この記事の要点
- 「サンドブラスト(乾式)」「湿式ブラスト」「ウォータージェット」は別の工法です。湿式ブラストは水を使いますが、研削材も使います。研削材を使わないのはウォータージェットだけです。
- 差がはっきり出るのは、廃棄物として出るものと、母材への影響です。ブラストは使った研削材が廃棄物になり、その研削材が母材にも当たります。
- ブラストが向く場面もあります。給排水の段取りが組めない現場や、素地を乾いたまま次工程へ渡したい場合です。
工法の打ち合わせで、「アクアブラスト」「ウェットブラスト」「湿式ブラスト」「ウォータージェット」が同じものとして話されることがあります。どれも水が絡む素地調整なので無理もないのですが、原理の違う別の工法です。取り違えたまま仕様を固めると、粉じん対策も廃棄物の計画も、想定と違う形になります。
この記事は、その交通整理をします。鉛を含む塗膜での法令要件や剥離剤との使い分けは別記事に譲り、「研削材を使うのか、使わないのか」の一点に絞ります。(関連:鋼構造物の塗膜除去)
名前が似ている4つを分けます
サンドブラスト(乾式ブラスト)
砂やスチールグリッドなどの研削材を、圧縮空気で吹き付けて削る工法です。水は使いません。飛んできた固い粒の衝撃で塗膜やサビを飛ばします。削っているのは研削材です。
湿式ブラスト(ウェットブラスト)
研削材に水を加えて吹き付ける工法です。水は、舞い上がる粉じんを抑えるために入っています。
「湿式」という言葉から水で削っていると受け取られがちですが、削っているのは乾式と同じく研削材です。 ここが取り違えの中心にあります。
ウォータージェット(超高圧水洗)
水を 200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径0.1〜3mm のノズルから マッハ1〜3 の速さで噴射します。研削材は入れません。水だけです。
水の勢いが押しつける力に変わる水圧と、生じたひび割れに水が入り込んで押し広げる水くさび作用で、塗膜や脆弱部を剥がします。(関連:ウォータージェットの仕組み)
アブレーシブジェット

超高圧の水に研削材を混ぜたものです。素地調整ではなく金属を切断するために使います。当社の6種類あるガンのうち「アブレーシブカット」がこれです。
「水を使う」ことと「研削材を使わない」ことは、別の話です。
表で並べるとこうなります
素地調整に使う3方式を並べます(アブレーシブジェットは切断用のため除きます)。
| サンドブラスト(乾式) | 湿式ブラスト | ウォータージェット | |
|---|---|---|---|
| 原理 | 研削材を圧縮空気で吹き付ける | 研削材に水を加えて吹き付ける | 超高圧の水を噴射する |
| 研削材 | 使う | 使う | 使わない |
| 粉じん | 出やすい | 抑えやすい | 抑えやすい |
| 廃棄物 | 研削材+塗膜片 | 研削材+塗膜片+水 | 濁水+削りカス |
| 母材への影響 | 繰り返すと痩せる可能性 | 繰り返すと痩せる可能性 | 金属母材は削れない |
| 水の段取り | 不要 | 必要 | 必要 |
| 施工後の素地 | 乾いた状態 | 濡れる | 濡れる(発錆対策が要る) |
※現場条件により結果は異なります。
どれが優れているという表ではありません。 研削材を使う工法は削る力を研削材から得る代わりに、その処分と母材への当たりを引き受けます。ウォータージェットはその逆です。
現場で効くのは「廃棄物」と「母材」の2点
廃棄物として出るものが変わります
ブラスト系では、吹き付けた研削材そのものが廃棄物になります。 塗膜片やサビと混ざった状態で落ちるため、回収して処分します。湿式なら、そこに水が加わります。
ウォータージェットで出るのは、削りカスが混ざった濁水です。研削材の分は加算されませんが、水の回収と処理が発生します。そのまま流せるとは限らず、水処理と産業廃棄物としての処分が要ります。(関連:排水・濁水の処理)
「量が少ないほうが軽い」とは限りません。 どちらの負担が大きいかは、現場の給排水事情と処分ルートで決まります。
母材に何が当たっているか
ブラスト系は、固い研削材が塗膜だけでなく母材にも当たります。1回で問題になる量ではないとしても、塗り替えのたびに少しずつ痩せていく可能性があります。
ウォータージェットは、金属の母材そのものを削りません。金属は内部に空隙がなく、水が侵入できないためです。水くさび作用が起きないので、表面の塗膜とサビだけが落ちます。(関連:ウォータージェットのメリット)
裏返しも正直にお伝えします。施工後、素地は濡れます。 発錆への配慮として防錆剤を使うなど、次工程までの段取りが要ります。乾いた素地がそのまま残る乾式に分がある部分です。(関連:ウォータージェットの注意点)
「吸引型アクアブラスト」は、サンドブラストではありません
当社の装置に「吸引型アクアブラスト」があります。名前に「ブラスト」と付きますが、研削材は使いません。 超高圧の水で削るウォータージェットの装置のひとつです。
特徴は、削りながら削りカスと水をその場で吸い込む点にあります。周囲へ飛び散らないため、仮設養生の手間を抑えられます。施工量の目安は約80㎡/日(2ガン)、騒音は約80dBとされています。
同じウォータージェットでも装置で変わります。人が手に持つハンドガンは約120dBで飛散もあります。(関連:装置の構成/騒音・振動・粉じんの実際)
「ブラスト」は、吹き付けて素地を調整する作業の総称として定着した言葉です。名前は目的を表していて、原理までは表していません。 仕様書で「ブラスト」と出てきたら、乾式か、湿式か、水だけの方式かを一度確認しておくと、粉じん対策も廃棄物の量も養生計画も同じ前提で組めます。
ブラストが向く場面もあります
私たちはウォータージェットの専業ですが、すべての現場でこれが最適だとは考えていません。
水の段取りが組めない現場。 給水も、排水の受け皿も、処理ルートも確保できないなら成立しません。削る面積に対して給排水の準備が過大になる小規模な現場も同じです。
素地を乾いた状態で次工程へ渡したい場合。 塗装までの時間が限られている、発錆を管理する手間をかけたくない、という条件では乾式に分があります。
発注仕様で研削材による素地調整が指定されている場合。 求められる程度は仕様書に書かれています。記載を確認したうえでの判断になります。
サンドブラストは長く使われてきた確立した工法です。置き換わるべきものではなく、条件で選び分けるものだと考えています。
まとめ
廃棄物として研削材が出ないのも、母材が痩せないのも、ウォータージェットだけです。湿式ブラストは水を使いますが、研削材は使います。同じものとして扱うと、粉じん対策から廃棄物の計画まで前提がずれます。
その代わり、水の段取りと発錆への配慮を引き受けます。分かれ目は「水の段取りが組めるか」と「同じ対象を何度も処理するか」の2点です。
ご相談ください 「ブラストで進めるべきか、ウォータージェットが向いているか」という段階からご相談いただけます。現場条件と仕様書をうかがい、当社で対応が難しい場合や、ブラストなど別の工法のほうが適している場合は、そのようにお伝えします。 株式会社サンテックは1993年の設立以来、超高圧ウォータージェット工法だけを手がけ、年平均92物件・累計1,500件以上の現場を重ねてきました。他社で断られた案件のご相談も日常的にお受けしています。