「超高圧洗浄 目荒らし」で検索すると、施工会社のページはたくさん出てきます。ところが「どのくらい荒らせばよいのか」という肝心の数値は、どこにも書かれていません。
各社が出し惜しみしているのではなく、そもそも基準側に数値が書かれていないのです。国土交通省の仕様書を実際に開いて確認した内容だけをお伝えします。
「超高圧洗浄」は、3つの別の作業を指しています

同じ呼び方で、まったく違う3つの作業が語られています。
| 呼ばれ方 | やっていること | 目的 |
|---|---|---|
| 目荒らし | 健全な表面を粗くする | 次に載せる材料を付着させる |
| 劣化部・既存塗膜の除去 | もろい層や古い塗膜を取り除く | 弱い層を残さない |
| 配管洗浄 | 内面の固着物を剥がす | 流れと熱の通りを戻す |
原理はどれも同じで、違うのはどこで止めるかだけです。この記事は1つ目を扱います。(関連:配管のスケール除去)
タイル下地の目荒らしは、仕様書のどこにあるか
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版11章(タイル工事)の 11.2.6[施工]にこうあります。
(ア) 下地モルタル塗りを行うコンクリート素地面の下地処理の方法は、特記による。 (イ) 目荒し工法又はMCR工法による下地処理を行う場合は、次による。 (a) 目荒し工法とする場合は、15.3.4[下地処理](4)による。 (b) MCR工法とする場合は、6章8節[型枠]による。
有機系接着剤によるタイル張り(11.3.5)にも同じ2行が置かれています。押さえておきたいのは、どの下地処理をするかが「特記による」という点です。標準仕様書は決めてくれません。
「どこまで荒らすか」に、数値はありません
参照先の 15.3.4[下地処理](4)は、次の2行がすべてです。
(ア) コンクリート壁面に高圧水洗処理で目荒しを行う場合は、水圧及び目荒し時間を適切に設定し、モルタルの接着に適した粗面に仕上げる。 (イ) 高圧水洗処理に先立ち試験施工を行い、目荒しの状態について監督職員の承諾を受ける。
粗さの数値も、圧力の数値もありません。 あるのは「モルタルの接着に適した粗面」という表現と、試験施工を行って監督職員の承諾を受けるという手順だけです。
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 4.5.4 も、既存塗膜の高圧水洗について「高圧水洗機の加圧力は、コンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行い、監督職員の承諾を受ける」としています。対象によって違うから試して決めろ、ということです。「何MPaで施工します」という説明だけでは、何も決まっていません。耐震補強の側も同様で、8.21.3 は「目荒しの程度は、特記による」の一行です。(関連:耐震補強の下地処理)
文献に数値はあります。ただし揃っていません
国土交通省の住宅・建築物技術高度化事業の報告書(平成26年度/飛島建設・東亜建設工業・東洋大学)が、既往文献をこう整理しています。
目荒らし処理の施工度合いについては、発刊されている各基規準にも記述されているが、明確に統一された数値は示されていない。
その一覧が次のものです(いずれも耐震補強の接合面についてで、タイル下地とは目的が異なります)。
| 文献 | 発行年 | 目荒らし面積 | 目荒らし深さ |
|---|---|---|---|
| 耐震改修設計指針同解説(日本建築防災協会) | 2001年 | 75%〜全面 | 平均5mm/最大10〜15mm程度 |
| 外側耐震改修マニュアル(同) | 2002年 | 25〜30%程度 | 記載なし |
| 建築改修工事監理指針 下巻(建築保全センター) | 2007年 | 15〜30%程度 | 平均2〜5mm/最大5〜7mm程度 |
同じ「目荒らし」でも、依っている文献が違えば要求が数倍変わります。 数値が食い違ったら、どちらかが誤っているのではなく見ている本が違う可能性を先に疑ってください。
書ける場面では、同じ仕様書も数値で書いています。石工事(10章)の表10.2.1は、のみ切りを「100mm角の中にのみ跡が25個」と定義し、ウォータージェットも「超高圧水で表面を切削した状態/石厚+2mm以上/花こう岩」として載せています。石材は種類が決まっていて工場で加工するからです。現場のコンクリートは面ごとに違い、同じ設定で当てても出てくる面が変わります。
削りすぎは、足りないのと同じくらい問題です
目荒らしは「たくさん削ればよい」作業ではありません。 同じ報告書は、チッピングによる目荒らしの課題をこう書いています。
