この記事の要点
- 点検でうきが見つかったら、まず叩き落とし、落ちた箇所は断面修復か落下防止対策へ進みます。 打音検査ができない箇所は、落下防止対策(剥落防止工)です。
- 剥落防止工は、ネット系・補強・表面被覆の3種類に分かれます。 どれを使うかは、管理者の仕様書と対象の部位で決まります。
- 剥落防止工は、付く下地を整えることと、付けたあとも打音で調べられることまで含めて計画します。 国土技術政策総合研究所の調査には、落下防止対策や表面塗装をした橋でコンクリート片が落ちた事例が4件あります。
剥落防止工法とは、コンクリート片の落下を防ぐために、構造物の表面に塗膜やシート、ネットなどを設ける工法のことです。 国土交通省の要領は「落下防止対策」、土木研究所のマニュアルは「剥落防止」と「落下防止対策」の両方を使います。名前は違っても、目的はほぼ同じ対策です。
この記事は橋を中心に、橋を管理する自治体や、補修を請ける元請けの担当者が、点検でうきや剥落のおそれを見つけたあとに何をどの順で決めるかを、国と公的機関の資料の原文で整理しました。国土交通省の要領が対象とするのは、国と内閣府沖縄総合事務局が管理する一般国道の橋です。県や市町村の橋は、管理者の点検要領と特記仕様書を先に確かめます。トンネルの覆工はトンネル補修工法の全体像、外壁タイルは外壁タイルの剥離に分けています。
応急措置は叩き落としで、結果を5つの区分で記録します
国土交通省の要領(案)が定める流れは、打音検査、マーキング、叩き落としの順です。点検ハンマーは約230gで、打つ間隔は縦横20cm程度を目安にします。音の判断は、清音(澄んだ乾いた音)ならうきなし、濁音(濁った鈍い音)ならうきありです。濁音の箇所にはチョークで印を付け、約910gの石刃ハンマーで、できる限りその部分のコンクリートを叩き落とします。
叩き落としで対応できる範囲に限りがあることも、同じ要領に書かれています。
なお、うき・剥離の範囲が広い場合やPC桁等叩き落とすことによって当該箇所付近の応力状態が変化する場合等、叩き落とすことによって構造安全性が損なわれる恐れがあるときは、別途の方法を検討しなければならない。
(国土交通省 道路局 国道・防災課「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」平成28年12月)
要領の対象は、国と内閣府沖縄総合事務局が管理する一般国道の橋のコンクリート部材です。措置は原則として、5年に一度の定期点検の中間年(定期点検の2〜3年後)ごとに行います。道路橋定期点検要領の解説も、点検の際に第三者被害の可能性のあるうき・剥離部や腐食片を除去することを「標準的」としています。県や市町村の橋は、管理者ごとの点検要領を確かめてください。
叩き落としでコンクリートが落ちた場合は、本格的な補修までの処置として、鉄筋のさびを落として防錆処置を行います。目立たないよう灰色に塗装するのが一般的です。要領は、早期に補修を検討して、恒久的な対策へ進むよう求めています。
叩き落としの結果は、箇所ごとに次の5つの区分で記録します。
| 区分 | 措置結果(要領の原文) | 要領が求める次の対応 |
|---|---|---|
| A1 | 遠望目視及び非破壊検査の結果、異常なし。 | (対応の指定なし) |
| A2 | 打音検査の結果、異常なし。 | (対応の指定なし) |
| B | 応急措置(叩き落とし作業)で落ちなかった。 | 必要に応じて詳細調査、計画的な観察、次回点検で重点的に点検する |
| C | 応急措置(叩き落とし作業)で落ちた。 | 本格的な補修が必要。補修実施後、再度点検することが望ましい |
| P | 打音検査不可能(落下予防対策が必要) | 落下防止対策を講じる必要がある |
要領の区分で落下防止対策が明記されているのは、Pの箇所です。Cの箇所は、本格的な補修を検討します(次の節)。
本対策は、うきをはつって断面修復するか、落下防止対策を行うかの2つです
土木研究所のマニュアルは、ひび割れのある箇所にうきがある場合の対策を、次のように書いています。
ひび割れ箇所のコンクリートに浮きがある場合には,ひび割れ修復工法は採用せずに,浮きの部分をはつり取って断面修復を行うか,巻立て等の落下防止対策を行う必要がある。
