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沖縄のコンクリート補修とウォータージェット ― 県全域が塩害の影響地域。飛来塩分と海砂の塩分をどう調べ、補修方法をどう分けるか

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 沖縄県は、県全域が道路橋の「塩害の影響地域」です。 海岸線から300mを超える範囲にも対策区分が設けられ、海から離れた構造物も塩害を前提に考えます。
  2. 沖縄の塩分の入り口は、飛来塩分と海砂の2つです。 1986年以前に建設された構造物は、コンクリートに初めから塩分が含まれている可能性があり、深さごとの塩化物イオン量で見分けます。
  3. 補修方法は、鋼材周辺の塩化物イオン量で分かれます。 国の点検要領の目安では、1.2kg/m³以上なら電気防食・脱塩が候補になり、プレテンション式PC桁をはつるときはプレストレスへの影響を事前に検討します。

沖縄のコンクリート構造物の塩害とは、海から運ばれる飛来塩分と、除塩が不十分な海砂に含まれていた塩分によって、内部の鉄筋が腐食する劣化のことです。 沖縄県は四方を海に囲まれ、細骨材の多くを海砂に頼ってきた地域でもあります。この記事では、国と沖縄県の資料、学会誌の報告で確かめた内容から、沖縄でコンクリートの補修やウォータージェット工事を発注する前に知っておきたい条件を整理しました。塩害の補修工法の全体像はコンクリートの塩害の補修工法にまとめてあり、ここでは沖縄に固有の条件に絞ります。

沖縄県は、県全域が「塩害の影響地域」です

道路橋示方書は、塩害の影響を受ける地域を3つに分け、海岸線からの距離で対策区分を定めています。国土技術政策総合研究所の資料に載っている区分を、要点だけ抜き出すと次のとおりです。

地域区分 地域 対策区分が設けられている範囲
A 沖縄県 海上部から海岸線100mまで(S)、300mまで(Ⅰ)、上記以外の範囲(Ⅱ)
B 北海道・青森県の一部と、秋田県から福井県までの日本海側の6県 海上部から海岸線700mまで
C 上記以外の地域 海上部から海岸線200mまで

地域区分BとCは、海岸線からの距離に上限があります。沖縄県だけは「上記以外の範囲」にも対策区分Ⅱが付き、海岸線からの距離にかかわらず、県内のどこでも塩害の影響地域に入ります。 国土交通省と沖縄総合事務局が管理するコンクリート橋の塩害点検も、対象はこの影響地域にある橋です。

県の気候は、沖縄県の橋梁長寿命化修繕計画に次のように記されています。

黒潮、季節風、台風の影響を受け、温暖多雨の気候から、他県と比べても橋梁が錆びやすい厳しい自然環境にあります。

(沖縄県土木建築部 道路管理課「沖縄県 長寿命化修繕計画(橋梁)」令和7年12月)

沖縄県が管理する691橋:建設後50年以上は12%程度、20年後に半数超

沖縄県が管理する道路橋は、令和4年時点で691橋あります。1972年の本土復帰以降に多く建設され、建設の時期は1970年代から2010年代に集中しました。同じ計画によれば、建設後50年以上の橋は現時点で12%程度ですが、20年後には半数を超え、40年後には90%以上になる見込みです。

点検の結果(2022年現在)は、健全(Ⅰ)が約41%、予防保全段階(Ⅱ)が約48%、早期措置段階(Ⅲ)が約11%でした。緊急措置段階(Ⅳ)の橋はありません。計画は現状分析の最初に「沖縄県は、塩害などの影響により、国内の他の地域と比べて橋梁が傷みやすい環境である」と記しました。

橋ごとの一覧には、塩害の区分と対策内容の欄が設けられています。たとえば本部町の瀬底大橋(1985年架設・橋長762.0m)は、塩害の欄が「塩害」、点検結果の判定がⅢで、対策内容は「断面修復他」です。

国が管理する422橋:PC橋が42%、損傷の多くは塩害環境によるもの

沖縄総合事務局が管理する道路橋(橋長2m以上)は422橋。422橋のうちPC橋が180橋(42%)、RC橋が109橋(26%)を占めます。1972年の日本復帰から1975年の沖縄海洋博覧会にかけて建設が急ピッチで進み、1980年代には中南部の国道329号・330号・331号の整備で橋の数が急に増えました。

建設後50年以上の橋の割合は、令和4年4月時点で5%。30年後には71%まで増える見込みです。損傷の傾向について、同じ計画には次の記載があります。

沖縄では、塩害環境による橋梁の損傷が多く、コンクリート橋においては鉄筋腐食によるコンクリートのひびわれや鉄筋露出など、鋼橋においては鋼材に腐食などが見られます。

(内閣府沖縄総合事務局「橋梁の長寿命化修繕計画」令和5年3月)

