この記事の要点
- 固形で出た塗膜くずは廃プラスチック類、泥状で出たものは汚泥の区分で考えます。 「塗膜くず」という名前の産業廃棄物の種類は、法令にありません。
- 鉛・六価クロムは、含有量と溶出量を別々に調べます。 基準値は検液1リットルにつき、鉛0.3mg、六価クロム1.5mgです。PCBが付着した廃プラスチック類は、特別管理産業廃棄物(PCB汚染物)です。
- 出てくるものは、除去の工法で変わります。 ウォータージェットでは塗膜片を含む水と汚泥、ブラストでは研削材との混合物が出ます。
塗膜くずとは、橋梁・タンク・建物などの塗膜を剥がす工事で出る、塗膜片の廃棄物のことです。 「塗膜片」と呼ぶこともあります。剥がした塗膜は、排出事業者である元請業者が、処分を委託する書面に産業廃棄物の種類と数量を書いて出します。区分を決める材料は、分析結果、処分先の受入基準、排出する地域の廃棄物担当課への確認です。
鉛・PCBを含む塗膜の除去作業は、鋼構造物の塗膜除去とPCB含有塗膜の除去工法と処理期限の記事にまとめました。この記事は、塗膜が剥がれて廃棄物になってからの区分と判定を扱います。
排出事業者は元請業者で、区分は委託の書面に残ります
数次の請負で行う建設工事では、廃棄物の処理の責任を負う事業者は元請業者です(廃棄物処理法第21条の3第1項)。塗膜くずの区分は、元請業者が委託する書面に書くことになります。
- 処分を委託する先は、委託しようとする処分が許可の事業の範囲に含まれる業者に限られます(施行令第6条の2第2号)
- 委託契約書には、委託する産業廃棄物の種類と数量を書きます(同条第4号)
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)にも、産業廃棄物の種類と数量を書きます(廃棄物処理法第12条の3第1項)
区分と処分先を書面に書ける形にするのは、工法を決める段階の作業です。
区分:固形の塗膜くずは廃プラスチック類、泥状のものは汚泥として考えます
大阪府の産業廃棄物のFAQに、合成樹脂系の塗膜についての回答があります。
合成樹脂塗膜は、廃プラスチック類に該当しますが、法令上は、鉛、六価クロム等の有害重金属を含んでいても特別管理産業廃棄物には該当しません。
(大阪府「その他の特別管理産業廃棄物等のQ&A(FAQ)」Q117、更新日 2025年8月15日)
廃プラスチック類の範囲は、環境省の留意事項(環整45号)に書かれています。
合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず等合成高分子系化合物に係る固形状及び液状のすべての廃プラスチック類を含むものであること。
(環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」昭和46年10月25日 環整45号)
廃棄物処理法は、産業廃棄物を「燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」と定めています(第2条第4項第1号)。施行令第2条が加える種類にも、塗膜という名前はありません。
この回答の対象は合成樹脂系の塗膜で、載っているのは大阪府の「産業廃棄物排出事業者のためのFAQ(建設廃棄物を除く)」の中の1問です。ほかの自治体の扱いや、塗膜の種類・状態が違う場合の扱いは、塗膜くずを出す地域の廃棄物担当課への確認が欠かせません。
泥状で出たものには、汚泥の区分も関わります。 水を使う剥離やウォータージェットでは塗膜片が水に混ざって出るので、固形で回収できた塗膜と泥状のままのものは、区分の考え方が別です。
環境省の留意事項に、汚泥の説明があります。
工場廃水等の処理後に残るでい状のもの、及び各種製造業の製造工程において生ずるでい状のものであつて、有機質の多分に混入したどろのみを指すのではなく、有機性及び無機性のもののすべてを含むものであること。
(環境省 環整45号 別紙(2)。原文の表記は「汚でい」)
大阪府の別のFAQでは、汚泥は「泥状を呈するもの」と整理されています。固形状・粉末状・粒状の不要物は、汚泥に当たりません(「産業廃棄物と一般廃棄物(FAQ)」、更新日 2024年7月16日)。
