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工法解説

断面修復工法の種類と選び方 ― 左官・吹付け・充填の適用の目安と、それぞれの工法が求めるはつり面

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 断面修復工法は、埋め方で3つに分かれます。 コテで塗る左官工法、圧縮空気で吹き付ける吹付け工法、型枠を組んで流し込む充填工法です。型枠が要るのは充填工法だけです。
  2. 選ぶ目安は、欠損の深さと施工の規模です。 佐賀県のマニュアルは、深さ0.5〜5cmを左官工法、5cm以上で中規模を吹付け工法、5cm以上で大規模を充填工法としています。
  3. はつり面に求められることは、埋め方で変わります。 浮き・ゆるみ・フェザーエッジを残さないことは共通です。吹付けでは鉄筋の裏に空隙を残さないこと、逆打ちの充填では空気だまりのできないはつり形状が求められます。

断面修復工法とは、劣化や鋼材の腐食で欠損したコンクリート断面、または許容限度以上の劣化因子を含む部分を除去し、断面を供用開始時の性能と形状・寸法に戻す工法です。 工程は、劣化部を取り除くはつりと、取ったあとを埋める修復に分かれます。この記事では後半の「どう埋めるか」の側から、工法の種類と選び方、それぞれの工法がはつり面に求めることを、国・研究機関・県の資料で確かめた範囲で整理しています。どこまで取るかは断面修復のはつり深さ、中性化の場合の考え方はコンクリートの中性化と除去深さにまとめてあります。

3つの工法と選び方:欠損の深さ5cmと、施工の規模が目安です

土木研究所の「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」(以下、土研マニュアル)は、断面修復材の施工方法を左官工法、吹付け工法、充填工法の3つに分けています。吹付け工法には湿式と乾式があります。佐賀県の「佐賀県橋梁補修・補強マニュアル(案)」(平成27年5月)の目安と並べると、次のとおりです。

工法 埋め方 向く場面(土研マニュアル) 佐賀県の目安(欠損部の深さ・規模/最少施工厚み)
左官工法 練り混ぜた断面修復材を、左官ごてで下地に塗り付ける。ポンプやエアコンプレッサーは使わない 小断面の補修、補修箇所が点在している場合 0.5〜5cm/5mm以上
吹付け工法(湿式) ミキサで練った断面修復材をポンプで圧送し、圧縮空気で吹き付ける。型枠は使わない 中〜大規模の断面修復 5cm以上かつ中規模/10mm以上
吹付け工法(乾式) 粉体を空気で圧送し、ノズルの中で液体と瞬時に混ぜて吹き付ける。1回の施工厚さを厚くできる より大規模な断面修復 5cm以上かつ中規模/10mm以上
充填工法 型枠を設置し、流動性の高いコンクリートまたはモルタルを型枠の中に充填する 補修断面が大きな場合 5cm以上かつ大規模/10mm以上

佐賀県のマニュアルは、この区分を基本としたうえで、実際の工事では施工方向による施工性を踏まえて判断するとしています。土研マニュアルによると、上向きや側面に施工するときは、左官工法でも湿式の吹付け工法でも、1回に施工できる厚さが制限されます。

深さの線は、資料によって引き方が違います。香川県の「橋梁補修・補強マニュアル 参考資料(案)」(平成23年9月)は、左官工法と吹き付け工法を同じ欄にまとめ、修復深さが比較的浅い(5cm未満)場合に適用されると記しました。充てん工法は、断面欠損の大きい場合と、下から上に向けた逆打ちに適した工法として紹介されています。工事で使う目安は、発注機関の基準で確かめてください。

材料にも違いがあります。左官と湿式吹付けに使うセメントモルタル系の断面修復材は、水以外の材料をあらかじめ混ぜたプレミックス品が一般的で、現場で決められた量の水を加えて練り混ぜます。充填工法は施工量が多い場合がほとんどで、材料はレディーミクストコンクリート工場で製造することが多いとされています。

施工の順番:はつり→鉄筋の処理→付着面の処理→断面修復材→養生

国土交通省の土木工事標準歩掛(構造物補修工 断面修復工)は、施工フローを次のように標準としています(令和7年度の改定資料)。

  1. 足場設置・締切排水(設置)
  2. 配筋状況確認(鉄筋探査等)
  3. コンクリートはつり(カッター工含む)
  4. 鉄筋ケレン・鉄筋防錆処理(必要に応じて計上)
  5. 断面修復(左官)(プライマー含む)
  6. 仕上げ(養生を含む)
  7. 足場撤去・締切排水(撤去)

