この記事の要点
- 「レベル1〜3」は、国のマニュアルが一般的な呼び名として紹介している通称です。 法令は、吹付け石綿、石綿を含有する断熱材・保温材・耐火被覆材、石綿含有成形板等、石綿を含有する仕上塗材という建材の名前で区分しています。
- 作業実施の届出が要るのは、レベル1とレベル2です。 大気汚染防止法と労働安全衛生法の届出を、作業開始の14日前までに出します。事前調査・報告と作業基準は、レベル3と仕上塗材にもかかります。
- 除去の方法は、区分ごとに決まっています。 レベル1は負圧隔離のうえ湿潤化して掻き落とし、レベル3は原形のまま取り外すのが原則です。ウォータージェットは、吹付け材・煙突の断熱材・仕上塗材の除去で国のマニュアルに出てきます。
アスベスト(石綿)のレベルとは、石綿を含む建材を種類ごとにレベル1〜3と呼び分ける通称で、番号が小さいほど発じん性の高い区分です。 厚生労働省と環境省のマニュアルでは、この呼び名が「一般に」使われている名前として紹介されています。届出や作業の決まりを定める条文には、建材の名前が使われます。この記事では、令和2年の法改正(令和3年4月施行)後の原典を開き、区分ごとに届出・作業の決まり・除去の方法を整理しました。
「レベル」は通称です。法令は建材の名前で区分します
マニュアルの用語の定義には、レベルの呼び名が次のように出てきます。
大防法施行令の「吹付け石綿」、石綿則の「吹き付けられた石綿」を指し、具体的には、吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール、石綿含有ひる石吹付け材及び石綿含有パーライト吹付け材を指す。一般に「レベル1建材」と称されているものである。
(厚生労働省・環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」p.71)
レベル2とレベル3も、同じページで「一般に」の呼び名として書かれています。法令の側の名前と並べてみます。
| 通称 | 大気汚染防止法での名前 | 石綿障害予防規則での名前 | マニュアルでの名前 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 吹付け石綿 | 吹き付けられた石綿等 | 石綿含有吹付け材 |
| レベル2 | 石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材 | 石綿含有保温材等 | 石綿含有保温材等 |
| レベル3 | 石綿含有成形板等 | 石綿含有成形品 | 石綿含有成形板等 |
| (番号なし) | 石綿を含有する仕上塗材 | 石綿含有仕上げ塗材 | 石綿含有仕上塗材 |
4つ目の仕上塗材には、マニュアルの表でレベルの番号が付いていません。仕上塗材の下地に使う石綿含有下地調整塗材は、法令上は成形板等の区分です。除去作業は仕上塗材と合わせて行うため、マニュアル(p.71)は仕上塗材として扱っています。
区分の扱いを変えたのは、令和2年の法改正です。マニュアル(p.17〜18、p.179、p.205)によると、令和3年4月の施行で、大気汚染防止法の規制対象に成形板等(レベル3)が加わり、仕上塗材も施工方法にかかわらず対象になりました。石綿則でも、仕上塗材は施工方法にかかわらず「吹付けられている石綿等」から除かれ、除去の措置が別に定められています。改正前の資料と読み比べるときは、区分の名前と対象を確かめてください。
レベルの基準:建材の種類で分かれ、発じん性は目安です
どのレベルに当たるかは、建材の種類で決まります。マニュアルの表4.1.1は、区分ごとの主な建材と発じん性を次のように示しています。
| 区分 | 主な建材 | 発じん性 |
|---|---|---|
| レベル1 | 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、石綿含有吹付けバーミキュライト、石綿含有吹付けパーライト | 著しく高い |
| レベル2 | 耐火被覆板、けい酸カルシウム板第2種、屋根用折板裏石綿断熱材、煙突用石綿断熱材、配管などの石綿保温材 | 高い |
| レベル3 | スレートボード・スレート波板、窯業系サイディング、押出成形セメント板、けい酸カルシウム板第1種、せっこうボード、ビニル床タイル、セメント円筒、パッキンなど | 比較的低い |
