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工法解説

滑走路のゴム除去はなぜウォータージェットなのか|供用の合間に入り、時刻までに撤収する仕事

2026-08-12 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 滑走路のゴムは、着陸のたびにタイヤが削れて路面に残ったものが積み重なったものです。放置すると、排水と滑り止めのための溝を上から埋めます。
  2. ウォータージェットが使われるのは、舗装と溝の形を残したままゴムを落とせるためです。削り取る方式では、溝そのものを崩すおそれがあります。
  3. この現場の本体は除去ではなく段取りです。供用していない時間の合間に入り、区域を管理し、決められた時刻までに水ごと撤収します。

滑走路のゴム除去は、ウォータージェットの用途としてよく挙げられます。ただ正直なところ、この工事を検索から探す方はほとんどいません。空港の維持管理は、常駐や年間契約という枠組みで回っているためです。

それでもこの記事を置くのは、この現場の組み方が、ウォータージェット工事のむずかしさをいちばん素直に表しているからです。削る作業より、時間と区域の管理が仕事の中身になる——供用中の施設ではいつもぶつかる話です。

なぜ滑走路にゴムが溜まるのか

航空機が着陸する瞬間、タイヤはまだ回っていません。止まったままのタイヤが、高速で流れる路面にいきなり触れます。この一瞬でタイヤの表面が削られ、そのゴムが路面に残ります。着陸時に白い煙が上がるのは、このためです。

1回あたりはごくわずかですが、着陸する機体はどれもほぼ同じあたりに接地します。同じ場所で、同じことが繰り返される。 ゴムは接地区域に集中して積み重なり、やがて黒い帯として目に見えてきます。

溝が埋まることが問題です

滑走路の路面には、細かい溝が刻まれています。グルービングと呼ばれるもので、雨水を逃がし、タイヤと路面の間に水の膜ができるのを防ぐためのものです。舗装の表面にも、滑りにくさを生む細かい凹凸があります。

堆積したゴムは、この溝と凹凸を上から埋めます。埋まれば水が抜けにくくなり、路面の摩擦が落ちます。 雨の日ほど影響が出るのは、そのためです。

つまりゴム除去は、汚れを落とす掃除ではありません。路面がもともと持っていた排水と滑り止めの機能を、元の形に戻す作業です。目的は「黒い跡が消えること」ではなく「溝が元の形で出てくること」です。

なぜ削らずに水で落とすのか

ハンド回転ガン。先端に飛散を抑えるカップが付き、水とエアーの2系統がつながっている
削り取る方式 ウォータージェット
落とし方 路面ごと機械的に削る 超高圧の水ではがす
溝(グルービング) 形を崩すおそれがある 残しやすい
舗装表面 一緒に削れる 影響を抑えやすい
粉じん 出やすい 湿式のため抑えやすい
水の段取り 不要 回収と処理が要る
向く場面 路面ごとやり直すとき 舗装と溝を残したいとき

※現場条件により結果は異なります。

ウォータージェットは、水を200MPa以上(大気圧の約2,000倍以上)まで昇圧し、直径0.1〜3mmの細いノズルからマッハ1〜3の速さで噴射します。当たった瞬間の水圧で表面を壊し、生じた隙間に水が入り込んで内側から押し広げる水くさび作用ではがします。(関連:ウォータージェットはつりとは)

滑走路で効くのは、圧力と水量を調整できる点です。強く当てれば舗装も削れ、弱ければゴムが残ります。その幅の中で、路面と溝を残したままゴムが落ちる条件を探すのが施工の勘どころです。舗装の種類やゴムの厚みで条件は変わるため、「どこでも同じ設定で落ちる」とは申し上げません。(関連:区画線消去はウォータージェット式か削り取り式か)

この仕事の本体は、供用の合間の段取りです

滑走路は、航空機が使っていない時間帯にしか入れません。しかもその時間は先に決まっていて、こちらの都合で延ばせません。入る時刻と出る時刻が決まっていて、その中に作業を収めるという組み方になります。道路工事の交通規制と似ていますが、超過したときの影響がまるで違います。

