この記事の要点
- 「RB種」は建築の基準です。 国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)第7章にある、塗装改修工事の下地調整の種別(RA種・RB種・RC種)です。鋼道路橋の素地調整程度とは別の体系です。
- 鋼橋側は1種〜4種。 さらに塗装系の記号(Rc-Ⅰ、Ra-Ⅲなど)や、首都高速道路のB1種相当〜B4種のように、発注者ごとに記号体系が違います。
- どの体系も「全面除去/活膜を残す/清掃のみ」の3段構造で、ここが工法・費用・工期の分かれ目になっています。
「塗膜除去 RB種」で調べても、鋼橋の資料からはなかなか出てきません。理由ははっきりしています。RB種は、鋼橋の基準ではないからです。 この記事では、原典を実際に開いて確認できた内容だけをお伝えします。
RB種は、建築の「下地調整」の種別です
出典は、国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」第7章 塗装改修工事の2節 下地調整です。令和7年版の条文を確認しました。
7.2.3 鉄鋼面の下地調整 鉄鋼面の下地調整は表 7.2.2 により、種別は特記による。特記がなければ、RB種とする。
種別は3つです。表7.2.2「鉄鋼面の下地調整」の既存塗膜の除去の工程を、原文のまま並べます。
| 種別 | 既存塗膜の除去(面の処理) |
|---|---|
| RA種 | ディスクサンダー、スクレーパー等により、塗膜、錆等を全面除去する。 |
| RB種 | ディスクサンダー、スクレーパー等により、劣化しぜい弱な部分、錆等を除去し、活膜は残す。 |
| RC種 | (この工程そのものがありません) |
RC種には、既存塗膜の除去という工程そのものがありません。汚れ・付着物の除去と研磨紙ずり(P240〜320)だけが残ります。
もう一点、実務で効くのが7.2.1です。
7.2.1 施工一般 塗替えで、表 7.2.1 から表 7.2.7 までのRB種の場合の既存塗膜の除去範囲は、特記による。特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す。
RB種は「特記がなければ」の既定値です。 図面に何も書かれていなければ、鉄鋼面はRB種として扱われます。ここを読み落として全面除去の段取りを組むと、数量が合いません。
なお同じ第7章の3節は「素地ごしらえ」で、こちらは「新規に塗装を行う場合」に適用され、種別はA種・B種です。Rが付くのが塗替え側です。
鋼橋の側は、まったく別の体系です
一方、鋼道路橋の塗替えで使われるのは素地調整程度1種〜4種です。大阪市の土木工事共通仕様書(Ⅲ編 第4章 鋼橋上部)から、原文で引きます。
| 素地調整程度 | 作業内容 | 作業方法 |
|---|---|---|
| 1種 | さび、旧塗膜を完全に除去し、鋼材面を露出させる。 | ブラスト法 |
| 2種 | 旧塗膜、さびを除去し鋼材面を露出させる。 | ディスクサンダー、ワイヤホイルなどの電動工具と手工具の併用、ブラスト法 |
| 3種A/B/C | 活膜は残すが、それ以外の不良部(さび、割れ、ふくれ)は除去する。 | 同上 |
| 4種 | 粉化物、汚れなどを除去する。 | 同上 |
3種のA・B・Cは、さび面積と塗膜異常面積の大小で分かれます。仕上がりの程度はISO 8501の標準見本で示すのが一般的で、沖縄地区鋼橋塗装マニュアルも「鋼道路橋塗装・防食便覧でも同規格による素地調整を規定している」と記しています。ここに「RB種」は出てきません。
「Rc-Ⅰ」「Ra-Ⅲ」は素地調整のグレードではありません
紛らわしいのがここです。同じ大阪市の仕様書には、塗替え塗装系の記号が別表で出てきます。
| 塗替え塗装系 | 素地調整 |
|---|---|
| Rc-Ⅰ | 1種 |
| Rc-Ⅱ | 2種 |
| Rc-Ⅲ | 3種 |
| Rc-Ⅳ | 4種 |
| Ra-Ⅲ | 3種 |
| Rd-Ⅲ | 3種 |
「R+英小文字」は塗料の系統を、ローマ数字が素地調整程度を表しています。 グレードを担っているのはローマ数字のほうです。「Ra」「Rb」といった綴りを素地調整のグレードだと読むと、意味がずれます。なお、この表に「Rb」の行はありません。
記号体系は発注者ごとにも違います。首都高速道路の鋼橋塗装設計施工要領では、平滑部が1種相当〜4種、狭隘部・高力ボルト継手部はB1種相当〜B4種という別立てになっていました。「何種か」だけでは足りず、「どの基準の何種か」まで揃って、はじめて工法が決まります。
どの体系にも共通する「3段」
体系は違っても、構造は驚くほど似ています。
| 段 | 建築(下地調整) | 鋼橋(素地調整程度) |
|---|---|---|
| 全面除去 | RA種 | 1種・2種 |
| 活膜を残す | RB種 | 3種 |
| 清掃・研磨のみ | RC種 | 4種 |
対応表として使えるという意味ではありません(所管も検査の考え方も別です)。ただ、設計・積算の側が本当に決めているのは記号ではなくこの3段で、どこを指定するかで工法・日数・廃棄物量・費用が一斉に変わります。
ウォータージェットはどのグレードに対応しうるのか
ここは正直にお伝えします。