| 仕上塗材 | 建築用仕上塗材、建築用下地調整塗材 | 比較的低い |
マニュアル(p.18)で「石綿を含有する」とされるのは、石綿を意図的に含有させたものか、石綿の質量が建築材料の0.1重量%を超えるものです。表の使い方については、次の注意書きがあります。
したがって、石綿の除去等作業を行う際は発じん性の目安として表 4.1.1 を参照しつつも、劣化状況のほか、作業方法といった因子等を十分に考慮する必要がある。
(同マニュアル p.78)
同じページには、保温材等に当たる建材でも、吹付け材に相当する発じん性を示す場合があると書かれています。区分で法令の手順が決まり、そのうえで劣化の程度と作業方法を見て対策を組みます。
名前の似た建材で、区分が分かれるものもあります。けい酸カルシウム板は、第1種がレベル3、第2種がレベル2です。 マニュアル(p.181)によると、第1種は厚さ4〜12mmで天井材や壁材に、第2種は厚さ12〜70mmで鉄骨の耐火被覆材に使われています。
届出:レベル1とレベル2は、作業開始の14日前まで
作業実施の届出の対象については、大気汚染防止法施行令に次の条文があります。
法第十八条の十七第一項の政令で定める特定建築材料は、吹付け石綿並びに石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材とする。
(大気汚染防止法施行令 第10条の2)
| 法令 | 対象 | 届け出る人と届出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 大気汚染防止法 第18条の17(特定粉じん排出等作業の実施の届出) | レベル1・レベル2 | 発注者又は自主施工者 → 都道府県知事(委任された市は市長) | 特定粉じん排出等作業の開始の日の14日前まで |
| 労働安全衛生法 第88条第3項(計画の届出) | レベル1・レベル2(レベル2は、石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるもの) | 事業者(建設業・土石採取業)→ 労働基準監督署長 | 仕事の開始の日の14日前まで |
| 石綿障害予防規則 第5条(作業の届出) | 同上 | 上記以外の業種の事業者 → 所轄労働基準監督署長 | あらかじめ |
レベル3と仕上塗材だけの工事なら、この3つの届出の対象外です。ただし、作業計画は作成します。条例で届出を求めている都道府県等もあり、マニュアル(p.179、p.205)は事前の確認を求めています。届出に添える書類の中身は、煙突の断熱材を例に、煙突のアスベスト除去工法の記事で整理しました。
事前調査と報告は、レベル3と仕上塗材も対象です
マニュアルの表4.1.2のとおり、事前調査はレベルを問わず全ての建材が対象になります。書面調査と現地での目視調査は、建築物石綿含有建材調査者などの調査者等に行わせることが、大気汚染防止法と石綿則で義務づけられています。
調査の結果は、令和4年4月1日から、都道府県等と労働基準監督署への報告が義務になりました。石綿が無かった場合も報告します。対象の工事は、次の3つ。
- 建築物の解体で、対象の床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改修で、請負代金の合計が100万円以上(材料費と消費税を含む)
- ボイラ、煙突、配管設備など17種類の特定工作物の解体・改造・補修で、請負代金の合計が100万円以上
報告には、原則として国の石綿事前調査結果報告システムを使います。大気汚染防止法と石綿則の報告を、このシステムで併せて出すことが可能です。石綿を含まないと判定した場合の扱いは、鉄骨の耐火被覆の除去で詳しく扱っています。
作業の決まり:レベル1は負圧隔離、レベル3は原形のまま取り外し
作業の決まり(作業基準)を定めるのは、大気汚染防止法施行規則の別表第七と石綿則です。区分ごとの主な違いを、表にまとめました。
| 区分 | 大気汚染防止法施行規則 別表第七 | 石綿障害予防規則 |
|---|---|---|
| レベル1 | 作業場を隔離して前室を設け、負圧に保つ。HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置を使い、除去する材料を湿潤化する。隔離を解く前に、飛散のおそれがないことを確かめる(一の項) | 隔離、前室・洗身室・更衣室の設置、負圧の保持(第6条) |