躯体を荒らしすぎ、かえって悪影響を与える恐れがある ⇒ 産廃の増加
サンテックでは、既存構造物を意匠目的で削るご依頼はお断りすることがあります。健全な躯体を削ると強度に影響が出るおそれがあるためです(関連:コンクリートを削る意匠仕上げ)。目荒らしでも同じで、試験施工では必要な粗面が得られる範囲でもっとも弱い設定を探します。
新築なら、選択肢がもう1つあります
仕様書がタイル下地に挙げるもう一方がMCR工法です。型枠のせき板に気泡性緩衝シートを留めてコンクリートを打ち、脱型後にシートを剥がして凹凸を得ます(6章8節[型枠])。
| 目荒し工法(超高圧洗浄) | MCR工法 | |
|---|---|---|
| 決めるタイミング | 躯体ができた後でも可 | 打設前(型枠段階) |
| 既存躯体への適用 | できる | できない |
| 改修工事標準仕様書 | 規定あり | 規定なし |
公共建築改修工事標準仕様書に、MCR工法の規定はありません(全文を検索して確認)。既存のタイル張り外壁を張り替え、躯体面から作り直す場合(4.4.8)も、目荒しは先ほどの「試験施工+承諾」によります。すでに建っている建物では、実質的に目荒し工法しか選べません。
決め方は、試験施工から逆算します
- 特記仕様書を先に読む。 下地処理の方法、目荒しの程度、依っている文献の名前。空欄なら、そこを埋める話から始まります
- 試験施工の面をつくる。 圧力・ノズル・距離・送り速度を変えて数パターン
- 監督職員の承諾を受ける。 承諾を受けた面が、以後の基準面になります
- 条件と基準面を記録する。 下地は次工程が始まれば見えなくなります
なお改修工事標準仕様書は、下地モルタル塗りを「硬化後、全面にわたり打診を行う」とし、接着力試験は「特記による」としています。目荒らしそのものを試験するのではなく、上に載せたモルタルが付いているかで結果を見る建て付けです。
圧力・資格・単価について
- 圧力 ― 数値規定はありません。当社の装置は0〜240MPa/最大30L/min/140kWで4t車搭載。どこを使うかは試験施工で決めるので、圧力の数字だけを比べても中身は比べられません(関連:装置構成とガンの使い分け)
- 資格 ― 改修工事標準仕様書は「施工に関する十分な経験と技能を有する技術者の施工とする」と定めるのみで、特定の免許を名指ししていません
- 単価 ― 公共建築工事標準単価積算基準に、目荒し・高圧水洗・表面処理の項目はありません(令和8年改定版を全文検索して確認)。土木側は市場単価に収録されています(関連:積算・歩掛はどこに載っているか)
- 音と水 ― ハンドガンは約120dBで飛散あり、吸引型アクアブラストは約80dB・2ガンで約80㎡/日が目安で飛散なし。出るのは削りカス混じりの濁水です(関連:排水・濁水の処理)
まとめ
「超高圧洗浄 目荒らし」の答えは、基準が数値ではなく手順で書かれているに尽きます。既存コンクリートが想定より弱ければ削れすぎ、緻密なら同じ設定では足りません。必ずきれいな粗面になるとは限らず、そのずれを本施工の前に見つけるための工程が試験施工です。(関連:ウォータージェットが向かない場面)
確認すべきは「何MPaでやりますか」ではなく、「特記に何が書かれていますか」「試験施工はいつ、どこで、誰が見ますか」の2つです。
株式会社サンテックは創業30年以上、ウォータージェット専業です。対応分野は12分野、年平均92物件、延べ施工面積は46万㎡、元請け様からの安全表彰もいただいています。特記仕様書と対象面の写真をお送りいただければ、試験施工の進め方と想定される設定の範囲をお伝えします。 当社で対応が難しい場合は、そのようにお伝えします。
本記事で参照した資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」11.2.6・11.3.5/15.3.4(4)/6章8節/表10.2.1
- 国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4.3.10(3)/4.4.8/4.5.4/8.21.3
- 国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準」令和8年改定(該当項目が無いことを全文検索で確認)
- 国土交通省 平成26年度 住宅・建築物技術高度化事業「環境に配慮した既存躯体と補強部材接続面における省力化接合工法の技術開発」(飛島建設・東亜建設工業・東洋大学)
いずれも原典のPDFを開いて確認しています。文献ごとの数値は目的も対象部位も異なるため、そのまま現場の合否基準として使えるものではありません。 ご使用の版と、その工事の特記仕様書をご確認ください。