今回確認した公的資料のなかに、ウォータージェットを工法名で指定した記述は見つかりませんでした。 建築のRA・RB種は「ディスクサンダー、スクレーパー等」、鋼橋の1種は「ブラスト法」と書かれています。国土技術政策総合研究所の部分塗替え塗装要領(案)にある素地調整工法別の性能比較表も、オープンブラスト・バキュームブラスト・機械工具の3つで構成されていました。
仕様書が定めているのは到達すべき状態であって、工法ではありません。「何種に対応できますか」に一律でお答えできないのは、そのためです。
そのうえで、押さえておくべき記述が高速道路会社の要領にあります。
※ 人体に影響を与える有害物質が含有している旧塗膜を除去する場合は、湿潤化による塗膜除去を実施し、塗膜除去後の素地調整程度は1種とする。
また、素地調整程度を3種とした場合、湿潤化による塗膜除去後の活膜の耐久性に対する影響が明確でないため、素地調整程度を1種としており、ブラストを使用した粉じんの発生する作業をせざるを得ない状況にある。
★ここが重要です。 湿式で除去したうえで活膜を残す3種、という組み合わせは、少なくともこの要領の枠組みでは想定されていません。「湿式だから活膜を残すグレードに使える」という話には、まっすぐつながらないということです。
工法を個別に評価した先例もあります。沖縄地区鋼橋塗装マニュアルは、ある塗膜除去工法について「素地調整程度2種相当であるが、さびは除去できない」と書いています。工法は「○種相当」と評価され、到達しない部分が但し書きで残る、という扱われ方です。
なお、有害物質を含む塗膜そのものの扱い(鉛と湿式の関係、剥離剤・ブラストとの使い分け)は論点が独立しているため、条文の原文を引いて別記事にまとめています。(関連:鋼構造物の塗膜除去|鉛を含む塗膜で湿式が求められる場面/サンドブラストとアクアブラストの違い/積算はどの項目名で探すか)
素地調整は、塗替えの耐久性の半分近くを決めています
グレード指定がなぜここまで重く扱われるのか。沖縄地区鋼橋塗装マニュアルに、根拠になる数字が載っています。
| 要因 | 塗膜耐久への寄与率 |
|---|---|
| ケレン程度の差 | 49.5% |
| 塗り回数の差 | 19.1% |
| 塗料種類の差 | 4.9% |
| その他 | 26.5% |
塗料を良いものにするより、素地調整をどう指定するかのほうが10倍効いているという数字です。仕様書のグレード指定は、書式上の一行ではなく耐久性そのものの指定だということになります。
今日、確認できること
- その仕様書がどちらの体系かを見る。 「下地調整・RB種」なら建築、「素地調整程度・3種」なら鋼橋です。表題と条文番号で分かります
- 3段のどこを指定されているかを読む。 全面除去か、活膜を残すか、清掃のみか。工法の選択肢はここでほぼ絞られます
- 特記の有無を確認する。 建築側は、特記がなければRB種・除去範囲は「劣化部分のみ」が既定です
3点とも、特記仕様書を1枚見れば判断が可能です。この1枚があるかないかで、話の進み方がまったく変わります。
まとめ
RB種は、建築の塗装改修工事における下地調整の種別です。 鋼道路橋の素地調整程度1種〜4種とは別の体系で、対応表もありません。「Rc-Ⅰ」「Ra-Ⅲ」のような記号は塗替え塗装系を表すもので、グレードを担っているのはローマ数字のほうです。
体系は違っても、全面除去/活膜を残す/清掃のみという3段構造は共通しており、ここが工法と費用と工期の分かれ目です。ウォータージェットについては、工法名で指定された公的記述は確認できませんでした。対応できるグレードを一律に申し上げることはできません。
ご相談ください 特記仕様書に書かれたグレードを見せていただければ、当社の工法で到達できるのか、できないのかを率直にお答えします。 到達しない部分があれば、その部分こそ先にお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法の専業として12分野・年平均92物件・延べ施工面積46万㎡の現場を重ね、元請け様からの安全表彰もいただいてきました。
本記事で参照した資料
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章 2節 下地調整(7.2.1/7.2.3/表7.2.2)、3節 素地ごしらえ(7.3.1)
- 大阪市「土木工事共通仕様書」Ⅲ編 第4章 鋼橋上部(表Ⅲ-4-11/表Ⅲ-4-13)
- 沖縄総合事務局開発建設部・沖縄県土木建築部 監修「沖縄地区鋼橋塗装マニュアル」平成20年8月(表-2.1/表-8.5/剥離剤工法の2種相当の記述)
- 首都高速道路株式会社「鋼橋塗装設計施工要領」平成29年8月(表-1.1.1 素地調整)
- 東・中・西日本高速道路株式会社「構造物施工管理要領/設計要領 第2集 建設編・保全編」平成29年7月版 橋梁塗装(表-18 の注記と解説)
- 国土技術政策総合研究所「鋼道路橋の部分塗替え塗装要領(案)」(3.1.2/表-解3.2)
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。基準類は改定され、記号体系は発注者ごとに異なります。 ご使用の仕様書・便覧の最新版で必ずご確認ください。