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工法解説

鉄骨の耐火被覆の除去 ― 吹付けロックウールに石綿を含む場合と含まない場合で、調査・養生・確認がどう変わるか

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 吹付けの耐火被覆に石綿を含むと「レベル1」です。 国のマニュアルは、石綿含有吹付けロックウールを石綿含有吹付け材(レベル1)に、耐火被覆板を石綿含有保温材等(レベル2)に分類しています。
  2. 石綿を含む吹付け材は、負圧隔離と湿潤化のうえで除去します。 除去後は、知識を有する者が取り残しの無いことを確かめてから、粉じん飛散防止処理剤を散布し、隔離を解きます。
  3. 石綿の有無にかかわらず、事前調査は全ての材料が対象です。 石綿が無いと判定された場合も、調査結果の記録と報告は必要です。撤去後の吹き直しには、建築基準法の認定を受けた材料と工法を使います。

耐火被覆とは、火災の熱で鉄骨の強度が落ちないよう、柱や梁を覆う材料のことです。 種類は吹付けロックウールのほか、耐火板張り、耐火材巻付け、耐火塗料など多岐にわたります。昭和38(1963)年頃から平成元(1989)年頃までに吹き付けられた耐火被覆には、石綿を含むものがあります。改修で撤去するときは、石綿を含むかどうかで、養生・届出・確認の手順が大きく変わります。この記事では、厚生労働省・環境省のマニュアルと、国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書の原文から、撤去から吹き直しまでを工事の順に整理しました。仕上塗材は石綿含有仕上塗材の除去とウォータージェット工法、煙突の断熱材は煙突のアスベスト除去工法で扱っています。

分類:吹付けは「レベル1」、耐火被覆板は「レベル2」

同じ耐火被覆でも、吹き付けたものと板を張ったものでは、マニュアル上の分類が違います。

耐火被覆の形 マニュアルの分類 発じん性
吹付け石綿・石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式) 石綿含有吹付け材(レベル1) 著しく高い
石綿含有耐火被覆板・けい酸カルシウム板第2種 石綿含有保温材等(レベル2) 高い

マニュアルは、レベル1の具体的な使用箇所を次のように書いています。

建築基準法の耐火建築物(3階建以上の鉄骨構造の建築物、床面積の合計が200m2 以上の鉄骨構造の建築物等)などの鉄骨、はり、柱等に、石綿とセメントの合剤を吹付けて所定の被膜を形成させ、耐火被膜用として使われている。昭和 38(1963)年頃から昭和 50(1975)年初頭までの建築物に多い。特に柱、エレベーター周りでは、昭和 63(1988)年頃まで、石綿含有吹付け材が使用されている場合がある。

(厚生労働省・環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」表4.1.1 p.77)

使用の経緯について、マニュアルは「石綿含有率 5 重量%以下の吹付けロックウールが平成元(1989)年ごろまで使用されている」と記しています(p.7)。石綿を5重量%を超えて含む吹付けは昭和50(1975)年に原則禁止されました。それより後に吹き付けたロックウールにも、石綿を含む場合があります。

事前調査:石綿の有無にかかわらず、全ての材料が対象です

石綿障害予防規則第3条は、解体・改修の作業を行うときに、対象部分の「全ての材料」について石綿等の使用の有無を調べるよう定めています。方法は設計図書等の書面の確認と、目視による確認です。マニュアル(p.51)は、石綿等を「石綿若しくは石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物」と定義しています。

書面と目視で判断できないときは、分析調査を行うか、石綿を含むものとみなして措置を講じます。公共建築改修工事標準仕様書(1.5.1)は、分析調査を行う場合、厚生労働省の通達「建材中の石綿含有率の分析方法について」に基づき、定性分析又は定量分析を行うとしています。

石綿則第3条第3項第三号により、新築工事の着工日が平成18年9月1日以降の建築物は、着工日を設計図書等で確かめる方法で調査できます。判断の根拠を書面・目視・分析のどれで得たかは、記録に残す事項です。

事前調査の結果は、建築物の改修では請負金額100万円以上の工事で、都道府県等と労働基準監督署へ報告します。マニュアルの図4.2.1(p.83)には、「石綿無し、石綿有りとみなし、新築工事の着工日が平成 18(2006)年 9 月 1 日以降であっても報告必要」と注記されています。