土研マニュアルの工程も同じ並びで、はつりと鉄筋の処理のあと、必要に応じて下地コンクリートの改善処理を挟み、付着面の処理、断面修復材の施工、養生へ進みます。ひび割れ注入や表面被覆を組み合わせる場合もあります。鉄筋の錆落としと防錆処理の中身は鉄筋の錆による爆裂の補修、塩害で除塩が要る場合はコンクリートの塩害の補修工法で扱いました。

国の標準歩掛にある断面修復工は、左官工法です。 令和8年度には、トンネル補修工の断面修復工(左官工法)が新しく制定されました。吹付け工法と充填工法については、佐賀県のマニュアルが県の歩掛を置いています。その歩掛は「コンクリートはつり工」「プライマー工」「モルタル修復工」の3つで組まれ、モルタル修復工は吹付け・充填とも厚さ50mm以上を対象とします。吹付けの材料は、ロス率20%を見込んだ数量です。ウォータージェットではつる場合の費用の拾い方は、ウォータージェットはつりの積算・歩掛で整理しました。

どの工法でも、はつり面から浮き・ゆるみ・フェザーエッジを取り除きます

土研マニュアルは、はつり作業のあとに、ひび割れや浮き、ゆるみ、フェザーエッジがあれば取り除くよう求めています。確認は、目視か打音ハンマー等で行います。

フェザーエッジとは、はつり面の端部が緩やかなスロープ状になった形のことです。端部に塗る断面修復材が極端に薄くなり、乾燥ひび割れや浮きが生じやすくなるため、端部にはカッター目地を入れるなどして、フェザーエッジにならない形にはつります。

はつり面の凹凸が大きい場合は、窪みを埋める不陸調整を行うことがあります。不陸調整に使う材料にも、断面修復材と同じ品質規格が求められています。

反対に、下地の表面が平滑すぎても付着強度は下がります。土研マニュアルは、新設構造物のように鏡面に近い面はサンドブラスト等で目荒らしを行うとよいとしました。土木研究所の研究では、きめ深さ0.15mm以上(算術平均粗さ0.07mm以上)で良好な付着性能が得られています。

左官工法:1回に塗れる厚さに限りがあり、端部の厚みと塗り重ねが要点です

左官工法は、圧送用のポンプやエアコンプレッサーを使わずに、練り混ぜた断面修復材を左官ごてで塗り付ける工法です。佐賀県の表では、最少施工厚みが5mm以上とされています。

塗り始めに、少量の断面修復材を施工面に強く擦り付ける「しごき」を十分に行い、付着面に空隙が生じないようにします。しごきが終わってから、コテ塗りで所定の形状に塗布して仕上げる手順です。

逆打ちや側面では、断面修復材の変形やだれ落ちによって、1回に施工できる塗り厚が制限されます。厚い場合は数回に分けて塗り重ね、先の層が指触硬化状態(指で軽く触れても変形しない程度)になってから次を塗ることになっています。先の層の表面が乾くと、塗り重ねの界面にドライアウトが生じ、付着が不十分になるおそれがあります。翌日に持ち越して先の層が完全に硬化した場合は、プライマーの塗布が推奨されている場合も多いとされています。

左官工法のはつり面に求められるのは、薄く塗る部分を作らない形です。フェザーエッジが残った端部では、断面修復材が5mmより薄くなる部分が出ます。

吹付け工法:鉄筋の裏に空隙を残さないことが要点です

吹付け工法は型枠を必要とせず、中〜大規模な断面修復で採用されています。湿式はミキサで練った断面修復材をポンプで送り、圧縮空気で吹き付ける方法です。乾式は粉体を空気で圧送し、ノズルの中で液体と混ぜて吹き付けます。乾式は圧送性に優れ、1回の施工厚さを厚くできるため、より大規模な工事で採用されています。

吹付けの良否は,ノズルマンの技量によるところが大きく,特に鉄筋裏側等に空隙が生じないように施工することが重要である。

(土木研究所資料 第4433号「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」Ⅲ編 3.8)

湿式に比べて粘性が極めて低いため、乾式では鉄筋裏や狭い部分で充填不良のリスクも高くなると考えられます。佐賀県の表も、吹付けの充填性を確保する条件として、吹付けモルタル量、圧縮空気の圧力と流量、ノズルマンの熟練度、鉄筋配筋の狭隘程度を挙げました。香川県のマニュアルがNEXCOの構造物施工管理要領から抜粋した性能照査項目でも、吹付け工法の項目に、鉄筋の背面に有害な空隙がないことが入っています。

