この記事の要点
- 国の改修仕様書では、既存の防水層を「撤去するか残すか」で工法の名前が決まります。 アスファルト防水・シート防水には撤去する工法と残す工法の両方があり、ウレタンゴム系の塗膜防水には残す工法(L4X)だけが定められています。
- 保護コンクリートの撤去は「ハンドブレーカー等」で、質量15kg以上は監督職員との協議になります。 防水層の撤去には道具の指定が無く、「既存下地に損傷を与えないように」という条件だけが書かれています。
- ウォータージェットは、撤去後の下地に残った劣化部の除去で選択肢になります。 撤去中の屋上に水を流すことになるため、下の階が使われている建物や、乾燥の日数を取れない工程には向きません。
防水層の撤去工法とは、屋上の防水改修で既存の保護層と防水層をどこまで取り除き、どの状態の下地に新しい防水層を施工するかを決める手順のことです。 官庁の改修工事では「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」の3章[防水改修工事]に定めがあります。この記事では、同じ仕様書の原文を開いて、撤去の工程と撤去後の下地処理を順に整理しました。
工法の名前は「既存の種類・撤去の範囲・新しい防水」の3つで決まります
仕様書の表3.1.1は、改修工法を「P1B工法」「M4AS工法」のような記号で表します。1文字目が既存の防水、2文字目の数字が撤去の範囲、残りが新しく施工する防水の種別です。
| 1文字目(既存の防水) | 数字(撤去の範囲) |
|---|---|
| P=保護アスファルト防水 | 1=保護層及び防水層撤去 |
| M=露出アスファルト・改質アスファルト防水 | 2=保護層撤去及び防水層非撤去(立上り部等は撤去) |
| S=合成高分子系ルーフィングシート防水 | 3=露出防水層撤去 |
| L=ウレタンゴム系塗膜防水 | 4=露出防水層非撤去/0=保護層及び防水層非撤去 |
どの工法にするかは「特記による」とされています。決めるのは特記仕様書です。 既存が断熱工法なら、防水層を撤去するときは既存の断熱材も撤去の対象になります(表の注記)。
塗膜防水(L4X工法)には、撤去の工程がありません
表3.1.1で、既存がウレタンゴム系塗膜防水の改修工法はL4X工法の1つしかありません。工程は「既存下地の処理」と「防水層の新設」の2つで、既存の塗膜防水層の上に新しい塗膜防水を重ねます。
既存の塗膜のうち、手を入れるのは傷んだ部分だけです。仕様書3.2.6(3)は次のように定めています。
既存防水層の破断、穴あき箇所の浮き部分及びふくれ部分は、切除し、ポリマーセメントモルタルで平滑に補修する。既存防水層の劣化によるチョーキング部は、デッキブラシ等で水洗いを行う。
(国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」3.2.6(3)(カ)(c))
補修した後は、乾燥させてから層間接着用プライマーを塗布します。露出アスファルト防水を残すM4工法、シート防水を残すS4工法も、既存防水層の損傷箇所を切開または切除して補修し、その上に新しい防水層を重ねる点は共通です。
保護コンクリートの撤去:ハンドブレーカー等、15kg以上は協議
保護アスファルト防水では、防水層の上に保護コンクリートが載っています。P1・P2工法では、防水層に手を付ける前に保護層を撤去します。仕様書3.2.3の定めは次のとおりです。
(ア) 保護コンクリート、れんが、モルタル笠木等の撤去は、ハンドブレーカー等を使用し、取合い部の仕上げ、構造体等に影響を及ぼさないように行う。
(ウ) やむを得ず、質量15kg以上のハンドブレーカー等を使用する場合は、監督職員と協議する。
(同 3.2.3)
防水層を残すP2工法では、保護層を撤去するときに既存防水層にできるだけ損傷を与えないことが求められています。保護コンクリートの中の鉄筋等を切断する場合は、撤去面より深い位置で切断し、鉄筋が露出しないようポリマーセメントモルタル等で平滑に仕上げます。
ハンドブレーカーは打撃式のはつり(ピックはつり)の道具です。打撃音と、構造体を伝わる振動が発生します。下の階への音の伝わり方は、ウォータージェットの騒音・振動・粉じんで扱っています。
防水層の撤去:道具の指定は無く、「既存下地に損傷を与えないように」
既存防水層そのものの撤去について、仕様書3.2.4の定めは次の1文です。
平場及び立上り部の既存防水層(断熱工法の場合は、断熱材を含む。)の撤去は、既存下地に損傷を与えないように行う。
(同 3.2.4(ア))
保護層の撤去には「ハンドブレーカー等」と道具が書かれていますが、防水層の撤去には道具の名前がありません。仕様書が決めているのは道具ではなく、撤去した後の下地の状態です。 どの機械・工具で剥がすかは、既存防水層の種類と下地の状態を見て、施工計画で決めることになります。
ルーフドレンの周囲は、防水層を残す工法でも撤去の範囲です。ルーフドレン端部から300mm程度まで既存防水層を四角形に撤去し、撤去した端部は既存の防水層や保護層を含めてポリマーセメントモルタルで勾配1/2程度に仕上げます。
撤去後の下地処理:ケレン、ひび割れ2mm、欠損部、ぜい弱部
防水層を撤去したあとのコンクリート面・モルタル面の処理は、仕様書3.2.6(2)に並んでいます。P1B工法などの場合は次の4つです。
| 下地の状態 | 処理 |
|---|---|