石綿を含む場合:負圧隔離と湿潤化のうえで除去します

石綿含有吹付け材の除去は、大気汚染防止法と安衛法・石綿則の届出の対象です。届出の先と期日は、煙突のアスベスト除去工法に表で整理しています。

公共建築改修工事標準仕様書(9.1.3)とマニュアル(図4.2.1)に沿うと、現場の手順は次の順になります。

  1. 負圧隔離養生:壁面は厚さ0.08mm以上のシートを1重、床面は0.15mm以上を2重に張り、前室・洗身室・更衣室のセキュリティゾーンを設ける
  2. 集じん・排気装置の点検と負圧の確認:HEPAフィルタ付きの装置を使い、作業開始前と中断時に負圧を確かめる
  3. 湿潤化:粉じん飛散抑制剤などで吹付け材を湿らせる
  4. 除去:除去した吹付け材は厚さ0.15mm以上の袋に入れて二重に梱包し、「廃石綿等」と表示する
  5. 取り残しの確認:石綿等に関する知識を有する者が確認する
  6. 粉じん飛散防止処理剤の散布:確認の後、除去面に散布する
  7. 隔離の撤去:原則として空気中の総繊維数濃度を測り、石綿等の粉じんが処理されたことを確かめてから撤去する

湿潤化について、マニュアルは次のように書いています。

使用する粉じん飛散抑制剤の含浸時間を取扱説明書等で確認し、試験吹きを行って含浸状態や内部へ十分浸透する時間を確認の上、浸透を待って作業を開始する。

(同マニュアル p.155)

マニュアル(p.157)によると、除去した吹付け材は特別管理産業廃棄物となり、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任が必要です。仕様書(9.1.2)は、石綿含有吹付け材の除去を直接行う専門工事業者に、工事に相応した技術を有することを証明する資料の提出を求めています。

耐火被覆板のようなレベル2の建材を切断や破砕をせずに外す場合、仕様書(9.1.4)の標準は、湿潤化した後に原形のまま手ばらしで除去し、隔離養生(負圧不要)を行う方法です。

除去の道具:手工具、電動工具、ウォータージェット

マニュアルは、除去用工具について次のように書いています。

石綿含有吹付け材や石綿含有保温材を掻き落しにより除去する場合、主に以下に示す手工具(図 4.7.58)や手持ち電動工具が用いられる。石綿含有吹付け材の除去には超高圧水を使用するウォータ-ジェット工法(図 4.7.59)が用いられることもある。

(同マニュアル p.148)

手工具はヘラ・皮スキ・ケレン棒・ワイヤブラシなどです。サンドブラスト機については、粉じんの発散量が多く作業場所を加圧させることから、石綿の除去作業には使わないとマニュアル(p.156)に書かれています。

道具 マニュアルでの扱い 段取りで決めること
手工具(ヘラ・ケレン棒など) 主に用いられる 残った材をワイヤブラシ等で擦り落とす工程と、そのときの発じん対策
手持ち電動工具 主に用いられる。耐火被覆材の切断等では発じん量が非常に多い 局所集じん装置付きの工具を使うか、集じんを担う人を付けるか
ウォータージェット 吹付け材の除去に用いられることもある 使った水と汚泥の回収・処理、隔離空間の負圧の確保
サンドブラスト機 石綿の除去作業には使用しない ―

ウォータージェットは、超高圧の水を噴射して除去する非接触の工法です。ノズルの向きを変えられるので、刃の形に縛られずに鉄骨の入り組んだ部分へ水を当てられます。鋼材は内部に隙間が無く、水が入り込めません。吹付け材を除去したあとも、鉄骨はそのまま残ります。

マニュアル(p.157)には「汚水や汚泥が発生した場合は、環境汚染を生ずることのないよう適正に処理する」とあり、水を使う工法では、この処理が工程の一部です。煙突の例では、水を使うと隔離空間の圧力が高くなり、通常の台数の集じん・排気装置では負圧を確保できないおそれがあると、付録Ⅲに書かれています。水の回収の段取りと、集じん・排気装置の能力は、工法と同時に決めます。(関連:ウォータージェットの排水処理)

除去後の確認:取り残しの例は、梁のボルト部・梁下・デッキプレート

取り残しがないことの確認は、建築物石綿含有建材調査者や、その施工に関わった石綿作業主任者など、必要な知識を有する者が行います。マニュアル(p.241)は、確認の時期を負圧隔離養生の解除前と定めています。

除去作業では、取り付け部分の母材や下地に石綿含有建材が残留せずに全て除去されていることを確認する。特に、入隅部や作業者の手が届きにくい箇所については、入念に確認すること。

(同マニュアル p.241)

マニュアルの付録Ⅱは、石綿含有吹付け材の取り残しを写真で示した資料です。鉄骨に関わる例を挙げます。

確認の順番にも決まりがあります。粉じん飛散防止処理剤の散布は、取り残しの確認の後です。 先に散布すると取り残しの除去が難しくなり、不透明な処理剤は確認の妨げになります。マニュアル(p.241)は、確認より前に散布する場合に無色透明の処理剤を使うよう求めています。確認の結果は写真や書面に残し、元請業者は発注者へ書面で報告して(p.232)、3年間保存します。

