この記事の要点
- 高圧の水で、コンクリートは削れます。 汚れだけが落ちるか、表面が粗くなるか、劣化部まで取れるかは、圧力・当て方・コンクリートの状態で変わります。
- 国の仕様書は、洗浄・目荒らし・劣化部の除去を「目的」で分けています。 同じ「高圧水洗機」という語が3つの目的に使われ、圧力の数値は書かれていません。
- 圧力は試験施工で決めます。 公共建築改修工事標準仕様書は、加圧力は付着強度で異なるとして、試験施工と監督職員の承諾を求めています。
高圧洗浄とは、ポンプで加圧した水をノズルから噴射し、表面の汚れや付着物を取り除く作業です。 圧力を上げ、同じ場所に当てる時間を長くすると、水はコンクリートの表面そのものを取り除き始めます。洗浄と目荒らしとはつりは、この作業をどこで止めるかの違いです。この記事では、国と自治体の仕様書・積算基準・マニュアルを開き、3つの作業がどう書き分けられているかを整理しました。
結論:削れます。どこまで削れるかは、条件で決まります
水が削る仕組みは2段階です。当たった瞬間の水圧で表面にひびが入り、そのひびに入り込んだ水が内側から押し広げて剥がします(水くさび作用)。仕組みの詳しい説明はウォータージェットの仕組み|なぜ水でコンクリートが削れて、鉄は傷つかないのかにまとめました。
圧力・水量・ノズル・当てる角度・動かす速さの組み合わせで、結果は変わります。相手のコンクリートの状態も、同じくらい効く要素です。劣化して隙間が増えた部分には水が入りやすく、健全で緻密な部分には入りにくいため、同じ設定で当てても、削れ方は面ごとに違ってきます。
仕様書は「高圧水洗」を3つの目的に使っています
国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版を読むと、「高圧水洗機」という同じ語が、目的の違う3つの場面で使われています。
| 目的 | 仕様書の記載(原文) | 箇所 |
|---|---|---|
| 洗浄 | 粉化物、付着物等は、高圧水洗機を使用して除去し、清掃を行う。 | 4.5.4 表4.5.4 サンダー工法 |
| 目荒らし | コンクリート壁面に高圧水洗処理で目荒しを行う場合は、水圧及び目荒し時間を適切に設定し、モルタルの接着に適した粗面に仕上げる。 | 4.3.10 モルタル塗替え工法 (3)(ウ) |
| 劣化部の除去 | 高圧水洗機を使用し、既存塗膜及び下地コンクリートの劣化部を除去する。 | 4.5.4 表4.5.5 高圧水洗工法 |
洗浄の場面で機械に求める条件は「粉化物、付着物等の除去に適したもの」です。目荒らしの場面は「粗面に仕上げる」、劣化部の除去の場面は「劣化部を除去する」と書かれています。分けているのは圧力ではなく、何を取り除き、何を残すかです。
圧力の数値は、仕様書に書かれていません
同じ仕様書の高圧水洗工法には、圧力について次の一文があります。
高圧水洗機の加圧力は、コンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行い、監督職員の承諾を受ける。
(国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4.5.4(4)(イ))
目荒らしも同じ組み立てで、4.3.10(3)(エ)は「高圧水洗処理に先立ち試験施工を行い、目荒しの状態について監督職員の承諾を受ける。」と定めます。どちらも、何MPaで当てるかを先に決める書き方になっていません。試験施工で出てきた面を見て、設定を決める手順です。
目荒らしの程度に数値の基準が無い点は、超高圧洗浄による目荒らしで詳しく扱っています。
圧力の帯が書かれた公的資料:石綿の徹底マニュアル
圧力の数値が工法の名前と並んで書かれている公的資料もあります。厚生労働省と環境省の「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」(令和8年2月改正)です。石綿を含む仕上塗材の処理工法として、次の区分が挙げられています。
| 工法の名前 | マニュアルに書かれた圧力 |
|---|---|
| 高圧水洗工法 | 15MPa以下、30~50MPa程度 |
| 超高圧水洗工法 | 100MPa以上 |
| 剥離剤併用高圧水洗工法 | 30~50MPa程度 |
| 剥離剤併用超高圧水洗工法 | 100MPa以上 |
この区分は仕上塗材を剥がす工法の分類で、コンクリートを洗浄する圧力やはつる圧力の基準として書かれたものとは目的が違います。「高圧」と「超高圧」が公的資料でおおよそどの圧力帯を指すかは、この表から読み取れる範囲です。同じマニュアルには、高圧水洗工法では排出される水を回収し、廃水処理を行う必要がある、という記述もあります。
土木の積算では、「表面を粗にする」作業だけが表面処理工です
土木の発注では、ウォータージェットによる表面処理は「コンクリート表面処理工(ウォータージェット工)」という市場単価で積算されます。静岡県の土木工事標準積算基準書(令和7年10月)では、市場単価を使える範囲を次のように定めています。
ウォータージェットシステムを用いた健全な既設コンクリート構造物の表面を粗にすることを目的とした処理作業。
市場単価の対象から外れ、特別調査で扱うのは次の作業です。
- コンクリート劣化部除去を目的とする場合