(土木研究所資料 第4433号「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」共通編 2.4.2)
うきの原因が鉄筋の腐食なら、ひび割れを埋めるだけでは腐食を止められません。はつり取る範囲と鉄筋の処理は鉄筋の錆による爆裂の補修に、塩害の場合はコンクリートの塩害の補修工法にまとめました。
同じマニュアルは、第三者被害が想定される場所について、こう書いています。
第三者被害が想定される場所では,落下防護(鉄筋裏側までのはつりや,アンカー等)を検討すると良い。
(同 共通編 2.4.2)
鉄筋の裏までコンクリートを取って鉄筋を巻き込む方法と、アンカー(さし筋)を入れる方法は、断面修復した部分の付着強度が下がっても、その部分を落とさないための工夫です(断面修復工法編)。修復工法そのものは断面修復工法の種類と選び方で扱いました。
落下防止対策を先に選ぶ場面として、国土交通省の要領が挙げているのは次の3つです。書き方は、1つ目が「講じる必要がある」、2つ目と3つ目が「講じることが考えられる」となっています。
- 打音検査ができない(狭隘部で打音作業ができない、関係機関との協議に時間がかかり点検ごとの対応が難しい、など)
- 主要幹線道路や新幹線をまたぐ橋で、落下事故を極力避ける必要がある
- 打音検査のための足場が非常に高価で、複数回の経済比較で落下防止対策が安価になる
事前の対策には、「ひびわれの生じた床版下面を炭素繊維等で保護する」例もあります。
剥落防止工は、ネット系・補強・表面被覆の3種類に分かれます
国土技術政策総合研究所の資料(国総研資料 第953号、平成29年3月)は、コンクリート片が剥離したときに拘束力を持つ工法を3つに分けています。
| 種類 | しくみ(資料の記述) |
|---|---|
| ネット系工法 | 剥離したコンクリート片を支持する。ネット材をコンクリート片落下懸念箇所に設置し、一般的にはコンクリート表面近傍にアンカーボルトで固定する |
| 補強工法 | 耐荷力が不足する部材の表面に、連続繊維シートや鋼板を取り付けて補強層をつくる。補強層に、コンクリート片落下に対する物理的な拘束力を期待する |
| 表面被覆工法 | コンクリート表面に有機系または無機系の被覆材を塗装する。塗膜内に連続繊維シート等を含めたり、柔軟厚膜形の塗膜にしたりして、落下に対する拘束力を期待する |
3つのうち、落下防止対策として実績が多い表面被覆工法が、この資料の研究対象です。
施工したあとの点検での見え方は、3つで違います。補強工法は高い耐荷力を期待できる反面、うきや剥離が生じても、目視で分かるほどの大きな変位は補強材に生じないことが多いとされています。表面被覆工法は、下地の目視点検が一般に困難です。ただし、コンクリート片が剥離すると、目視で確認できる程度に変位しながら受け止めるため、外から剥落の存在を推定できる可能性があります。
どれを使うかの決め手は、管理者の仕様書と、対象の部位(端部・角部・間詰め部など)です。
表面被覆の下地は、変状を補修し、脆弱部と汚れを取り、含水状態を合わせます
表面被覆の施工は、下地がどこまで整っているかに左右されます。土木研究所のマニュアルは、表面被覆・含浸工法の施工を4つの工程に分けています。
| 工程 | 目的(マニュアルの記述) |
|---|---|
| 前処理工 | 施工面に発生した変状の補修 |
| 下地処理工 | 施工面の段差修正や脆弱部の補修 |
| 素地調整工 | 一体性を阻害する物質の除去 |
| 塗布工 | 表面保護層の形成 |
下地処理工の記述は、脆弱部を除去してから不陸修正材で復旧する、という内容です。うきがある部分をここに当てはめられるかは、マニュアルの文ではなく当社の読みですので、管理者の仕様で確かめてください。素地調整工で取るのは、埃・汚れ・塩分です。方法は、水を使う湿式処理と、ブラスト工法や動力工具(ディスクサンダーなど)の乾式処理に分かれます。湿式は施工面が湿るので、材料によっては乾燥させる必要があります。
含水状態の条件は、材料で違います。同じマニュアルの表で、樹脂系の表面被覆材は、下地を一般に乾燥状態にする必要がある材料に分類されています。3種類の樹脂系被覆材で試した例では、乾燥状態の下地はどの温湿度条件でも変状が出ず、湿潤状態の下地はすべての条件で変状が出ました。
下地処理と素地調整のあとに確認する項目は、次のとおりです。
