、中身は違う技術です。

この記事で扱うのは、土木・建築の施工現場で使う超高圧ウォータージェットです。どういう機械で、何ができて、何ができないのかを順に説明します。

まず、言葉を切り分けます

「ウォータージェット」は、4つ以上の別分野で使われている言葉です。検索した情報が噛み合わないのは、書き手が別のものを指しているからです。

「ウォータージェット」と呼ばれるもの 何をするものか 関係
超高圧ウォータージェット(土木・建築) 現場でコンクリートを削る、鉄の塗膜をはがす、配管を洗う これを扱います
ウォータージェットカッター(製造業) 工場に据え置き、金属・樹脂・石材を切断する加工機 別分野
口腔洗浄器・ウォーターフロス(歯科用) 水流で歯と歯の間を洗う器具 別分野
ウォータージェット推進器(船舶) 水を後方へ噴射して船を進める装置 別分野
ウォータージェット併用圧入工法(土木) 鋼矢板や鋼管杭を打ち込む際、先端から水を出して地盤の抵抗を減らす 目的が違う

紛らわしいのが一番下の圧入工法です。同じ土木で使われますが、水の役割が違います。圧入工法の水は杭を入りやすくするためのもので、対象を削るためではありません。以降はすべて、一番上の行の説明です。

仕組み ― 水をどこまで押し上げるのか

超高圧水発生装置の内部。プランジャーポンプと、吸い込んだ水をろ過するフィルターが並ぶ

やっていること自体は単純です。水を 200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径 0.1〜3mm という細いノズルから、マッハ1〜3 の速さで噴射します。

使う材料は水だけです。圧力・水量・ノズルの種類を変えることで、やわらかい塗膜の剥離から硬いコンクリートの除去までを、ひとつの原理でこなします。

家庭用の高圧洗浄機とは圧力の桁が違います。汚れを流し落とすのではなく、構造物の表層を破壊して取り除く道具です。(関連:水でコンクリートが砕ける仕組み)

なぜコンクリートは削れて、鉄は傷つかないのか

同じ水を当てているのに、コンクリートは崩れ、鉄筋は残る。削れる側では、2つのことが続けて起こっています。

水圧 ― 飛んできた水がぶつかった瞬間、その勢い(動圧)が押しつける力(静圧)に変わり、表面を壊してひび(クラック)をつくります。

水くさび作用 ― そのひびに後続の水が入り込み、内側から押し広げてはがします。木にくさびを打ち込んで割るのと同じ働きです。

コンクリートには目に見えない空隙が無数にあるため、この2つがよく効きます。しかも劣化して隙間の増えた部分から先に取れていくので、健全な部分を残したまま、もろくなったところだけを落とせます。叩いて壊すわけではないので、削った面の内側に微細ひび(マイクロクラック)がほとんど発生せず、新旧のコンクリートが一体化しやすい下地になります。(関連:ウォータージェットはつりとは)

一方の鉄は、内部が詰まっていて空隙がありません。水が入り込めず水くさび作用が起きないため、母材は削れず、落ちるのは表面の塗膜・サビ・固着物だけです。「鉄を傷めずに塗装だけをはがす」という作業が成り立ちます。(関連:鋼構造物の塗膜除去)

現場に何が来るのか ― 装置とガン

4t車に積んだ超高圧水発生装置。荷台の側面に高圧ホースが束ねてある

装置の構成は次のとおりです。

先端に付けるガンは6種類あり、対象と目的で使い分けます。

ガンの種類 主な対象 特徴
①ハンド回転 コンクリート全般 手持ちで面をまんべんなく削る
②ハンド直射 コンクリートの局部 一点に絞って当てる
③吸引型アクアブラスト 周囲を汚せない広い面 削りカスと水をその場で吸引。飛散なし・約80dB・約80㎡/日(2ガン)。削れるのは3mm程度の表面処理まで
④配管ガン プラント配管の内面 スケール・固着物を落とす
⑤マグネットクローラー 鋼構造物の壁面 磁力で吸着して自走。1台150㎡/日。塗膜除去で7mm程度
⑥アブレーシブカット 金属 研磨材を混ぜて切断。火花が出ない

どのガンを使うかで進む速さも、騒音も、飛散のしかたも変わります。(関連:装置構成とガン6種のはたらき/ハンドガン職人の世界)

どんな現場で使われているか

「削る・はがす・洗う・切る」が要る場面なら、分野を問わず使えます。

土木 ― 橋梁の断面修復、トンネルの補修、耐震補強の下地処理、道路の白線消去、空港滑走路の防滑性回復。(関連:橋梁の補修・断面修復/耐震補強の下地処理)

建築 ― 石綿含有仕上塗材の除去、タイル下地の目荒らし、屋根防水材の除去、外壁の意匠仕上げ。(関連:石綿含有仕上塗材の除去)