工法ごとに出るものが違い、区分を確かめる点も変わります
| 工法 | 出てくるもの | 区分を確かめる点 |
|---|---|---|
| 塗膜剥離剤 | 塗膜と剥離剤が混ざった塗膜くず | 剥離剤の製品名と成分の資料を、処分先に見せて受け入れられるか確かめます |
| ブラスト(乾式) | 塗膜粉と研削材の混合物 | 混ざったまま出すのか、研削材を選別して塗膜だけを出すのかで、処分する量が変わります(下の事例) |
| ウォータージェット | 塗膜片を含む水と汚泥 | 固形で回収したものと泥状のものを分け、それぞれの区分と処分先を決めます |
剥離剤を使う場合について、土木研究所のガイドラインは次のように書いています。環境省の資料が引用している文です。
回収した塗膜剥離剤を含有する塗膜は、そのまま所定の産業廃棄物として処理することができる。
(土木研究所「土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改訂第2版」平成29年3月 1.2③。環境省「橋梁等に使用された塗膜について」平成30年10月、参考資料7に引用)
各工法の発生物、粉じん、向く部位の違いは塗膜剥離工法の比較の記事にまとめています。レーザーの場合はレーザーによる塗膜除去の記事を参照してください。
ウォータージェットで除去すると、塗膜片を含む水と汚泥が出ます
ウォータージェットは水で塗膜を落とす工法で、施工中に出るのは透明な水ではなく、削り取った塗膜片が混ざった水です。古い塗膜に有害物質が含まれる場合、塗膜片は水と分けて回収し、産業廃棄物として処分する段取りになります。
水を集める形を先に作ることが、回収の前提です。養生シートを張る、堰を設ける、ポンプで吸い上げる、といった段取りで、橋梁の上や高所では足場の計画とセットで考えます。回収した水の扱いは、ウォータージェットの排水処理の記事にまとめました。
回収した固形の塗膜片と泥状のものは、上の2つの区分(廃プラスチック類・汚泥)で別々に考えます。処分を委託する書面に種類と数量を書くのは、排出事業者である元請業者です。
含有量と溶出量は別の物差しで、含有量だけでは処分の区分は決まりません
鋼橋の塗り替えでは、塗膜に鉛・PCB・六価クロムが含まれることがあります。近畿地方整備局の報告は、そのため事前に試験を行うよう書いています。試験は2系統に分かれます。
- 含有量試験: 塗膜に有害物が含まれるかを判定します。除去作業で守る法令(鉛中毒予防規則など)の適用に関わります
- 溶出量試験: 廃棄物として、基準を超えて有害物が溶け出すかを判定します。検液の作り方と測り方は、環境省の告示「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」(昭和48年環境庁告示第13号)に定められています
溶出量の基準値は、「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令」の別表第一が定めています。
| 物質 | 基準値(検液1リットルにつき) |
|---|---|
| 鉛又はその化合物 | 鉛0.3mg以下 |
| 六価クロム化合物 | 六価クロム1.5mg以下 |
含有量が高くても、溶出量が基準内になることがあります。近畿地方整備局 兵庫国道事務所の報告にある、同じ国道2号の2工事の結果です。
| 工事 | 鉛の含有量 | 鉛の溶出量 | 報告された扱い |
|---|---|---|---|
| 国道2号 左門橋 | 50,000mg/kg | 120mg/L | 特別管理産業廃棄物(低濃度PCBも含有) |
| 国道2号 浜手バイパス高架橋 | 6,700〜24,000mg/kg | 0.1mg/L未満 | 産業廃棄物 |
浜手バイパスは、鉛が最大24,000mg/kg含まれていても、溶出量が基準内だったため、産業廃棄物として処理されました。含有量の数字だけでは、処分の区分は決まりません。
溶出量が基準を超えたときの扱いは、資料で書き方が分かれます