- 下地の表面の状態:変状や段差・不陸がないこと(目視、触診。プルオフ法や反発度法など)
- 付着塩分量:100mg/m²以下(ガーゼ拭き取り法など)。付着した塩分は、水洗いなどで除去します
一般社団法人繊維補修補強協会の「実務の手引き」には、連続繊維シートを貼る前に除去するものとして、脆弱部、レイタンス、塵埃、油脂類、型枠の目違いによる段差が挙げられます。プライマーを塗る前の下地は、表面水分が8%を超えるとシートのふくれやプライマーの白化の原因になるとされています。この8%は、日本建築防災協会の建築物の耐震改修指針が定める「プライマー塗布時の下地コンクリートの表面含水率は8%以下」として、同じ手引きの別の節にも紹介があります。橋の仕様は、管理者の特記仕様書で確かめてください。
耐震補強での繊維シートの下地の考え方は、耐震補強の下地処理に整理してあります。
施工したあとも、打音で調べられる形にしておきます
国総研資料は、落下防止対策または表面塗装を実施済みの橋での落下事例を、2016年5月までの範囲で調べ、4件を収集しました。落下の特徴は3つでした。
- 広範囲にわたって、落下防止対策とコンクリート片が一体となって落下した
- 落下防止対策を実施していることを理由に、特定点検や定期点検の打音検査を省いたため、コンクリート片とともに落下防止対策が落ちた
- 表面塗装等を実施した箇所で、床版や桁の変状を外観から確認できず、塗装とともにコンクリート片が落ちた
推定された原因も3つあります。
- コンクリート中、またはコンクリートと落下防止対策の間に水が入り、凍結融解作用などを受けて一緒に剥がれた
- 打音検査をしていなかったため、対策の耐荷力を超える規模の落下を予想できなかった
- 塗装のため、外観目視でコンクリートの変状を確認できなかった
資料の結論は、次のとおりです。
そのため、落下防止対策を設置した場合でも、落下防止対策上から打音点検によるコンクリートの変状を確認ができることが必要である。
(国土技術政策総合研究所 国総研資料 第953号「コンクリート片落下による第三者被害の予防措置技術の性能試験法に関する調査検討」第2章)
土木研究所のマニュアルは、凍害対策の場合、被覆する部位以外の経路から水が入っていると、表面被覆がコンクリート内部に水分を保持する状態を作ってしまう場合がある、としています。水の浸入経路は、事前に調べる必要があります。
国土交通省の要領は、落下防止対策の端部・角部・シートの重ね部などが弱点になって剥離する事例があるとして、参考資料2の「コンクリート片落下防止対策の性能試験法(案)」を参考にするよう勧めています。この試験法は、端部や角部、ハンチ部、間詰め部を想定した供試体で、押抜き試験、接着試験、うきの検知、滞水やひび割れの検知を行います。
ウォータージェットは、うきの取り切りと下地の面づくりに使えます
この記事で当社が扱うのは、ウォータージェットではつる部分と、下地を整える部分です。剥落防止工の種類と仕様は、管理者の要領とメーカーの仕様で決まります。
叩き落としで足りる範囲はハンマーが基本で、要領が「別途の方法」を求めるのは、うきの範囲が広い場合などです。PC桁のように、取り除くことで応力状態が変わる範囲では、どの工具を使うかより先に、取ってよいかという構造の検討が要ります。
はつり取ってから断面修復する場合、土木研究所のマニュアルは、打撃によるはつりでは下地に微細なひび割れなどのダメージが残る可能性があるとし、ダメージが少ない工法のひとつにウォータージェット工法を挙げています。この点は断面修復工法の種類と選び方で詳しく扱いました。トンネルでは、はつり落とし工の機材のひとつにウォータージェットが入ります(トンネル補修工法の全体像)。
剥落防止工の下地では、水を使う湿式の素地調整を選べます。マニュアルが書いているのは「水を使用した湿式処理方法」までで、機器の名前は挙げていません。付着した塩分は、水洗いなどで除去するとしています。ただし、樹脂系の被覆材は乾燥状態が求められるので、洗ったあとに乾く時間を工程へ入れる必要があります。
橋の上で使った水は桁下へ落ちるため、桁下が道路・鉄道・河川のどれかで、水の受け方と協議先が変わります(橋梁の床版はつりとウォータージェット、ウォータージェットの排水処理)。水の回収が組めない現場や、局所のうきだけの現場には、ハンマーや電動工具が向いています。