石綿を含まない場合:石綿則と大気汚染防止法の除去の措置は対象外になります

公共建築改修工事標準仕様書の9章1節は、石綿含有建材の除去工事に適用する節です。事前調査で石綿を含まない(0.1パーセント以下)と判定された耐火被覆は、この節の対象になりません。石綿を含む場合と比べて変わる項目を、表にまとめました。

項目 石綿を含む吹付け材 石綿を含まないと判定
事前調査の記録・報告 必要 必要
作業実施の届出 必要(着工14日前まで) 対象外
負圧隔離養生・湿潤化 必要 石綿則・大気汚染防止法の措置としては対象外
取り残しの確認 知識を有する者が隔離の解除前に確認 対象外
除去した材の扱い 廃石綿等(特別管理産業廃棄物) 廃石綿等には当たらない

分析をせずに「石綿を含むものとみなす」と決めた場合は、左の列の措置を講じることになります。分析を省いてみなしを選ぶと、養生と処分の手順は石綿を含む場合と同じです。 どちらを選ぶかは、改修の範囲と工程に照らして決めます。

再施工:認定を受けた材料と工法で吹き直します

撤去後の耐火被覆の復旧は、吹き直しか、別の種類での被覆し直しです。公共建築改修工事標準仕様書では、8章18節が鉄骨の耐火被覆を定めています。

建物を使いながら撤去と吹き直しを行う工事もあります。マニュアル(p.127)は、立体駐車場を使用しながら耐火被覆として用いた石綿含有吹付け材を除去し、その後に吹付けロックウール耐火被覆を吹き付ける工事を、事例として挙げています。除去の前に決めておきたいのは、吹き直しまでの期間の区切り方です。

今日、確認できること

  1. 建物の新築工事の着工日を確かめる。 平成18年9月1日以降なら、書面での確認で事前調査を済ませられる場合があります
  2. 耐火被覆が吹付けか、板張りかを見る。 吹付けならレベル1、耐火被覆板ならレベル2で、養生と工法が変わります
  3. 既存の調査報告書と分析結果の有無を確認する。 無ければ、分析するか、含有とみなすかを決めます
  4. 特記仕様書で、除去工法と吹き直しの耐火被覆の種類を読む。 どちらも「特記による」とされている項目です

まとめ

鉄骨の耐火被覆の撤去は、石綿を含むかどうかで手順が大きく変わります。 石綿を含む吹付けロックウールはレベル1で、届出、負圧隔離、湿潤化、知識を有する者による取り残しの確認、特別管理産業廃棄物としての処分までが必要です。石綿を含まないと判定された場合も、事前調査の記録と報告は残ります。

除去の道具は手工具と電動工具が主で、ウォータージェットが用いられることもあります。水を使う場合は、汚水・汚泥の処理と負圧の確保を、工法と同時に決めます。吹き直しは、建築基準法の認定を受けた材料と工法で行います。

ご相談ください 事前調査の結果と特記仕様書、鉄骨の図面を見せていただければ、ウォータージェットで段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 手工具や別の工法のほうが合う現場なら、そのようにお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。石綿の規制は改正が続いています。 工事の計画には、発注時点の最新の法令・マニュアルと、自治体の条例で必ずご確認ください。

よくある質問

耐火被覆の吹付けロックウールにアスベストは含まれていますか?
含まれている場合があります。国のマニュアルによると、石綿含有率5重量%以下の吹付けロックウールが平成元(1989)年ごろまで使用されています。有無は、書面と目視の事前調査と、必要に応じた分析で判断します。
吹付けアスベストの耐火被覆はレベルいくつですか?
レベル1です。吹付け石綿や石綿含有吹付けロックウールは、国のマニュアルで石綿含有吹付け材(レベル1)に分類されています。石綿含有耐火被覆板やけい酸カルシウム板第2種は、レベル2に当たります。
吹付けアスベストの除去工法にはどんな種類がありますか?
湿潤化したうえで、手工具や手持ち電動工具で掻き落とす方法が主です。国のマニュアルは、超高圧水を使うウォータージェット工法が用いられることもあると書いています。サンドブラスト機は石綿の除去作業には使いません。
石綿を含まない耐火被覆を撤去するときも、事前調査は必要ですか?
必要です。石綿則第3条は、解体・改修の対象部分の全ての材料について調査を求めています。建築物の改修で請負金額100万円以上の工事なら、石綿が無いと判定された場合も調査結果の報告が必要です。
耐火被覆を撤去したあと、吹き直しはどう行いますか?
建築基準法に基づき認定を受けた材料と工法で吹き直します。公共建築改修工事標準仕様書は、貫通孔部やデッキプレートと梁の隙間なども適切に被覆し、耐火被覆の種類に応じた所定の試験を行うとしています。

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