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工法解説

ケレン(素地調整)の種類 ― 1種〜4種の違い、ISO(Sa・St)との関係、ウォータージェットで除去した鋼面の扱い

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. ケレン(素地調整)の種類は、道路橋の塗替えでは1種〜4種です。 1種はブラスト法、2種〜4種は電動工具と手工具で処理し、3種はさびと塗膜異常の面積でA・B・Cに分かれます。
  2. ISOの等級が国の仕様書に書かれているのは1種で、Sa 2 1/2 です。 工具で処理した面の等級はStで、国土技術政策総合研究所の資料は、機械工具で処理した部分を ISO St3 程度としています。
  3. ウォータージェットで塗膜を除去した鋼面を何種として扱うかは、国の仕様書の表では定められていません。 水で処理した鋼面の等級は ISO 8501-4 が別に定めています。求める種・等級・粗さを特記仕様書で確かめてから、工法を組み立てます。

ケレン(素地調整)とは、塗装の前に鋼材の表面からさび・劣化した旧塗膜・汚れなどを取り除き、塗料が付着できる面に整える作業です。 「ケレン」は現場の呼び名で、国の仕様書では「素地調整」と書かれています。道路橋の塗替えでは、どこまで除去するかを「素地調整程度」の1種〜4種で指定します。この記事では、国・学会・自治体の資料を開いて確かめた内容で、4つの種類とISO規格の等級の関係を表にし、ウォータージェットで塗膜を除去した鋼面の扱いも原典の書き方のまま整理しました。

1種〜4種の違い:旧塗膜をどこまで除去するか

国土交通省の「土木工事共通仕様書(案)」(令和7年3月)は、橋梁塗装工の素地調整を次の表で定めています。表の文言は原文のままです。

素地調整程度 さび面積 塗膜異常面積 作業内容 作業方法
1種 - - さび、旧塗膜を完全に除去し鋼材面を露出させる。 ブラスト法
2種 30%以上 - 旧塗膜、さびを除去し鋼材面を露出させる。ただし、さび面積30%以下で旧塗膜がB、b塗装系の場合はジンクプライマーやジンクリッチペイントを残し、他の旧塗膜を全面除去する。 ディスクサンダー、ワイヤホイルなどの電動工具と手工具との併用
3種A 15~30% 30%以上 活膜は残すが、それ以外の不良部(さび、割れ、ふくれ)は除去する。 同上
3種B 5~15% 15~30% 同上 同上
3種C 5%以下 5~15% 同上 同上
4種 - 5%以下 粉化物、汚れなどを除去する。 同上

さび面積は、さびが発生している場合の面積を指します。塗膜異常面積は、さびがなく、割れ・はがれ・膨れなどの塗膜異常がある場合の面積です(土木学会の報告書の注記による)。

分かれ目は、旧塗膜をどこまで除去するかです。1種と2種は旧塗膜とさびを除去して鋼材面を露出させ、3種は活膜を残して不良部だけを除去します。4種で除去するのは、粉化物と汚れです。

ケレンという呼び名は、公的な資料にも出てきます。沖縄総合事務局と沖縄県が監修した「沖縄地区鋼橋塗装マニュアル」は「塗替え時の素地調整(ケレン)」と書き、「3種、4種ケレン」という言い方も使っています。東日本高速道路の土木工事共通仕様書にも「1種素地調整におけるケレンかす」という表現があります。仕様書の「素地調整程度3種」と、現場の「3種ケレン」は、同じ区分を指しています。

1種の仕上がり:ISO 8501-1 の Sa 2 1/2

国の共通仕様書でISO規格の等級が書かれているのは、1種です。工場塗装工の項に、次の定めがあります。

素地調整程度1種 塗膜、黒皮、さび、その他の付着品を完全に除去(素地調整のグレードは、除せい(錆)程度のISO規格でSa2 1/2)し、鋼肌を露出させたもの。

(国土交通省「土木工事共通仕様書(案)」令和7年3月 3-2-12-11 工場塗装工)

塗替えでも、同じ等級が物差しになっています。土木学会の報告書には、次の記述があります。

鋼道路橋の塗替え塗装における素地調整程度1種(表 2.1.2)の仕上がり状態は,除せい度 Sa 2 1/2 を標準として管理されている.