溶出量が基準値を超えた塗膜くずの扱いについて、開いた資料の書き方は次のとおりです。
- 上越環境科学センター(分析機関)の資料は、鉛が0.3mg/Lを超える場合は特別管理産業廃棄物に該当する、と書いています
- 上の近畿地方整備局の報告も、左門橋で溶出量が判定基準以上だったため、特別管理産業廃棄物の扱いとしました。左門橋は低濃度PCBも含んでおり、報告はPCB廃棄物として特別管理産業廃棄物に区分されると書いています
- 大阪府は、合成樹脂塗膜は法令上、有害重金属を含んでいても特別管理産業廃棄物に該当しないとしています。そのうえで、基準を超えるものは「しゃ断型処分場で埋立処分するなど特定有害産業廃棄物に準じて処理することが望まれます」と書いています(しゃ断型処分場は、この回答が、特定有害産業廃棄物に準じた埋立先として挙げている処分場です)
大阪府の説明は、施行令第2条の4第5号の構成と合っています。鉛・六価クロムで特定有害産業廃棄物になる種類は、ばいじん・燃え殻・鉱さい・汚泥・廃酸・廃アルカリです。廃プラスチック類は入っていません(鉱さい以外は、施行令別表第三などに挙げる施設や工場から出るものに限られます)。廃プラスチック類が入るのは、PCBの項目(ロ(5))です。
一方、廃プラスチック類は、一部の例外を除いて、施行令第6条第1項第3号イ(1)で安定型産業廃棄物の1つに挙げられています。大阪府の回答は、有害重金属が溶出するおそれのある塗膜について、安定型処分場への埋立は適当でないという内容です。ここでの安定型処分場は、浸出液による汚染を防ぐ措置が講じられていない処分場を指します。
法令上の区分と、処分先が実際に求める受入基準は、別に確かめる必要があります。上越環境科学センターの資料も、次の注意を添えています。
実際に必要になる試験については、工事仕様を決定する発注者やそれぞれ受入基準を設けている搬出予定先等にあらかじめご確認ください!
(一般財団法人 上越環境科学センター「橋梁塗膜等の有害物質分析」2023年2月28日)
つまり、基準を超えたときの扱いは、処分先の受入基準と、排出する地域の廃棄物担当課で確かめます。
PCBが付着した廃プラスチック類は、特別管理産業廃棄物です
施行令第2条の4第5号ロは、PCB汚染物の種類を並べた条文です。その(5)は「廃プラスチック類(事業活動等発生物に限る。)のうち、ポリ塩化ビフェニルが付着し、又は封入されたもの」と定めています。PCBが付着していると判断された塗膜くずは、この区分で特別管理産業廃棄物になります。濃度の区分、処分期限(令和9年3月31日)、除去の段取りはPCB含有塗膜の除去工法と処理期限の記事を参照してください。
PCBが染み込んだ汚泥も、施行令第2条の4第5号ロ(1)のPCB汚染物(特別管理産業廃棄物)です。
判定の試料の取り方は、環境省の通知(令和元年10月11日)が示しています。
塗膜のサンプリングについては、対象施設毎に同一の塗膜構成毎に行うことを基本とする。
(環境省 環循規発第1910114号・環循施発第1910113号「ポリ塩化ビフェニルを含有する可能性のある塗膜のサンプリング方法について(通知)」令和元年10月11日)
同じ通知が示すサンプリングの量は、「上塗から下塗までの全ての塗膜について適切に分析できる量」です。
特別管理産業廃棄物として出すのは、塗膜くずだけに限りません。左門橋の報告は、養生の解体時に出た養生材や、作業員の防護服も、同様に特別管理産業廃棄物として処理したと書いています。
研削材を回収して使い回すと、搬出が約41tから約1tになった事例
新潟国道事務所の令和6年度技術研究発表会で、R6砂子沢橋外補修工事の報告があります。既存塗膜に鉛とPCBの含有が確認された橋で、塗膜剥離剤の試験施工では、1回の塗布で塗膜が剥がし切れませんでした。最終的に、金属系の研削材を回収・選別・再利用する循環式ブラストを採用しました。
| 搬出量 | 塗膜くず | 研削材 |
|---|---|---|
| 従来の素地調整ブラスト(施工歩掛による約1,000㎡あたりの数量) | 約1t | 約40t |
| 循環式ブラスト(本工事の実績・970㎡) | 1,011kg | 回収・選別して再使用 |
