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工法解説

超高圧洗浄による目荒らし ― 「どこまで荒らせばよいか」は、仕様書に数値で書かれていません

2026-08-18 / SANTEC COLUMN

「超高圧洗浄 目荒らし」で検索すると、施工会社のページはたくさん出てきます。ところが「どのくらい荒らせばよいのか」という肝心の数値は、どこにも書かれていません。

各社が出し惜しみしているのではなく、そもそも基準側に数値が書かれていないのです。国土交通省の仕様書を実際に開いて確認した内容だけをお伝えします。

「超高圧洗浄」は、3つの別の作業を指しています

ハンド回転ガン。先端に飛散を抑えるカップが付き、水とエアーの2系統がつながっている

同じ呼び方で、まったく違う3つの作業が語られています。

呼ばれ方 やっていること 目的
目荒らし 健全な表面を粗くする 次に載せる材料を付着させる
劣化部・既存塗膜の除去 もろい層や古い塗膜を取り除く 弱い層を残さない
配管洗浄 内面の固着物を剥がす 流れと熱の通りを戻す

原理はどれも同じで、違うのはどこで止めるかだけです。この記事は1つ目を扱います。(関連:配管のスケール除去)

タイル下地の目荒らしは、仕様書のどこにあるか

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版11章(タイル工事)の 11.2.6[施工]にこうあります。

(ア) 下地モルタル塗りを行うコンクリート素地面の下地処理の方法は、特記による。 (イ) 目荒し工法又はMCR工法による下地処理を行う場合は、次による。  (a) 目荒し工法とする場合は、15.3.4[下地処理](4)による。  (b) MCR工法とする場合は、6章8節[型枠]による。

有機系接着剤によるタイル張り(11.3.5)にも同じ2行が置かれています。押さえておきたいのは、どの下地処理をするかが「特記による」という点です。標準仕様書は決めてくれません。

「どこまで荒らすか」に、数値はありません

参照先の 15.3.4[下地処理](4)は、次の2行がすべてです。

(ア) コンクリート壁面に高圧水洗処理で目荒しを行う場合は、水圧及び目荒し時間を適切に設定し、モルタルの接着に適した粗面に仕上げる。 (イ) 高圧水洗処理に先立ち試験施工を行い、目荒しの状態について監督職員の承諾を受ける。

粗さの数値も、圧力の数値もありません。 あるのは「モルタルの接着に適した粗面」という表現と、試験施工を行って監督職員の承諾を受けるという手順だけです。

公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 4.5.4 も、既存塗膜の高圧水洗について「高圧水洗機の加圧力は、コンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行い、監督職員の承諾を受ける」としています。対象によって違うから試して決めろ、ということです。「何MPaで施工します」という説明だけでは、何も決まっていません。耐震補強の側も同様で、8.21.3 は「目荒しの程度は、特記による」の一行です。(関連:耐震補強の下地処理)

文献に数値はあります。ただし揃っていません

国土交通省の住宅・建築物技術高度化事業の報告書(平成26年度/飛島建設・東亜建設工業・東洋大学)が、既往文献をこう整理しています。

目荒らし処理の施工度合いについては、発刊されている各基規準にも記述されているが、明確に統一された数値は示されていない。

その一覧が次のものです(いずれも耐震補強の接合面についてで、タイル下地とは目的が異なります)。

文献 発行年 目荒らし面積 目荒らし深さ
耐震改修設計指針同解説(日本建築防災協会) 2001年 75%〜全面 平均5mm/最大10〜15mm程度
外側耐震改修マニュアル(同) 2002年 25〜30%程度 記載なし
建築改修工事監理指針 下巻(建築保全センター) 2007年 15〜30%程度 平均2〜5mm/最大5〜7mm程度

同じ「目荒らし」でも、依っている文献が違えば要求が数倍変わります。 数値が食い違ったら、どちらかが誤っているのではなく見ている本が違う可能性を先に疑ってください。

書ける場面では、同じ仕様書も数値で書いています。石工事(10章)の表10.2.1は、のみ切りを「100mm角の中にのみ跡が25個」と定義し、ウォータージェットも「超高圧水で表面を切削した状態/石厚+2mm以上/花こう岩」として載せています。石材は種類が決まっていて工場で加工するからです。現場のコンクリートは面ごとに違い、同じ設定で当てても出てくる面が変わります。

削りすぎは、足りないのと同じくらい問題です

目荒らしは「たくさん削ればよい」作業ではありません。 同じ報告書は、チッピングによる目荒らしの課題をこう書いています。

躯体を荒らしすぎ、かえって悪影響を与える恐れがある ⇒ 産廃の増加

サンテックでは、既存構造物を意匠目的で削るご依頼はお断りすることがあります。健全な躯体を削ると強度に影響が出るおそれがあるためです(関連:コンクリートを削る意匠仕上げ)。目荒らしでも同じで、試験施工では必要な粗面が得られる範囲でもっとも弱い設定を探します。