はね返りで材料が失われるため、吹付けでは材料の量に余裕を見込みます。エントレインドエアを混ぜた断面修復材は、吹き付けたときにエアが抜けて耐凍害性が下がる場合があります。

鉄筋の裏まではつった面では、鉄筋の裏に吹付けが回るかどうかで品質が分かれます。鉄筋の裏まで取るかどうかの判断は、断面修復のはつり深さを参照してください。

充填工法:逆打ちでは、空気だまりのできない形にはつります

充填工法は、型枠を設置して、流動性の高いコンクリートまたはモルタルを型枠の中に充填する工法です。補修断面が大きな場合に適しており、流動性はスランプ試験(JIS A 1101)またはスランプフロー試験(JIS A 1150)で確かめるのが標準とされています。

順打ちでは締固めができ、下から上へ向けて打つ逆打ちでは、自己充填性に優れた材料が必要です。逆打ちで材料が凝結時に収縮すると下地との間に空隙ができて付着しなくなるため、ノンブリーディングで硬化収縮のない(あるいは膨張性のある)材料を選びます。

逆打ちの充塡工法の場合,不陸が大きいと,空気だまりが生じて大きな空隙が残存することとなるため,はつり形状には特に注意を払わなければならない。

(土木研究所資料 第4433号「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」Ⅲ編 3.2)

土研マニュアルが求めるのは、はつり形状の工夫と、適宜設ける空気抜き孔です。型枠の中は外から見えないため、充填の状況が確認できる観察窓を設けるとよい、とも書かれています。付着強度も、充填工法では順打ちと逆打ちの双方で試験を実施して確かめます。

佐賀県の表では、型枠が必要なのは充填工法だけです。締固めは振動機が標準で、高流動材料では自己充填性能によるとされています。

付着面の処理:はつった面の湿り具合で、使える方法が変わります

乾いたコンクリート面に断面修復材を施工すると、断面修復材の水分が下地に吸われ、セメントの水和が阻害されます。この現象をドライアウトと呼び、防ぐために付着面の処理(吸水防止処理)を行います。土研マニュアルが挙げる方法は、次の3つに分かれます。

方法 仕組み 留意点(土研マニュアルの記載の要約)
水湿し処理 施工前にコンクリート表面を水で湿らせる 簡便で、小規模な補修で主に用いられる。湿潤を長時間保つのが難しい。逆打ちで水分が多いと付着面に水膜ができ、十分な付着が得られない場合がある
ディスパージョン系プライマー 塗って乾くと薄いポリマーの膜ができ、水分の移動を遮断する 施工面が湿潤状態で乾燥しないと膜が形成されず、十分な効果は期待できない。常に水に接する箇所では、水中耐久性試験で確認する
エポキシ樹脂系接着剤 高い付着性と吸水防止効果を持つ。水に曝される箇所では高い耐久性を示すものが多い 接着剤が硬化する前の、粘着性がある状態で断面修復材を施工する。硬化した後では付着性能が低下する

プライマーは、断面修復材ごとに製造者から指定されていることが一般的です。土研マニュアルも、付着はプライマーと断面修復材をセットにして評価するとしています。

ウォータージェットは水を使ってはつるため、はつった直後の面は湿った状態です。ディスパージョン系のプライマーを使う場合は、面が乾いてから塗る段取りになります。

付着の良し悪しを確かめるのは、建研式接着力試験器による付着強度試験です。土研マニュアルは、5箇所以上で試験して平均1.5N/mm²以上、最低値0.75N/mm²以上を満たすことを、品質の確認方法の例として示しました。香川県のマニュアルに抜粋されたNEXCOの性能照査項目も、コンクリートとの付着強度を1.5N/mm²以上としています。

土研マニュアルの不具合事例集には、橋梁の地覆で断面修復材が界面剥離した例があります。想定される劣化因子として挙げられたのは、断面修復材の乾燥収縮、ひび割れ部からの水分浸入、不適切な付着面の処理の3つでした。

ウォータージェットではつる場合:付着面を傷めにくく、過酷な環境では改善処理も検討します

ウォータージェットは、超高圧水の水圧でコンクリートの劣化部を除去する工法です。鉄筋は内部に水が入り込まないため、そのまま残ります(関連:ウォータージェットの仕組み)。