1か所でうきが見つかったら、ほかの箇所にもあると疑います
国総研資料の実態調査は、対策の範囲を考える手がかりになります。直轄国道のコンクリート橋(16,992橋)のうち、平成24年度までの特定点検で判定Cが出た橋から100橋を抽出すると、落下懸念箇所は681か所ありました。資料は「1箇所発生している場合は複数箇所発生していることを疑うべきである」と書いています。損傷部の平均面積は673cm²(26cm×26cm相当)で、これは実際に落ちた寸法ではなく、叩き検査でうき・剥離が見つかった範囲か、叩き落とした範囲です。
公表された落下事例65件(2002年度〜2012年度の10年間)では、橋梁で落下した部材の75%が床版で、その95%が桁間部・張出部・水切部でした。雨水の影響を受けやすい箇所に多いものの、あらゆる箇所から落下していることも確認されています。集計の元は公表された事例で、全部を網羅したものではない、というのが資料自身の断りです。要領にも、遠望目視や非破壊検査で見つけた損傷には、その周囲を含めて広めに打音検査を行うのがよい、との一文があります。
点検調書を見て確かめること
- 点検調書の措置結果を見る。 B・C・Pのどれが、どの部位に付いているかで、次の対応が決まります
- Pの箇所を、理由別に分ける。 狭隘部で打音ができないのか、協議に時間がかかるのかで、根拠が変わります。足場が高価な場合や、主要幹線道路・新幹線をまたぐ橋の場合も、落下防止対策を選ぶ理由として要領に挙げられています
- 剥落防止工が付いている箇所は、最後に打音を行った時期を確認する。 対策済みを理由に打音を省いた事例が、国総研資料に報告されています
- 特記仕様書の素地調整の条件を読む。 湿式か乾式か、乾燥の条件、付着塩分量の管理値が書かれているかを確かめます
まとめ
点検でうきが見つかったときの順は、打音、叩き落とし、結果の区分、本対策です。 落ちた箇所は、うきをはつり取った断面修復か落下防止対策から選び、打音検査ができない箇所は落下防止対策に進みます。
剥落防止工は、付く下地を整えることと、付けたあとも打音で調べられることまで含めて決めるものです。ウォータージェットが使えるのは、うきの取り切りと下地の面づくりで、桁下の水の受け方が組めることが条件になります。
ご相談ください 点検調書のうき・剥離の位置と範囲、桁下の状況、規制の条件を見せていただければ、はつりと下地処理をウォータージェットで段取りできるかをお答えします。水の回収が組めない現場や局所のうきには、ハンマーや電動工具で足りることが多いです。
当社の橋脚・橋梁は46件の施工実績(12県)で、高速道路・国道・鉄道の橋から水路橋までが含まれます(橋脚・橋梁の分野ページ)。費用はウォータージェット工事の費用、相談前に用意する情報は現場条件のチェックリストにまとめました。
本記事で参照した資料
- 国土交通省 道路局 国道・防災課「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」平成28年12月(1.適用の範囲/3.措置の頻度/5.措置の方法/参考資料2)
- 国土交通省 道路局「道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準)」令和6年3月(点検調書の記入要領 3.特記事項)
- 土木研究所資料 第4433号「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」令和4年12月(共通編 2.4.2/表面被覆・含浸工法編 2.1・3.4・3.5/断面修復工法編 2.5)
- 国土技術政策総合研究所 国総研資料 第953号「コンクリート片落下による第三者被害の予防措置技術の性能試験法に関する調査検討」平成29年3月(第2章/第3章 3.2)
- 一般社団法人繊維補修補強協会「実務の手引き 2022WEB」第2章(2.1 下地の正しい作り方〔会報10号 2004年7月〕/2.3 プライマー塗布の留意点〔会報12号 2005年8月〕/2.4 連続繊維補強工法におけるプライマーと施工上の留意点〔会報28号 2013年7月〕)
措置要領は「案」であり、管理者ごとに運用が異なります。 工事の計画には、発注者の特記仕様書と、発注時点の最新の要領・基準で必ずご確認ください。