| レベル2(かき落とし・切断・破砕で除去) | レベル1と同じ(一の項) | レベル1と同じ(第6条) |
| レベル2(原形のまま取り外すなど) | 除去する部分の周辺を事前に養生し、湿潤化する(二の項) | 隔離養生(負圧不要)と湿潤化(マニュアル表4.1.2) |
| レベル3 | 切断・破砕等をせず、そのまま取り外す。技術上著しく困難なときは湿潤化する(四の項) | 切断等以外の方法で除去する。困難なときは湿潤化や、除じん性能を有する電動工具の使用など(第6条の2・第13条) |
| レベル3のうち、けい酸カルシウム板第1種 | 切断等で除去するときは、周辺の養生と湿潤化(四の項) | 隔離(負圧不要)と、常時湿潤化などの措置(第6条の2) |
| 仕上塗材 | 湿潤化する。電動工具を使うときは、周辺の養生と湿潤化(三の項) | 電動工具で除去するときは、隔離と常時湿潤化などの措置(第6条の3) |
マニュアルの表4.1.2(p.79〜82)では、石綿作業主任者の選任、特別教育、保護具の着用、取り残しの確認、記録の保存が、区分を問わず「要」になっています。取り残しの確認を目視で行うのは、建築物石綿含有建材調査者や、その工事の石綿作業主任者など、必要な知識を持つ者です。
除去の方法:区分ごとに原典に出てくるもの
原典に出てくる除去の方法は、区分ごとに違います。国の公共建築改修工事標準仕様書(以下、改修仕様書)の標準と、マニュアルの記述を並べました。
| 区分 | 原典に出てくる除去の方法 | 出典 |
|---|---|---|
| レベル1 | 粉じん飛散抑制剤等で湿潤化した後に除去する。掻き落としには手工具(ヘラ、皮スキ、ケレン棒、ワイヤブラシ等)や手持ち電動工具(電動スクレーパ等)を使い、超高圧水を使うウォータージェット工法が用いられることもある | 改修仕様書 9.1.3/マニュアル p.148 |
| レベル2 | 湿潤化した後に、原形のまま手ばらしで除去する(改修仕様書の標準)。切断・破砕する場合はレベル1と同じ手順。配管の一部は、袋状の用具(グローブバッグ)で局所的に隔離して除去する方法がある。煙突の断熱材は、機械や高圧水で掻き落とす工法が主流 | 改修仕様書 9.1.4/マニュアル p.24、p.178 |
| レベル3 | ボルトや釘等を撤去し、手作業で原形のまま取り外す。困難なときは湿潤化して手工具(バール、のこぎり等)で除去し、電動工具は原則として除じん性能を有するものを使う | 改修仕様書 9.1.5/マニュアル p.181 |
| 仕上塗材 | 15種類の処理工法(水洗い、手工具ケレン、高圧水洗、超高圧水洗、超音波ケレン、剥離剤併用、ディスクグラインダーケレンなど)。どれを使うかは特記による | 改修仕様書 9.1.6/マニュアル p.208 |
マニュアル(p.156)は、サンドブラスト機を石綿の除去作業には使用しないとしています。粉じんの発散量が多く、作業場所を加圧させるためです。
除去したものの扱いも、区分ごとに違いがあります。レベル1・レベル2の除去物と、その工事で使った隔離シートや保護衣は、特別管理産業廃棄物の「廃石綿等」に当たります。レベル3と仕上塗材は廃石綿等以外の石綿含有産業廃棄物として処理し、中間処理での破砕は禁止されています。
ウォータージェットが原典に出てくるのは、吹付け材・煙突の断熱材・仕上塗材です
超高圧の水で除去する工法は、3つの区分の除去で原典に出てきます。
- レベル1の吹付け材:マニュアルに「石綿含有吹付け材の除去には超高圧水を使用するウォータ-ジェット工法(図 4.7.59)が用いられることもある」とあります(p.148)。鉄骨の耐火被覆での段取りは鉄骨の耐火被覆の除去で扱っています
- レベル2の煙突用断熱材:機械的に掻き落とす工法と並んで、高圧水を用いて掻き落とす工法が主流になってきているとされています(p.178)。負圧の目安と取り残しの確認は煙突のアスベスト除去工法にまとめました
- 仕上塗材:15種類の処理工法のうち、超高圧水洗工法(100MPa以上)、集じん装置付き超高圧水洗工法、剥離剤併用超高圧水洗工法の3つが超高圧水を使います(p.208)。入隅部の扱いは石綿含有仕上塗材の除去とウォータージェット工法で原文を引いています