| 防水層残存物等の付着 | ケレン及び清掃 |
| ひび割れ | アスファルト防水工事用シール材で補修。幅2mm以上はUカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填 |
| 欠損部・支障のある浮き部 | ポリマーセメントモルタルで平滑に補修(浮き部は撤去してから) |
| ぜい弱部 | ケレン等のうえ、ポリマーセメントペースト等で補修 |
新しい防水がシート防水(S3S工法など)の場合は、ひび割れの補修材がポリマーセメントモルタルになり、下地プライマー等が残っていればポリマーセメントペースト等の下地調整材を塗り付けます。部分的な水はけ不良や勾配不良は、工法によって「補修」と「監督職員と協議」に分かれています。
撤去した結果、下地の状況から設計図書どおりの施工方法が不適当と分かった場合は、監督職員と協議します(3.1.3(1))。下地の傷み具合は、防水層を剥がしてみるまで分かりません。
新しい防水層は「下地が十分乾燥した後」
アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、シート防水、塗膜防水のいずれも、仕様書が示すプライマー塗りの前提は「下地が十分乾燥した後」です。3.1.3(2)は、下地の乾燥が不十分な場合は施工を行わないと定めています。
撤去中の雨についても定めがあります。特記が無ければ、降雨等のおそれがある日は既存の防水層の撤去等の作業を行わず、一日の作業終了後はシート等で漏水の無いよう養生します(3.1.3(5))。防水層を剥がしている間は、屋上から下の階への漏水を防ぐことが前提になっています。
ウォータージェットが向く場面、向かない場面
ウォータージェットは、水圧でコンクリートの劣化部を除去し、健全なコンクリートを残す工法です。撤去の工程と照らすと、向く場面と向かない場面は次のように分かれます。
| 場面 | 向き・不向き |
|---|---|
| 撤去後の下地に、ケレンでは取りきれないぜい弱部が広く残っている | 向く。劣化部を除去し、健全な下地を残せる |
| 下の階に使われていない空間がある、または水の受けと養生で漏水を止められる | 選択肢になる |
| 下の階が使われていて、撤去中の屋上に水を流せない | 向かない。仕様書も撤去中の降雨を避けている |
| 工程に、下地を乾燥させる日数を取れない | 向かない。新しい防水は十分乾燥した下地が前提 |
| 既存防水層を残す工法(M4・S4・L4Xなど) | 出番が少ない。仕様書の処理はデッキブラシ等での水洗いと部分的な切除 |
外壁の塗り仕上げの改修(4.5.4)には、既存塗膜と下地コンクリートの劣化部を除去する「高圧水洗工法」があります。加圧力は試験施工で決めて監督職員の承諾を受け、既存塗膜の除去は十分な経験と技能を有する技術者が施工する、という定めです。防水改修の3章には水を使う撤去工法の定めが無く、使う場合は特記か協議で位置づけることになります。
水を使う以上、給水と排水の段取りも欠かせません(関連:ウォータージェットの排水処理/ウォータージェットはつりとは)。
着工前に確認すること
- 特記仕様書の改修工法を読む。 P1B・M4ASなどの記号で、撤去の範囲が決まっています
- 石綿含有建材の事前調査結果を確認する。 仕様書1.5.1は改修工事の前に事前調査を求め、3.1.5は改修部に石綿・鉛等の有害物質を発見した場合に監督職員と協議するとしています(関連:石綿含有仕上塗材の除去とウォータージェット工法)
- 下の階の使われ方を確かめる。 撤去中の養生の方法と、水を使う工法を選べるかが変わります
- 乾燥の日数を工程に入れる。 撤去から新しい防水の施工までの間に、下地を乾かす期間が要ります
まとめ
屋上の防水改修は、既存の防水層を撤去するか残すかを特記で決め、撤去した場合は下地をケレン・補修してから、十分乾燥させて新しい防水層を施工します。 保護コンクリートはハンドブレーカー等で撤去し、防水層の撤去は道具ではなく「既存下地に損傷を与えない」という結果で決められています。
ウォータージェットは、撤去後の下地に広く残った劣化部の除去で選択肢になります。下の階が使われていて水を流せない建物や、乾燥の日数を取れない工程には向きません。
ご相談ください 特記仕様書と建物の使われ方を教えていただければ、ウォータージェットで下地処理の段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 ケレンと補修で足りる下地なら、その旨をお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。
本記事で参照した資料
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」令和7年3月21日 国営建技第5号(最終改定 令和7年5月12日 国営建技第1号)(1.5.1/3.1.1〜3.1.5/3.2.3〜3.2.6/3節〜6節のプライマー塗り/4.5.4)
- 国土交通省 官庁営繕「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」(掲載ページ)
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。工事の計画には、発注時点の特記仕様書と最新の仕様書をあわせてご確認ください。