塩分の入り口は2つ:海からの飛来塩分と、海砂に含まれていた塩分

国の点検要領は、塩害を塩化物イオンの由来で2つに分けています。構造物の外から入る「外的塩害」と、フレッシュコンクリートに初めから含まれていた塩分による「内的塩害」です。沖縄県について、琉球大学の山田義智教授の報告は次のように述べます。

沖縄県は,細骨材資源の多くを海砂に頼らざるを得ない地理的な制約に加え,四方を海で囲まれ,海から吹き付ける風も強い自然環境下にある。

(山田義智「沖縄県における塩害対策」コンクリート工学 Vol.48, No.1, 2010年1月)

外から入る塩分の例として、同じ報告は伊平屋島と野甫島を結んでいた野甫大橋を挙げました。水セメント比38%・かぶり35mmのPC橋で、内在塩化物イオンの影響がほとんど無い条件でした。内在塩分が少なくても、海からの塩分は多量に浸透し、供用開始から21年後の平成11年に架け替えられました。

海砂の塩分については、沖縄県で塩化物総量規制の通達(昭和61年)が出され、現在は海砂の除塩が徹底されていると報告されています。最近10年間の県内の生コン工場の調査では、コンクリート中の塩化物量は最大でも0.13kg/m³で、規制値の0.3kg/m³を大きく下回りました。新しく建設される構造物では、沖縄の塩害対策の中心は飛来塩分です。

1986年以前の構造物は、海砂の塩分を含めて調べます

年代による違いについて、国の点検要領には次の記載があります。

1986 年の JIS の改訂により、レディーミクストコンクリートの受入れ時に塩化物含有量の検査が行われるようになったので、1987 年以降に建設された構造物では、内的塩害による劣化の可能性は小さい。一方、1986 年以前に建造された構造物は、コンクリート中に多量の塩分を含んでいるおそれもある。

(国土交通省 道路局 国道・防災課「コンクリート橋の塩害に関する特定点検要領(案)」平成27年3月)

沖縄県と沖縄総合事務局の計画では、どちらも本土復帰の1972年以降に多くの橋が建設されました。1972年から1986年までの間に建設された構造物は、飛来塩分と海砂の塩分の両方を受けている可能性があります。

両方を受けた例も、山田教授の報告に載っています。国道58号の新数久田橋(昭和50年架設)は、昭和59年に被覆工法で補修されたPC桁の橋です。内部に多量の塩分を含んでいたため、橋軸方向に連続するひび割れが発生しました。平成3年度からは、電気防食工法を加えた補修が行われています。建物では、昭和50年の海洋博と同じ時期に建設されたマンションの外廊下が平成21年に崩落し、海砂に由来する内在塩害が一因になった可能性を同じ報告が指摘しました。

同じ点検要領は、将来の塩化物イオン量を推定するために、表面の塩化物イオン量と初期塩化物イオン量を分けて算定するよう求めています。深さごとの塩化物イオン量を測れば、表面から入った塩分か、初めから含まれていた塩分かを見分ける手がかりになります。試料の採り方はコンクリートの塩害の補修工法に書きました。

補修方法の目安:鋼材周辺の塩化物イオン量で分かれます

表面に最も近い鉄筋(スターラップなど)の近くの全塩化物イオン量から、適用できる補修方法の例を示したのが次の表です(国の点検要領)。

橋梁上部構造の種類 表面塗装 断面修復 電気防食/脱塩
プレテンション式PC 0.6kg/m³以下 1.2kg/m³以下 1.2kg/m³以上
ポストテンション式PC 0.9kg/m³以下 1.2kg/m³以下 1.2kg/m³以上
鉄筋コンクリート 0.9kg/m³以下 1.2kg/m³以下 1.2kg/m³以上

数値は塩化物イオン量の情報だけから判断する場合の目安で、実際の適用性にはほかの要因も考慮する必要があります。現場の条件によっては、断面修復と表面塗装の併用も可能です。鉄筋の位置まで多くの塩分が届いている場合は、電気防食や脱塩が候補に入ります。 電気化学的脱塩の仕組みと、断面修復で限界値を超えた範囲を取り切る考え方は、塩害の補修工法と断面修復のはつり深さで整理しました。

プレテンション式PC桁は、はつる前にプレストレスへの影響を検討します

プレテンション式PC部材には、同じ表の注記で次の条件が付いています。

プレテンション式プレストレストコンクリート部材の補修に断面修復工法を適用する場合には、はつりによるプレストレス力への影響について事前に特に入念な検討を行わなければならない。

プレテンション式の部材は一般に断面積が小さく、はつりのときにPC鋼材に導入されたプレストレス力が受ける影響が大きいと予想されるためです。沖縄総合事務局の管内では橋の42%がPC橋で、計画の写真には「プレテン床版の鉄筋露出状況」も載っています。PC桁の断面修復では、はつる範囲と深さを、構造の検討と合わせて決めます。

