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工法解説

PCB含有塗膜の除去工法と処理期限 ― 令和9年3月末に向けて、分析・工法・処分先をどの順で決めるか

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 剥がしたPCB含有塗膜は、PCB廃棄物です。 低濃度PCB廃棄物の処分期間は令和9年3月31日までと定められています。
  2. 濃度で処分先が変わります。 0.5mg/kgを超えるとPCB廃棄物で、塗膜くずのような可燃性のものは10万mg/kg以下まで低濃度として処理できます。
  3. 除去は湿式が原則です。 国の工事では剥離剤が広く使われています。ウォータージェットを選ぶ場合は、水と汚泥をどこへ出すかを最初に決めます。

PCB含有塗膜とは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む塗料で塗られた塗膜のことです。 PCBは1972年に原則使用禁止になりました。それ以前に塗装された鋼橋やタンクには、PCBを含む塗料が使われていることがあります。塗り替えのために剥がした時点で、その塗膜片はPCB廃棄物になり、処分の期限と手順が法律で決まります。この記事では、原典を開いて確認できた内容を、工事の段取りの順に整理しました。

期限:令和9年3月31日

低濃度PCB廃棄物の処分期間は、PCB特別措置法の施行令で令和9年(2027年)3月31日までです。厚生労働省の資料は、塗膜について次のように書いています。

令和9年3月末までに処分委託を完了する必要がある。それまでに、PCB を含む既設の塗装塗膜を完全に除去することが求められている。

(厚生労働省「PCB含有塗膜除去作業、PCB廃棄物処理作業のばく露実態調査の結果について」令和3年12月20日)

環境省の検討委員会は、令和7年4月25日のとりまとめで次の見込みを示しました。

電気事業法で管理されている自家用電気工作物や橋梁等の塗膜を中心に未だに使用中のものがあるため、処理期限である令和9年3月末までに処理が完了できない見込み。

同じとりまとめは、橋梁やタンクなどの表面に残っているPCB含有塗料について、管理者に塗膜の管理計画と処理計画の提出を求める制度を検討するとしています。これを受けた改正法案は令和8年4月10日に閣議決定され、施行日は令和9年4月1日とされています(環境省 報道発表)。

塗膜が改正後の制度でどう扱われるかは、政省令とガイドラインで具体化されます。工事の計画には、発注時点の最新の告示と通知を当ててください。

濃度で、処分先が変わります

最初の作業は、既設塗膜の分析です。国土交通省東北地方整備局の発表(気仙沼地区構造物補修工事)では、塗装記録で含有が疑われた3橋の塗膜を分析し、次の結果が出ています。

橋梁(供用開始) PCB濃度
只越第一橋(1969年) 1.9 mg/kg
只越第二橋(1970年) 18,000 mg/kg
大沢第一橋(1970年) 12,000 mg/kg

近い年代に供用を始めた3橋でも、濃度に1万倍の開きがあります。塗装記録だけで濃度は決められず、分析が要ります。

区分の線は、令和元年12月に動いています。

上の表の18,000mg/kgと12,000mg/kgは、発表当時は高濃度として処分する扱いでした。同じ発表は、この改正で「低濃度PCBの処分場で処分できることが増えた」と書いています。

作業のきまり:湿式と保護具

PCBや鉛を含む塗膜の剥離では、厚生労働省の通達(平成26年5月30日)に沿って、次の措置が求められます。東北地方整備局の工事で実施された内容です。

  1. 剥離は湿式で行う。 困難な場合は、粉じん濃度を下げる方策を講じる
  2. 作業場から粉じんを持ち出さないよう、作業着等の洗浄を徹底する
  3. 電動ファン付き、または同等の機能を持つ呼吸用保護具を使う
  4. 粉じんを運搬・貯蔵するときは、堅固な容器か確実な包装にする

湿式が求められる理由は、厚生労働省の実態調査に数字で示されました。高架橋・河川橋の塗膜除去6現場(湿式3・乾式3)で測った結果、PCBのばく露は全現場で許容濃度を下回っています。一方、ダイオキシン類は、乾式のブラスト工法の1現場で、管理すべき濃度の6.8〜8.4倍が測定されました。作業者の血液中の濃度は一般の日本人の範囲内で、報告書の考察は「既存の対策に基づく労働衛生保護具によって、ばく露が抑制できているため」というものです。

東北地方整備局の発表は、湿式を「ブラスト工法と比べ、粉塵の発生が抑えられ」る工法と説明しています。

除去の工法は3つです

工法 剥がし方 出てくるもの
塗膜剥離剤 薬剤で塗膜を軟らかくし、シート状にかき取る 塗膜くず・剥離剤・養生材
ブラスト(乾式) 研削材を吹き付けて削る 塗膜粉・研削材の混合物
ウォータージェット 超高圧の水で塗膜を除去する 塗膜片を含む水と汚泥