プラント ― 配管内面の洗浄、スケール・固着物の除去、塗膜除去、解体。火花が出ないため、可燃性ガスのある雰囲気下でも施工が可能です。(関連:配管のスケール・固着物除去)

鉄道車両・船体 ― 外板の塗装剥離。

対象が違っても原理は同じで、変えているのは圧力・水量・ガンの組み合わせです。

できないこと、気をつけること

人体に触れれば重大な事故になります。 目に見えない細さの水が、極めて高い運動エネルギーを持っています。装置さえあれば施工できる工法ではなく、手順の管理・保護具・立入制限・教育がそろって成立します。(関連:事故はなぜ起きるのか)

音は発生します。 目安はハンドガンの近辺で約120dB、吸引型アクアブラストで約80dB。静かな工法ではありません。発生装置やコンプレッサーは削っていない間も回り続けるため、据える場所が近隣への影響を左右します。

鉄が濡れるので発錆対策が要ります。 塗膜を落とした鋼材は塗装のない状態で濡れています。防錆剤の塗布や、次工程までの時間管理が欠かせません。

使った水はそのままでは流せません。 出てくるのは削りカスの混ざった濁水です。回収・処理や産業廃棄物としての処分が必要になる場合があり、削る作業より水の処理のほうが手間の大きい現場もあります。(関連:排水・濁水の処理/デメリット7つ)

つまり、水を引ける・使った水を処理できる・装置を据えられる。この3つが揃わない現場では、工法そのものが成立しません。

どんな会社が施工しているのか

株式会社サンテックは、1993年の設立以来、超高圧ウォータージェットの施工だけを手がけてきた専業の会社です。日本ウォータージェット施工協会の設立に参画しました。施工実績は年平均92物件、累計1,500件以上。1980年代には国会議事堂の洗浄を、1995年には阪神・淡路大震災の復旧工事を手がけています。

何を、どれだけ削ってきたか

「実績1,500件」とだけ言われても、中身が見えないと判断材料になりません。2000年から2024年までの25年分を、工種別に開きます。

工種 件数 面積
劣化部除去 1,167件 427,290㎡
塗膜剥離 147件 28,380㎡
はつり 129件 298㎡
固着物除去 64件 1,400㎡
模様付け(意匠仕上げ) 23件 7,255㎡
合計 1,530件 464,624㎡

見ていただくと分かるとおり、件数でも面積でも劣化部除去が大半を占めます。コンクリート構造物の傷んだ部分だけを取り除いて、断面修復や防食塗装に引き渡す——それが実際にいちばん多く手がけてきた仕事です。

一方ではつりは129件で298㎡と、件数のわりに面積がごく小さい。深く掘る作業なので、面積では大きくならないためです。同じ「削る」でも中身が違うことが、この表からも見えると思います。

まとめ

ウォータージェット工法は、残したいものがあるときに効く工法です。水圧と水くさび作用で劣化部だけを選んで除去でき、金属には水が侵入できないため、母材を残したまま塗膜やサビだけを落とせます。

その代わり、給水と排水の段取りが前提になり、騒音も出て、機材を据える場所も要ります。向く現場と向かない現場がはっきり分かれる工法です。

ご相談ください 「この現場でウォータージェットが使えるのか」という段階からで構いません。図面や現場写真をもとに、条件をうかがったうえでお答えします。当社で対応が難しい場合や、別の工法のほうが良い場合は、そのようにお伝えします。 他社で断られた案件のご相談も日常的にお受けしています。

よくある質問

ウォータージェット工法とは、ひとことで言うと何ですか?
水を200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径0.1〜3mmのノズルからマッハ1〜3の速さで噴射して、対象を削る・はがす・洗う・切る工法です。土木・建築・プラントの補修や改修で使われています。
検索すると切断機や歯の器具が出てきますが、同じものですか?
別のものです。「ウォータージェット」は、製造業の切断加工機、歯科用の口腔洗浄器、船舶の推進装置、鋼矢板の圧入工法など複数の分野で使われる言葉です。この記事で扱うのは、土木・建築の施工で使う超高圧ウォータージェットです。
水でコンクリートが削れるのに、鉄筋が傷まないのはなぜですか?
材料の内部構造が違うためです。コンクリートには目に見えない空隙があり、そこへ水が入り込んで内側から押し広げます。金属は空隙がほとんどなく水が侵入できないため、表面の塗膜やサビだけが落ち、母材は残ります。
どんな現場で使えますか。向かない現場はありますか?
橋梁やトンネルの補修、耐震補強の下地処理、鋼構造物の塗膜除去、プラント配管の洗浄などで使われます。一方、給水と排水の段取りが取れない現場や、装置を据える場所を確保できない現場では成立しないことがあります。

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