ウォータージェットは、打撃を与えずに水圧で劣化部から先に除去する工法です。鉄筋を残したまま、周りのコンクリートを取り除けます。どこまで取るかを決めるのは、構造の検討です。工法の性質はウォータージェットの仕組みに、打撃式のはつり(ピックはつり)との違いはウォータージェットはつりとはにまとめました。

新しい橋では、塩分を入れない設計が進んでいます

新しい橋の設計にも、沖縄の条件は反映されています。山田教授の報告によると、平成17年に供用を始めた古宇利大橋は目標耐久年数を100年とし、かぶりを下部工90mm・上部工70mmに増やしたほか、エポキシ樹脂塗装鉄筋などを採用しました。

土木研究所の構造物メンテナンス研究センターは、沖縄県と連携して「沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクト」を2009年に立ち上げ、県が管理する離島架橋の健全度調査を続けています。かぶりの確保・エポキシ樹脂塗装鉄筋・フライアッシュの使用などの対策を取った伊良部大橋では、2010年の新設時から定期的にコアを採取し、対策の効果を検証してきました。

補修の時期を迎えているのは、これらの対策より前に建設された構造物です。

サンテックの沖縄事業所と、発注前に確かめること

株式会社サンテックは、北九州市の本社・事業センターのほかに、沖縄県沖縄市に沖縄事業所を置いています。対応範囲は九州・沖縄全域と全国。

ウォータージェットは水を使う工法なので、給水と排水の条件が段取りを大きく左右します。現場で水が取れるか、使った水をどこへ流すか、回収して運び出すかは、発注前に確かめておきたい項目です。必要な水を確保しづらい現場や、排水を出すのが難しい現場には、別の工法が向いています。塩害の補修では、これに加えて、塩化物イオン量の調査結果があるかどうかで、はつる範囲の決め方が変わります。項目ごとの中身は相談前に確認しておきたい現場条件に、排水の扱いはウォータージェットの排水処理に書きました。

まとめ

沖縄県は県全域が道路橋の塩害の影響地域で、海から離れた構造物も塩害を前提に考えます。 塩分の入り口は飛来塩分と海砂の2つで、1986年以前に建設された構造物では、初めから含まれていた塩分も調べる必要があります。

補修方法は鋼材周辺の塩化物イオン量で分かれ、国の点検要領の目安では1.2kg/m³以上で電気防食・脱塩が候補に入ります。沖縄に多いPC橋、とくにプレテンション式の部材をはつるときは、プレストレスへの影響の事前検討が欠かせません。ウォータージェットが入るのは、断面修復などの前工程で、塩分を含んだ劣化部を取り除く段階です。

ご相談ください 塩化物イオン量の調査結果と図面、対象物の写真を見せていただければ、ウォータージェットではつる段取りが合うかどうかを率直にお答えします。 電気防食や打撃系のはつりのほうが合う現場なら、そうお伝えします。株式会社サンテックは平成5年の設立から、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。沖縄事業所は沖縄県沖縄市にあります。お電話は北九州市の事業センター(093-475-7263)で承ります。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。数字は各資料の作成時点のものです。判定の値や工法の選び方は、発注機関の基準で異なる場合があります。 工事の計画には、発注時点の仕様書と基準で必ずご確認ください。

よくある質問

沖縄でウォータージェット工事を頼める会社はありますか?
あります。株式会社サンテックは沖縄県沖縄市に沖縄事業所を置き、九州・沖縄全域と全国の現場に対応しています。平成5年に設立した、超高圧ウォータージェット工法の専業会社です。
沖縄では、海から離れた場所でも塩害を考える必要がありますか?
あります。道路橋示方書では沖縄県全域が塩害の影響地域(地域区分A)で、海岸線から300mを超える範囲にも対策区分Ⅱが設けられています。ほかの地域には、海岸線からの距離に上限があります。
古い建物や橋で、海砂の塩分が心配です。何を調べればよいですか?
深さごとの塩化物イオン量です。国の点検要領は、1986年以前に建設された構造物は多量の塩分を含んでいるおそれがあるとしています。表面の値と初期の値を分けて見ると、塩分の由来を見分ける手がかりになります。
塩化物イオン量が多いコンクリートは、断面修復で直せますか?
量によります。国の点検要領の目安では、鋼材周辺の全塩化物イオン量が1.2kg/m³以下なら断面修復、1.2kg/m³以上なら電気防食や脱塩が候補です。数値は目安で、現場の条件によって表面塗装との併用もあります。
プレテンション式のPC桁も、はつって補修できますか?
はつる前に、プレストレス力への影響を入念に検討する必要があります。国の点検要領は、プレテンション式の部材は断面積が小さく、はつりの影響を受けやすいとしています。はつる範囲と深さは、構造の検討と合わせて決めます。

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