段取りは次の順で組みます。

  1. 持ち込む機材と人を、時間内に出し切れる量に決める。 出し切れない量を持ち込まない
  2. 区域をどう区切り、誰が管理するかを決める。 立入りと車両の動線が空港側の管理と噛み合う必要があります
  3. 撤収から逆算して、除去を止める時刻を決める。 片付けと水の回収に要る時間を先に確保し、残りが作業時間です
  4. 予定より落ちが悪かったときの扱いを、事前に決めておく。 その場で相談する余裕はありません

4が抜けている計画は、現場で止まります。 想定と違うことは起こります。起きたときに立ち止まれないのが、この現場です。(関連:工期はどう決まるか)

水を残さない ― 回収まで含めて時間内です

滑走路ならではの条件がもうひとつあります。使った水を路面に残せません。

出てくるのはただの水ではなく、落としたゴムの粉が混じった濁水です。水たまりを残して引き渡すわけにはいきませんし、そのまま流せるとも限らず、回収して場外で処理する必要があります。

だから、削りながら同時に吸い込む方式が要点になります。吸引型のガンは、削りカスと水をその場で吸い込むため飛散が抑えられます。見た目のための工夫ではなく、時間内に撤収し切るための設計です。(関連:排水・濁水の処理)

空港の維持管理は、常駐と年間契約で回っています

正直に申し上げます。空港のゴム除去は、検索して発注先を探す市場ではありません。 主要な空港には維持管理を担う会社が常駐しており、点検・補修・ゴム除去はその枠組みで計画されます。私たちも「明日から滑走路をやれます」と申し上げるつもりはありません。

それでもこの組み方を書くのは、同じ制約が、空港以外の現場にもそのまま出てくるからです。

「決まった時刻に入り、決まった時刻までに水ごと撤収する」という組み方は、どれも同じです。滑走路は、その条件がいちばん厳しく出る現場だというだけです。(関連:現場条件チェックリスト)

まとめ

滑走路のゴム除去は、排水と滑り止めのための溝を元の形に戻す作業です。削り取る方式では溝の形まで崩すおそれがあるため、圧力と水量を調整できるウォータージェットが使われます。

ただし、この現場でむずかしいのは除去そのものではありません。供用していない時間の合間に入り、区域を管理し、決められた時刻までに水ごと撤収する——この段取りが仕事の本体です。「どれだけ速く落とせるか」ではなく「時間内に片付けて出られるか」で組めるかが効いてきます。(関連:ウォータージェットが向かない現場)

ご相談ください 「止められる時間が限られている」「稼働の合間にしか入れない」という条件からで構いません。使える時間と区域の条件をうかがったうえで、その時間では収まらないと判断すれば、そのようにお伝えします。株式会社サンテックは1993年の設立以来、超高圧ウォータージェット工法だけを手がけ、年平均92物件・累計1,500件以上の現場を重ねてきました。

よくある質問

なぜ滑走路のゴム除去が必要なのですか?
着陸のたびにタイヤが路面で削れ、接地する区域にゴムが堆積します。滑走路には排水と滑り止めのための溝が設けられていますが、ゴムが溝を埋めると路面の摩擦が落ち、とくに雨天時に滑りやすくなります。この防滑性を元に戻すために除去します。
削り取る方式ではいけないのですか?
削り取る方式は路面ごと落とすため、溝の形や舗装表面の細かい凹凸を崩すおそれがあります。ウォータージェットは圧力と水量を調整して、舗装と溝を残しながら堆積したゴムを落とす狙いで使います。ただし路面の状態によって結果は変わります。
作業できる時間はどれくらいありますか?
空港ごとの運用によって変わるため、一律には申し上げられません。共通しているのは、供用していない時間帯の合間に入り、決められた時刻までに人と機材をすべて出すという条件です。この時間の管理が、除去そのものより重い仕事になります。
使った水は滑走路に残らないのですか?
残せません。落としたゴムの粉が混じった濁水になるため、その場で回収して場外で処理する前提で計画します。回収まで含めて時間内に終える必要があり、削りながら同時に吸い込む方式を選ぶ理由もここにあります。

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