- 洗浄,異物除去等を目的とする場合
- 配筋部におよぶ作業の場合
- コンクリート面に保護塗装等が施されている場合
積算の上でも、洗浄・表面を粗にする処理・劣化部の除去は、別の作業として扱われています。 市場単価に含まれるのは清水の調達と濁水処理の費用で、濁水処理で出た沈殿物の処分費は別に考慮する、と注記があります。積算の探し方は、ウォータージェットはつりの積算・歩掛にまとめました。
傷み方は、打撃と水で違います
「傷むか」を考えるときは、取り除く部分ではなく、残す部分に何が残るかを見ます。国立研究開発法人土木研究所の「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」には、断面修復のはつりについて次の記述があります。
ダメージが少ない方法として機械はつりのウォータージェット工法があり,ウォータージェットによる方法を標準としている発注機関もある。
打撃によって下地コンクリートの付着面に微細ひび割れ等が発生する可能性がある。
ウォータージェット工法はブレーカ処理等に比較して一般に装置が大がかりで費用もかかることから,全ての断面修復工事に最良とは言い難い面もある。
(国立研究開発法人土木研究所「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」断面修復工法編)
過酷な条件下では、ウォータージェットではつった箇所も必要に応じて下地の改善処理を検討することが望ましい、とも書かれています。
打撃式のはつり(ピックはつり)は外から叩いて砕くため、残る側の面に微細なひびが入る可能性があります。水で取り除く場合は、健全な部分に水くさび作用が発生しにくく、劣化部から先に取れていきます。残す面の状態が変わる点が、2つのはつりの違いです。 工法の比較はウォータージェットはつりとはにまとめています。
削りすぎは起こり得ます。止める位置は試験施工で決めます
水は健全な部分に効きにくいとはいえ、圧力を上げて同じ場所に長く当てれば、健全な表面も取れていきます。目荒らしで求められているのは「モルタルの接着に適した粗面」です。洗浄が目的なら、表面の粗さが変わった時点で目的を超えたことになります。
当社の超高圧水発生装置の吐出圧力は0〜240MPaです。圧力・水量・ノズルを変えることで、塗膜の剥離からコンクリートの除去までを同じ原理で行います。施工で当てる圧力は、目的の面が出る範囲で最も弱い設定を試験施工で探して決める、というのが当社の進め方です。
劣化の程度は同じ構造物でも面ごとに違います。試験施工の面と本施工の面で状態が違えば、結果にも差が出る可能性があります。どこまで取るかの考え方はコンクリートの中性化と除去深さで扱っています。
発注前に確認すること
- 目的を1語で決める。 洗浄か、目荒らしか、劣化部の除去か。積算の項目も、試験施工で見る面も、ここで変わります
- 特記仕様書の工法指定を読む。 改修仕様書では、既存塗膜の除去と下地処理の工法は「特記による」とされています
- 試験施工の場所と立会いを決める。 承諾を受けた面が、本施工の基準になります
- 水の出口を決める。 洗浄でも目荒らしでも、使った水は、落とした汚れや削りカスを含んだ濁水になります(関連:ウォータージェットの排水処理)
まとめ
高圧の水でコンクリートは削れます。 汚れを落とす洗浄、表面を粗くする目荒らし、劣化部を取り除く作業は、同じ水の力を使う作業で、違うのは止める位置です。国の仕様書は3つを目的で書き分け、圧力は試験施工で決める手順にしています。
傷むかどうかは、残す面に何が残るかで判断します。土木研究所のマニュアルは、ウォータージェットを打撃よりダメージが少ない方法と位置づけ、費用と装置の大きさから全ての現場に最良とは限らないとも書いています。
ご相談ください 対象面の写真と特記仕様書を見せていただければ、洗浄・目荒らし・劣化部の除去のどれにあたる作業か、どの順で試験施工を組むかを率直にお答えします。 ウォータージェット以外の方法が合う場合は、そのようにお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。
本記事で参照した資料
- 国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」令和7年3月21日(最終改定 令和7年5月12日)(4.3.10(3)/4.5.4)
- 厚生労働省・環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」令和3年3月(令和8年2月改正)(4.12.3 石綿含有仕上塗材の除去作業手順)
- 静岡県「土木工事標準積算基準書(第6編 土木工事標準単価及び市場単価)」令和7年10月(⑮コンクリート表面処理工(ウォータージェット工))
- 国立研究開発法人土木研究所「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」(土木研究所資料第4433号)令和4年12月(断面修復工法編)
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。仕様書と積算基準は改定されます。 工事の計画には、発注時点の最新版と、その工事の特記仕様書をご確認ください。