ウォータージェット工法を紹介するページは、たいてい良い面から書かれています。私たちもメリットを6つに整理した記事を出しています。
ただ、工法を選ぶ立場からすれば、先に知りたいのは弱点のほうだと思います。この記事では、超高圧ウォータージェット工法だけを手がけてきた施工会社として、デメリットを7つに整理しました。避けられるものと、条件次第でどうしても残るものを分けて書きます。
デメリット一覧(先に結論)
| # | デメリット | 避けられるか |
|---|---|---|
| 1 | 水の確保と排水処理の段取りが要る | 避けられない(工法の前提) |
| 2 | 騒音が出る | 方式の選択で下げられる |
| 3 | 水・ミスト・削りカスが飛散する | 方式と養生で抑えられる |
| 4 | 鋼材が濡れるため発錆対策が要る | 防錆剤で対応 |
| 5 | 人体に触れると重大事故になる | 体制と教育で管理 |
| 6 | 機材が大きく、搬入路と据付場所を選ぶ | 現場次第。事前確認で回避 |
| 7 | 既存構造の意匠仕上げには向かない | 避けられない(強度低下のリスク) |
以下、ひとつずつ説明します。
1. 水の確保と排水処理 ― いちばん重いのはここです
ウォータージェットは水を使う工法なので、どこから水を引き、使った水をどこへ流すかが必ず問題になります。
出てくるのは「水」ではなく、削りカス(コンクリート片・塗膜片・スケール)が混ざった濁水です。そのまま流せるとは限らず、回収・沈殿・ろ過といった処理や、産業廃棄物としての処分が必要になる場合があります。古い塗膜に有害物質が含まれていれば、扱いはさらに変わります。
正直なところ、削る作業そのものより水の処理のほうが手間の大きい現場もあります。橋の上や高所、傾斜地では水が落ちていきますので、受ける側の設えを足場の計画とセットで考えることになります。
これは工夫で消せる話ではなく、工法の前提です。(関連:排水・濁水の処理)
2. 騒音 ― 方式で大きく変わります
静かな工法ではありません。目安は次のとおりです。
| 方式 | 騒音の目安 | 飛散 |
|---|---|---|
| ハンドガン | 約120dB | あり |
| 吸引型アクアブラスト | 約80dB | なし |
音の出どころは2つあります。噴射そのものの音と、超高圧水発生装置やエアーコンプレッサーの運転音です。装置は削っていない間も回り続けるため、どこに据えるかが近隣への影響を大きく左右します。
打撃で壊す工法ではないので、構造物に伝わる振動は打撃工具より小さくなります。ただし装置側の振動は伝わりますので、「まったく振動しない」とは言えません。(関連:騒音・振動・粉じんの実際)
3. 飛散 ― 粉じんは減りますが、水は飛びます
湿式なので、乾いた粉じんは舞いにくくなります。アスベスト除去で湿式が有効とされるのも同じ理由です。
代わりに出るのが、水の飛散・湿ったミスト・水を含んだ削りカスです。遠くまでは飛びませんが、養生をしなければ周囲の車両や設備に付着します。「粉じんゼロ」ではなく「乾式より抑えやすい」が正しい理解です。
4. 発錆 ― 鉄が濡れるということ
鋼構造物の塗膜を除去すると、塗装が無くなった鉄が濡れた状態になります。そのまま放置すれば錆びますので、防錆剤の塗布や、次工程までの時間管理が必要です。
塗り替えの工程と施工日程を合わせて組む必要があり、ウォータージェット単体では完結しません。(関連:鋼構造物の塗膜除去)
5. 安全管理 ― 水が凶器になります
水を200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径0.1〜3mmのノズルからマッハ1〜3で噴射します。この水が人体に触れれば重大な事故につながります。
ノズルから出た直後の水は、目に見えない細さで、極めて高い運動エネルギーを持っています。手元のわずかな油断が、そのまま重大な事故につながる工法です。装置と手順の管理、保護具、立入制限、教育がそろって初めて成立します。
「装置があれば施工できる」工法ではない、という点は、発注する側にも知っておいていただきたいところです。(関連:施工の安全と体制)
6. 機材が大きい ― 現場を選びます

超高圧水発生装置はトラックに積んで現場へ持ち込み、そこからホースを延ばして施工します。車両をどこまで寄せられるか、ホースをどこまで延ばせるかで、段取りと人数が変わります。
搬入路が狭い、駐車スペースが取れない、装置を据える場所が近隣に近すぎる――こうした条件では、工法そのものが成立しないこともあります。(関連:相談前に確認しておきたい現場条件)
7. 既存構造の意匠仕上げには向きません
コンクリートの表面を削って模様や表情を出す意匠仕上げは、新築向けが中心です。既にある構造物の表面を意匠目的で削ると、強度低下のリスクがあるためです。
「古い建物の外壁を削って表情を出したい」というご相談は、条件によってはお断りすることがあります。
それでも選ばれる理由
ここまで7つ挙げましたが、それでもこの工法が選ばれるのは、他の工法では代えがたい2点があるからです。
ひとつは、健全な部分を傷めずに劣化部だけを取り除けること。打撃で壊す工具は削った面の内側に微細ひび(マイクロクラック)を残すことがあり、所定の深さまで取れていても、その下の傷が弱点になります。ウォータージェットはこれを残しにくいため、新しく打つコンクリートと一体化しやすい下地をつくれます。
もうひとつは、鉄の母材を傷めずに塗膜だけを除去できること。金属は内部に隙間がなく水が侵入できないため、表面の塗膜やサビだけが落ちます。
断面修復や補強の下地では、この差がそのまま仕上がりの耐久性に出ます。デメリットを段取りで吸収してでも選ぶ価値があるかどうかは、ここで決まります。(関連:ピックはつり工法との違い)
まとめ
ウォータージェット工法のデメリットは、水の段取りが重いことに集約されます。騒音・飛散・発錆・安全管理・機材の大きさは、方式の選択と事前の条件詰めである程度まで抑えられますが、給水と排水、そして既存構造の意匠仕上げに向かないことは、工夫では消せません。
裏を返せば、水の段取りさえ組めれば、健全部を守りながら必要な部分だけを処理できる工法です。向く現場と向かない現場がはっきり分かれると考えていただくのが、いちばん近いと思います。
ご相談ください 「この現場で使えるのか」という段階からで構いません。条件をうかがったうえで、当社で対応が難しい場合や、別の工法のほうが良い場合はそのようにお伝えします。デメリットのほうを先に知りたい、というご相談も歓迎です。