新築なら、選択肢がもう1つあります

仕様書がタイル下地に挙げるもう一方がMCR工法です。型枠のせき板に気泡性緩衝シートを留めてコンクリートを打ち、脱型後にシートを剥がして凹凸を得ます(6章8節[型枠])。

目荒し工法(超高圧洗浄) MCR工法
決めるタイミング 躯体ができた後でも可 打設前(型枠段階)
既存躯体への適用 できる できない
改修工事標準仕様書 規定あり 規定なし

公共建築改修工事標準仕様書に、MCR工法の規定はありません(全文を検索して確認)。既存のタイル張り外壁を張り替え、躯体面から作り直す場合(4.4.8)も、目荒しは先ほどの「試験施工+承諾」によります。すでに建っている建物では、実質的に目荒し工法しか選べません。

決め方は、試験施工から逆算します

  1. 特記仕様書を先に読む。 下地処理の方法、目荒しの程度、依っている文献の名前。空欄なら、そこを埋める話から始まります
  2. 試験施工の面をつくる。 圧力・ノズル・距離・送り速度を変えて数パターン
  3. 監督職員の承諾を受ける。 承諾を受けた面が、以後の基準面になります
  4. 条件と基準面を記録する。 下地は次工程が始まれば見えなくなります

なお改修工事標準仕様書は、下地モルタル塗りを「硬化後、全面にわたり打診を行う」とし、接着力試験は「特記による」としています。目荒らしそのものを試験するのではなく、上に載せたモルタルが付いているかで結果を見る建て付けです。

圧力・資格・単価について

まとめ

「超高圧洗浄 目荒らし」の答えは、基準が数値ではなく手順で書かれているに尽きます。既存コンクリートが想定より弱ければ削れすぎ、緻密なら同じ設定では足りません。必ずきれいな粗面になるとは限らず、そのずれを本施工の前に見つけるための工程が試験施工です。(関連:ウォータージェットが向かない場面)

確認すべきは「何MPaでやりますか」ではなく、「特記に何が書かれていますか」「試験施工はいつ、どこで、誰が見ますか」の2つです。

株式会社サンテックは創業30年以上、ウォータージェット専業です。対応分野は12分野、年平均92物件、延べ施工面積は46万㎡、元請け様からの安全表彰もいただいています。特記仕様書と対象面の写真をお送りいただければ、試験施工の進め方と想定される設定の範囲をお伝えします。 当社で対応が難しい場合は、そのようにお伝えします。


本記事で参照した資料

いずれも原典のPDFを開いて確認しています。文献ごとの数値は目的も対象部位も異なるため、そのまま現場の合否基準として使えるものではありません。 ご使用の版と、その工事の特記仕様書をご確認ください。

よくある質問

目荒らしは、どのくらい荒らせばよいのですか?
公共建築工事標準仕様書に数値の規定はありません。15.3.4[下地処理](4)は「モルタルの接着に適した粗面に仕上げる」と定め、続けて「高圧水洗処理に先立ち試験施工を行い、目荒しの状態について監督職員の承諾を受ける」としています。数値ではなく、試験施工と承諾という手順で決める仕組みです。
超高圧洗浄の圧力は、何MPaにすればよいですか?
仕様書に圧力の数値規定はありません。公共建築改修工事標準仕様書 4.5.4 は「高圧水洗機の加圧力は、コンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行い、監督職員の承諾を受ける」と定めています。当社の装置は0〜240MPaの範囲で設定が可能ですが、圧力は目的ではなく手段です。
タイル下地の目荒らしには、どの工法がありますか?
公共建築工事標準仕様書のタイル工事では、目荒し工法とMCR工法の2つが挙げられています。MCR工法は型枠のせき板に気泡性緩衝シートを留めておく方法なので、コンクリートを打つ前に決めておく必要があります。改修工事標準仕様書にMCR工法の規定はなく、すでに建っている躯体では目荒し工法になります。
削りすぎると、どうなりますか?
国土交通省の技術開発報告書には、目荒らしについて「躯体を荒らしすぎ、かえって悪影響を与える恐れがある」「産廃の増加」と記されています。深く取れば安全という作業ではありません。当社では試験施工の段階で、必要な粗面が得られる範囲でもっとも弱い設定を探します。
施工に資格は必要ですか?
公共建築改修工事標準仕様書は、高圧水洗機で既存塗膜を除去する場合について「施工に関する十分な経験と技能を有する技術者の施工とする。なお、高圧水による事故の防止に努める」と定めています。特定の免許を名指ししているわけではありません。実際に必要となる資格は、高所や酸欠など作業の内容ごとに変わります。

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