国の工事で広く使われているのは、剥離剤です。 湿式の要求に応えやすく、給排水の設備も要りません。東北地方整備局の工事も剥離剤でした。当初の設計は高級アルコール系でしたが、火災の危険性から水系の剥離剤と比べ、3橋ともどちらの剥離剤も有効だったため、水系を使いました。

剥離剤に求められる性能は「土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改訂第2版」で定められています。

ウォータージェットを選ぶときに、先に決めること

ウォータージェットは水を使う湿式の工法で、薬剤を使いません。鋼材は内部に隙間が無く水が入り込めないため、塗膜とさびを除去したあとの鋼材はそのまま残ります。火花が出ないため、可燃性の剥離剤を避けたい環境でも使える工法です。

PCB含有塗膜では、塗膜片を含んだ水と汚泥をどこへ出すかを、最初に決めます。 環境省の資料では、汚泥はPCB汚染物の例として挙げられています。塗膜片を含んだ水と汚泥をどう集め、どう分け、どこで処理するかが決まらないうちは、工程も費用も組めません。

この3つが組めれば、ウォータージェットは選択肢になります。組めない現場には、剥離剤が向いています。(関連:ウォータージェットの排水処理/鋼構造物の塗膜除去|鉛を含む塗膜で湿式が求められる場面)

処分までの保管

剥がした塗膜は、通常の産業廃棄物とは扱いが違います。許可の無い業者は運搬も処分もできません。 東北地方整備局の工事では、運搬・処分の業者と別に契約し、搬出が決まるまでの間、雨風の当たらないトンネルの電気室で保管しています。

保管場所が無いと、剥がした塗膜の置き場が無くなり、工程が止まります。着工前に決めるのは、保管場所と搬出の時期の2つです。

今日、確認できること

  1. 塗装記録を見る。 桁に表示された塗装記録で、含有が疑われるかの見当がつきます
  2. 分析結果があるかを確認する。 無ければ、除去の前に分析が必要です。処分先は濃度で決まります
  3. 特記仕様書の工法指定を読む。 剥離剤が指定されているか、湿式とだけ書かれているかで、選べる工法が変わります
  4. 処分先と保管場所を決める。 期限が令和9年3月31日なので、処分の委託先も早めに決めます

まとめ

剥がしたPCB含有塗膜は、濃度に応じてPCB廃棄物として処分することになります。 低濃度の処分期間は令和9年3月31日までで、使用中の塗膜の扱いは法改正で制度化が進んでいます。

除去は湿式が原則で、国の工事では剥離剤が広く使われています。ウォータージェットは薬剤を使わない湿式の工法で、水と汚泥の集め方と処分先が着工前に決まる現場なら選択肢に入ります。

ご相談ください 分析結果と特記仕様書を見せていただければ、ウォータージェットで段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 剥離剤のほうが合う現場なら、答えは剥離剤です。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。PCBの制度は改正が続いています。 工事の計画には、発注時点の最新の法令・通知で必ずご確認ください。

よくある質問

PCB含有塗膜の処理期限はいつですか?
令和9年(2027年)3月31日です。低濃度PCB廃棄物の処分期間として、PCB特別措置法の施行令で定められています。工事の計画には、発注時点の最新の法令・通知を当ててください。
期限までに除去できない塗膜はどうなりますか?
使用中の塗膜の扱いは、法改正で制度化が進んでいます。改正法案は令和8年4月10日に閣議決定され、施行日は令和9年4月1日とされています。具体的な扱いは、政省令とガイドラインで決まります。
何mg/kgからPCB廃棄物になりますか?
0.5mg/kgを超えると、PCB廃棄物として扱われます。塗膜くずのような可燃性のPCB汚染物は、令和元年12月から10万mg/kg以下まで低濃度として処理できるようになりました(以前は5,000mg/kg以下)。
PCB含有塗膜の除去は、なぜ湿式で行うのですか?
粉じんの発生を抑えるためです。厚生労働省の実態調査では、乾式のブラスト工法の1現場で、ダイオキシン類が管理すべき濃度の6.8〜8.4倍測定されました。湿式にすると、粉じんの発生を抑えられます。
PCB含有塗膜はウォータージェットで除去できますか?
できます。ただし、塗膜片を含んだ水と汚泥の集め方・分け方・処分先を、着工前に決めておく必要があります。この段取りが組めない現場には剥離剤が向いています。国の工事で広く使われているのは剥離剤です。

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