土研マニュアルは、チッピングハンマーやブレーカによる打撃式のはつり(ピックはつり)について、下地コンクリートに微細なひび割れ等のダメージが残る可能性を挙げています。断面修復の直後は良好な付着強度を示しても、積雪寒冷地などの過酷な環境では、ダメージ部から再劣化が進み、付着強度が低下する可能性もあるという記載です。ダメージが少ないはつり方法として挙げられているのが、ウォータージェット工法でした。そのうえで、次の一文が続きます。

なお,過酷な条件下においては,ウォータージェット工法によるはつり箇所であっても必要に応じて同様の改善処理を検討することが望ましい。

(土木研究所資料 第4433号「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル 2022年版」Ⅲ編 2.5)

改善処理とは、エポキシ系の浸透性塗布材を下地に浸透・固化させ、付着面を緻密にする方法です。処理をすると表面の凹凸による付着が下がるため、プライマーにはエポキシ樹脂系接着剤を用いることが標準とされています。浸透性塗布材、プライマー、断面修復材の施工は、それぞれの硬化時間を考えて連続して行います。

はつり面の形に求められることは、次に何で埋めるかによって変わります。逆打ちの充填なら空気だまりのできない形、左官ならフェザーエッジを残さない端部。修復の工法は、はつりに入る前に決まっている必要があります。

土研マニュアルは、ウォータージェット工法について、ブレーカ処理等に比べて一般に装置が大がかりで費用もかかり、全ての断面修復工事に最良とは言い難い面もあるとしています。補修箇所が小さく点在する左官工法向きの現場では、ピックはつりのほうが合う場合があります。浅い部分を打撃で取り、付着面に近い仕上げの段階だけウォータージェットを使う組み方は、断面修復のはつり深さで紹介しました。

まとめ

断面修復工法は左官・吹付け・充填の3つで、欠損の深さと施工の規模を目安に選びます。 佐賀県のマニュアルは深さ5cmを境に、浅いものを左官工法、深いものを規模に応じて吹付け工法と充填工法に分けています。国の標準歩掛にある断面修復工は、左官工法です。

はつり面については、浮き・ゆるみ・フェザーエッジを残さないという共通の要件に、工法ごとの要件が加わります。吹付けでは鉄筋の裏に空隙を残さないこと、逆打ちの充填では空気だまりのできないはつり形状が求められています。付着面の処理は、はつった面の湿り具合と、断面修復材に指定されたプライマーを合わせて段取りを組みます。

ご相談ください 図面と劣化の範囲、決まっていれば修復の工法(左官・吹付け・充填)を教えてください。ウォータージェットではつる段取りが合う現場かどうかを率直にお答えします。 補修箇所が小さく点在する現場なら、ピックはつりが合うことが多くなります。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。工法の適用の目安と歩掛は、発注機関と年度によって異なる場合があります。 工事の計画には、発注時点の基準と特記仕様書で必ずご確認ください。

よくある質問

断面修復工法にはどんな種類がありますか?
左官工法、吹付け工法、充填工法の3つです。左官は断面修復材をコテで塗り付け、吹付けは圧縮空気で吹き付け、充填は型枠を設置して流動性の高いコンクリートやモルタルを流し込みます。型枠が要るのは充填工法だけです。
左官工法と吹付け工法は、どう使い分けますか?
欠損の深さと施工の規模で使い分けます。佐賀県のマニュアルは、深さ0.5〜5cmを左官工法、5cm以上で中規模を吹付け工法としています。上向きや側面では1回に施工できる厚さが制限されるため、施工方向も判断に入ります。
断面修復はどんな手順で施工しますか?
はつり、鉄筋の錆落としと防錆処理、プライマーなどの付着面の処理、断面修復材の施工、仕上げと養生の順です。国土交通省の土木工事標準歩掛(構造物補修工)の施工フローも、この順番を標準としています。
国の標準歩掛に、断面修復工の吹付工法はありますか?
国の土木工事標準歩掛にある断面修復工は、左官工法です。令和8年度にはトンネル補修工の断面修復工(左官工法)も制定されました。吹付け工法と充填工法は、佐賀県のように県が独自の歩掛を定めている例があります。
ウォータージェットではつった面は、断面修復に向いていますか?
付着面を傷めにくいはつり方法です。土木研究所のマニュアルは、打撃式のはつりでは微細なひび割れが残る可能性を挙げ、ダメージが少ない方法にウォータージェットを挙げています。過酷な環境では、改善処理の検討も望ましいとされます。

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