(土木学会鋼構造委員会「レーザーによる鋼構造物表面の素地調整技術検討小委員会 報告書」2022年12月 2.1)

国土技術政策総合研究所(国総研)の部分塗替え塗装要領(案)も、ブラスト法で1種、ISO Sa 2 1/2 相当以上に仕上げることを原則としました。

1種には、塗装までの時間の決まりが付きます。同じ要領(案)は、ブラスト処理のあと4時間以内に塗装しなければならないとしています。塗替えの表(表10-14-2)は種別と作業内容の表で、ISOの等級の欄はありません。

Sa はブラスト、St は工具で処理した面の等級です

除せい度は、処理したあとの面を代表写真と見比べて決めます。ブラストで処理した面の等級がSa、手工具・動力工具で処理した面の等級がStです。土木学会の報告書の表から、原文のまま引きます。

除せい度 処理 鋼材表面の状態
Sa 3 目視上清浄な鋼材を得るためのブラスト処理 拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している.
Sa 2 1/2 さらに十分なブラスト処理 拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない.残存するすべての汚れは,そのこん跡がはん(斑)点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である.
Sa 2 十分なブラスト処理 拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物,目に見える油,グリース及び泥土がない.残存する汚れのすべては,固着している.
Sa 1 軽いブラスト処理 拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物,目に見える油,グリース及び泥土がない.
St 3 さらに十分な手工具・動力工具処理 St2 と同様であるが,素地から発せられる金属光沢を呈するまで,さらに十分に処理する.
St 2 十分な手工具・動力工具処理 拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物,目に見える油,グリース及び泥土がない.

表の出典は JIS Z 0313 と ISO 8501-1 で、St の2つは ISO 8501-1 によると注記されています。2種〜4種は工具で処理する区分なので、ISO 8501-1 に当てはめるなら St の側の等級です。国総研の資料は、機械工具で処理した部分は ISO St3 程度にとどまるとし、時間をかけても Sa 2 1/2 相当の除せい度を確保するのは難しいとしています。2種〜4種でどの等級を求めるかは、特記仕様書で確かめてください。

3種はA・B・Cの3段階:さびの面積で費用が変わります

3種のA・B・Cは、作業内容が同じで、さび面積と塗膜異常面積の範囲が違います。沖縄地区鋼橋塗装マニュアル(平成20年8月)は、分ける理由を次のように説明しています。

3種は死膜部分の発生比率により作業時間と費用が大きく異なるので、作業内容は同一であるが実用上3段階に細分することが多い。

単価の立て方も、種別ごとに分かれます。東日本高速道路の土木工事共通仕様書(令和8年7月)は、塗替塗装を1㎡当たりの契約単価で支払い、単価表の項目に素地調整の種別を括弧書きで付けています。1種の場合、ケレンかすと研掃材を集めた場所からの積込・運搬・処分の費用は、この単価に含まれません。

どの種が多く使われてきたかは、資料の時期で変わります。沖縄のマニュアル(平成20年)には「実際の塗替えではほとんどが3種を適用している」とあり、2種は作業時間が長く費用も高くなるので適用例は少ないと説明されています。土木学会の報告書(2022年)によると、塗替えでも重防食塗装系の採用が増え、ブラスト処理による素地調整の適用事例も増えてきました。

水を使う場面:素地調整の前に、塩分を洗い流します

素地調整の工程で水がはっきり出てくるのは、塩分の除去です。国交省の共通仕様書は、海岸地域に架設されていた場合など塩分の付着が懸念されるときに付着塩分量を測り、NaClが50mg/㎡以上なら水洗いするよう定めています。