水を使う工法では、水と汚泥の処理も工程の一部です。 マニュアルの表4.1.2(p.82)は、仕上塗材の高圧水洗除去の列に、飛沫防止等の養生・床防水養生・汚染水処理の3つを「適切な石綿飛散防止対策のために実施が必要な措置」として挙げています。改修仕様書の9.1.6にも、除去した仕上塗材について「汚泥として処理が必要な場合は、特記による」とあります。
ウォータージェットは水圧で除去する工法で、工具の刃を当てないため、入隅や鉄骨の入り組んだ部分にも、ノズルの向きを変えて水を当てられます。候補に入るのは、水の集め方と処理先が着工前に決まる現場です。排水の扱いは、ウォータージェットの排水処理にまとめています。
今日、確認できること
- 事前調査の結果で、建材の名前を確かめる。 届出と作業の決まりは、レベルの番号より建材の名前で決まります
- けい酸カルシウム板なら、第1種か第2種かを見る。 第1種はレベル3、第2種はレベル2で、届出の有無が変わります
- レベル1・2があれば、作業開始日から14日さかのぼる。 その日までに、大気汚染防止法と労働安全衛生法の届出を出します
- 水を使う工法を考えるなら、特記仕様書で汚泥の扱いを読む。 汚水と汚泥の処理先が決まると、工程と費用が組めます
まとめ
アスベストのレベル1〜3は通称で、法令上の区分は建材の名前で決まります。 レベル1は吹付け材、レベル2は断熱材・保温材・耐火被覆材、レベル3は成形板等で、仕上塗材は番号の付かない4つ目の区分です。
作業実施の届出はレベル1・2が対象で、作業開始の14日前までに出します。事前調査と報告、作業基準、取り残しの確認は、4つの区分すべてに求められています。除去の方法は、レベル1が負圧隔離のうえでの掻き落とし、レベル3が原形のままの取り外しを基本とします。ウォータージェットは、吹付け材・煙突の断熱材・仕上塗材の除去で原典に出てくる工法です。
ご相談ください 事前調査の結果と特記仕様書を見せていただければ、ウォータージェットで段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 手工具や別の工法のほうが合う現場なら、そのようにお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。
本記事で参照した資料
- 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課・環境省水・大気環境局環境管理課「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」令和3年3月(令和8年2月改正)(p.17〜25、p.71、p.76〜82、p.92、p.100〜101、p.111、p.148、p.156、p.178〜181、p.205〜208)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」令和7年3月21日(最終改定 令和7年5月12日)(9章1節)
- 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第18条の17/大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号)第3条の3・第10条の2/大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省・通商産業省令第1号)別表第七
- 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)第5条・第6条・第6条の2・第6条の3・第13条
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第88条第3項/労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第90条
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています(法令は e-Gov法令検索で2026年9月26日に確認)。石綿の規制は改正が続いています。 工事の計画には、発注時点の最新の法令・マニュアルと、自治体の条例で必ずご確認ください。