報告は、研削材を選別して使い回すことで、実質的に塗膜くずだけを産業廃棄物として処理できたと書いています。報告は1つの現場のもので、ほかの現場の数量は現場ごとに異なるものです。有害物を含む塗膜では、工法の選択が、搬出して処分する量を先に決めます。
処分を委託する前に確かめること
- 塗装記録と分析結果を探す。 鉛・六価クロム・PCBの含有量試験と、溶出量試験の結果があるかを確認します。無ければ、除去の前に分析が要ります
- PCBの試料が、塗膜構成ごとに採られているかを見る。 塗装系や塗替えの履歴が違う部分は、別の塗膜構成として扱われます
- 特記仕様書の工法指定と、処分の指定を読む。 剥離剤・ブラスト・湿式のどれが指定され、塗膜くずの区分が書かれているかを確認します
- 処分先の受入基準を聞く。 許可の品目、溶出量の受入値、混ざったものの可否を、処分先と、排出する地域の廃棄物担当課に確かめます
まとめ
塗膜くずの区分は、固形なら廃プラスチック類、泥状なら汚泥として考え、判定は含有量と溶出量の2系統が柱です。 処分を委託する書面には、排出事業者にあたる元請業者が、種類と数量を書きます。溶出量が基準を超えたときの扱いは資料の書き方が分かれるため、処分先の受入基準と排出地域の担当課への確認が欠かせません。PCBが付着した廃プラスチック類は、特別管理産業廃棄物です。
処分するものの種類と量は、除去の工法によって異なります。剥離剤では剥離剤が混ざった塗膜くず、ブラストでは研削材との混合物、ウォータージェットでは塗膜片を含む水と汚泥が出る、という違いです。
ご相談ください 塗装の記録(塗膜の種類と分析結果)、除去する面積、足場の有無が分かれば、ウォータージェットで塗膜を除去する場合の、塗膜片を含む水と汚泥の出方と、集めて回収するところ(固形の塗膜片と泥状のものの分け方)をご説明します。処分を委託する書面に種類と数量を書くのは、排出事業者である元請業者です。
費用が何で決まるかはウォータージェット工事の費用は何で決まるのか、相談の前に用意する情報は相談前に確認しておきたい現場条件の記事にまとめています。
本記事で参照した資料
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。第2条第4項、第12条の3、第21条の3)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号。第2条、第2条の4、第6条、第6条の2)
- 金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令(昭和48年総理府令第5号。別表第一)
- 環境省「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」昭和48年2月17日 環境庁告示第13号
- 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」昭和46年10月25日 環整45号(別紙(2)汚でい、廃プラスチック類)
- 大阪府「その他の特別管理産業廃棄物等のQ&A(FAQ)」更新日 2025年8月15日(Q117)
- 大阪府「産業廃棄物と一般廃棄物(FAQ)」更新日 2024年7月16日
- 環境省「ポリ塩化ビフェニルを含有する可能性のある塗膜のサンプリング方法について(通知)」令和元年10月11日
- 環境省「橋梁等に使用された塗膜について」平成30年10月(参考資料7。土木研究所ガイドラインの引用を含む)
- 近畿地方整備局 兵庫国道事務所「有害物質を含む塗膜処理について」(大西広祐・福島尚美。発行日の記載なし。掲載先は2016年の発表論文のページ)
- 新潟国道事務所 令和6年度 技術研究発表会「循環式ブラスト工法施工を用いた塗膜除去について」(R6砂子沢橋外補修工事)
- 一般財団法人 上越環境科学センター「橋梁塗膜等の有害物質分析」2023年2月28日
産業廃棄物の区分と受入基準は、自治体と処分先によって扱いが異なります。 工事の計画には、排出する地域の担当課と処分先に、最新の取扱いをご確認ください。