沖縄のマニュアルは、この水洗いを素地調整の手順に組み込みました。3種と4種は素地調整に先立って水洗いを行うことを原則とし、旧塗膜をすべて除去する1種と2種は水洗いの対象外です。水洗いは高圧水による洗浄を原則とし、同じマニュアルの表では、付着塩分の除去率が水洗90%、動力工具49%、動力工具+ウエス拭き76%でした。

塩分は、目に見えにくい汚れです。塩分を含むさびを十分に除去しないまま塗装すると、早い時期に膨れなどの塗膜異状が発生することがあると、土木学会の報告書は書いています。見た目の等級とは別に、付着塩分量を測って確かめます。

水で処理した鋼面の等級は、ISO 8501-4 が別に定めています

ブラストのSaと工具のStは、ISO 8501-1 の等級です。高圧水のウォータージェットで処理した鋼面については、別の規格 ISO 8501-4 があります。現行は2020年10月発行の第2版で、2026年の見直しで現行のまま確認されました。日本規格協会の販売ページでは、邦訳版は「無」です。

ISOが公開している概要によると、この規格は次の3つを、文章と代表写真で定めています。

評価の対象は、見た目の清浄度です。目に見えない塩類などの試験は ISO 8502 シリーズに、表面の粗さは ISO 8503 シリーズにあると、同じ概要に書かれています。国交省の共通仕様書に出てくるISOの等級は、1種の Sa 2 1/2 です。水で処理した面を ISO 8501-4 の等級で指定するかどうかは、発注者の仕様書で確かめます。

ウォータージェットで除去した鋼面を何種として扱うかは、設計図書で決まります

国交省の表の作業方法の欄は、1種がブラスト法、2種〜4種が電動工具と手工具の併用です。ウォータージェットの名前は、この欄にありません。素地調整は設計図書に示す種別に応じて行うと定められているので、水で除去した鋼面をどの種として扱うかは、工事ごとに設計図書で確かめ、読み取れなければ監督職員と協議して決めます。

ウォータージェットは、水圧で塗膜とさびを除去する湿式の工法です。鋼材は内部に隙間が無く水が入り込めないため、塗膜とさびを除去したあとの鋼材はそのまま残ります。

湿式で塗膜を除去してから、ブラストで1種に仕上げる。この2段の組み立ては、剥離剤では広く行われています。兵庫県宝塚土木事務所の報告(2021年)によると、鉛を含む塗膜の塗替えは多くが「剥離剤による塗膜の除去後にブラスト処理を行っている状況」です。ウォータージェットで除去した鋼面に、さらにブラストを重ねるかどうかも、求められる種と等級で決まります。

水で処理した鋼面を次の工程へ渡す前に、確かめることは3つあります。

  1. 求められる種と等級。 1種なら Sa 2 1/2 が標準です。水で処理した面の見た目の等級には ISO 8501-4 があるので、どちらの物差しで検査するかを先に決めます
  2. 表面の粗さ。 国総研の要領(案)は、素地調整を、さびや劣化塗膜などを除去し「適度に粗にする」作業と説明しています。土木学会の報告書の比較表では、ブラスト処理は鋼材の露出と共に適度な粗度の付与が可能です。粗さの指定があれば、その値に届くかを確かめます
  3. 乾かしてから塗る段取り。 共通仕様書の現場塗装工の項は、鋼材表面が乾燥状態のときに塗装すること、下塗りが遅れてさびが生じたときは素地調整をやり直すことを定めています。水で処理した面は濡れるので、乾燥とさび止めの段取りを工程に入れます

鉛を含む塗膜で湿式が求められる場面と、当社の鋼構造物向けの装置は鋼構造物の塗膜除去|鉛を含む塗膜で湿式が求められる場面に、ブラストとの違いはウォータージェットとサンドブラストの比較にまとめました。高速道路会社の要領で、湿潤化による塗膜除去のあとの素地調整程度がどう定められているかは、塗膜除去のRB種とはで原文を引いています。

建築の鉄骨は「素地ごしらえ」:A種・B種・C種の別の体系です

ここまでの1種〜4種は、道路橋の塗替えの区分です。建築の鉄骨の塗装は、国交省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」の「素地ごしらえ」で種別が決まります。表18.2.2「鉄鋼面の素地ごしらえ」の錆落しの工程は、次のとおりです(原文のまま)。

種別 錆落し(面の処理)
A種 酸漬け、中和及び湯洗いにより除去
B種 ブラスト法により除去
C種 ディスクサンダー、スクレーパー、ワイヤブラシ、研磨紙 P120~220 等で除去

特記がなければC種で、耐候性塗料塗りの場合はB種です。A種とB種は、製作工場等で行うと定められています。塗替えの側は公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)の「鉄鋼面の下地調整」で、特記がなければRB種です。RA種・RB種・RC種の違いは塗膜除去のRB種とはで原文を引いて整理しました。建築と道路橋は、基準書から別の体系です。仕様書の表題を見れば、どちらで書かれているかが分かります。

まとめ

ケレン(素地調整)の種類は、道路橋の塗替えでは1種〜4種です。 1種はブラスト法で旧塗膜とさびを完全に除去する区分で、仕上がりは ISO 8501-1 の Sa 2 1/2 を標準として管理されています。2種〜4種は電動工具と手工具で処理し、活膜を残す3種は、さびの面積でA・B・Cの3段階に分かれます。

水は、素地調整の前に塩分を落とす工程で使われ、水で処理した鋼面の等級は ISO 8501-4 が別に定めています。ウォータージェットで塗膜を除去した鋼面を何種として扱うかは、国の仕様書の表では定められていません。求められる種・等級・粗さを特記仕様書で確かめてから、工法の組み立てを決めます。

ご相談ください 特記仕様書に書かれた素地調整の種別を見せていただければ、ウォータージェットだけで届くのか、ブラストとの組み合わせが要るのかを率直にお答えします。 ブラストだけのほうが合う現場なら、答えはブラストです。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。素地調整の区分と記号は、発注者ごとに異なります。 工事の計画には、ご使用の仕様書の最新版で必ずご確認ください。

よくある質問

ケレンの種類は何種類ありますか?
道路橋の塗替えでは1種〜4種の4段階です。3種はさびと塗膜異常の面積でA・B・Cに分かれます。1種はブラスト法で旧塗膜とさびを完全に除去し、4種は粉化物と汚れを除去します。仕様書での呼び名は「素地調整程度」です。
1種ケレンと2種ケレンの違いは何ですか?
作業方法と仕上がりの物差しが違います。1種はブラスト法でさびと旧塗膜を完全に除去し、ISO 8501-1のSa 2 1/2が標準です。2種は電動工具と手工具の併用で旧塗膜とさびを除去し、鋼材面を露出させます。
素地調整1種は、ISOのどの等級に当たりますか?
ISO 8501-1のSa 2 1/2です。国土交通省の土木工事共通仕様書が1種をこの等級で定めています。土木学会の報告書にも、鋼道路橋の塗替えでの1種の仕上がりはSa 2 1/2を標準として管理されている、との記述があります。
ウォータージェットで塗膜を除去した鋼面は、何種になりますか?
国の仕様書の表には定めがありません。作業方法の欄は、1種がブラスト法、2種〜4種が電動工具と手工具です。何種として扱うか、ブラストを重ねるかは、設計図書に示された種別と、等級・粗さの指定で決まります。
鉄骨のケレンも1種〜4種で指定しますか?
建築の鉄骨は別の体系です。公共建築工事標準仕様書の「素地ごしらえ」でA種・B種・C種に分かれ、特記がなければC種とされています。塗替えは公共建築改修工事標準仕様書の下地調整で、特記がなければRB種です。

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