この記事の要点
- はつりで使うさく岩機は、手持ちのブレーカーも含めて、騒音規制法の特定建設作業に当たります。 振動規制法の政令が挙げるのは「ブレーカー(手持式のものを除く。)」で、ハンドブレーカーやチッパーは入りません。
- 指定地域の中で特定建設作業を行うときは、作業開始の7日前までに市町村長へ届け出ます。 基準は敷地の境界線で騒音85デシベル・振動75デシベルで、夜間・日曜日その他の休日・連続6日を超える作業にも基準があります。
- ウォータージェットの超高圧水発生装置は、騒音規制法・振動規制法の政令の一覧に名指しされていません。 現場に持ち込むエアーコンプレッサーは、電動機以外の原動機で定格出力15キロワット以上なら騒音規制法の対象です。条例で対象の作業を広げている自治体もあります。
特定建設作業とは、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音や振動を発生する作業として、騒音規制法と振動規制法の政令で定められたものです。 指定地域の中でこの作業を行う場合は、事前の届出が必要になり、音や振動の大きさと作業時間に基準がかかります。当てはまり方は、はつり工事で使う機械によって違います。この記事では、e-Gov法令検索の条文と、環境省・国土交通省・自治体の資料を開いて確かめた内容を、工事の計画の順に整理しました。ウォータージェットの音や振動の抑え方は、ウォータージェットの騒音・振動・粉じんで扱っています。
対象の作業:騒音は8種類、振動は4種類
特定建設作業の一覧は、騒音規制法施行令と振動規制法施行令のそれぞれの別表第二にあります。騒音は、くい打機・びょう打機・さく岩機・空気圧縮機・コンクリートプラント等・バックホウ・トラクターショベル・ブルドーザーを使う8種類。振動は、くい打機・鋼球による破壊・舗装版破砕機・ブレーカーを使う4種類です。はつり工事にかかわる号を、次に引きます。
三 さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあつては、一日における当該作業に係る二地点間の最大距離が五〇メートルを超えない作業に限る。)
四 空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであつて、その原動機の定格出力が一五キロワット以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)
(騒音規制法施行令 別表第二)
四 ブレーカー(手持式のものを除く。)を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあつては、一日における当該作業に係る二地点間の最大距離が五〇メートルを超えない作業に限る。)
(振動規制法施行令 別表第二)
どちらの施行令も、第二条のただし書で「当該作業がその作業を開始した日に終わるもの」を除いています。1日で終わる作業は、特定建設作業に入りません。 作業場所を移しながら進める場合は、1日の2地点間の最大距離が50メートルを超えるかどうかで判断が分かれます。
規制がかかるのは、都道府県知事(市の区域は市長)が指定した地域の中です。北九州市の手引きによると、騒音規制法の指定地域は市の都市計画区域(島しょ・北九州空港を除く)で、おおむね市内全域にあたります。
はつりの機械ごとの当てはまり方:手持ちのブレーカーは騒音だけ
打撃式のはつり(ピックはつり)は、ブレーカーやチッパーで叩いてコンクリートを砕く工法です。北九州市は、機械ごとの当てはまり方を一覧表にしています。
| 機械 | 騒音規制法 | 振動規制法 |
|---|---|---|
| ブレーカー(手持式を除く) | 当たる | 当たる |
| ハンドブレーカー(空気式・電気式) | 当たる | 当たらない |
| その他のさく岩機(レッグドリル・ハンドハンマ等) | 当たる | 当たらない |
| 空気圧縮機(原動機の定格出力15kW以上。電動・タービン式と、さく岩機の動力として使う場合を除く) | 当たる | 当たらない |
| ウォータージェットの超高圧水発生装置 | 一覧に名指し無し | 一覧に名指し無し |
(上の4行は北九州市「騒音と振動の手引き」別表6。最後の1行は、施行令の別表第二の原文と照らした結果です)
ハンドブレーカーを動かす空気圧縮機は、四のかっこ書きでさく岩機の動力が除かれているため、空気圧縮機の号には入りません。ハンドブレーカーそのものが、三のさく岩機に当たります。打撃式のはつりで振動規制法の特定建設作業になるのは、手持式ではないブレーカーを使う場合です。神戸市の案内は、その例としてショベルカーに取り付けた大型ブレーカーを挙げています。
国土交通省の「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」には、コンクリート構造物を砕く工事の工法の選び方について、次の定めがあります。
コンクリート構造物を破砕する場合には,工事現場の周辺の環境を十分考慮し,コンクリート圧砕機,ブレーカ,膨脹剤等による工法から,適切な工法を選定しなければならない。
(国土交通省「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」第14章 構造物とりこわし工)
空気圧縮機:エンジン式で定格出力15キロワット以上なら騒音の対象
空気圧縮機の条件は2つです。電動機以外の原動機を用いること、そしてその原動機の定格出力が15キロワット以上であること。 北九州市の一覧表は「対象はエンジン式のみ」とし、電動式とタービン式を外しています。
政令の別表第二で、低騒音の機械を除く書き方になっているのは、バックホウ・トラクターショベル・ブルドーザーの3つだけです。この3つには「一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き」という文言が付いています。空気圧縮機の号には、この文言がありません。低騒音型の空気圧縮機でも、エンジン式で15キロワット以上なら、騒音規制法の特定建設作業に当たります。
国土交通省は、騒音を相当程度低減した建設機械を低騒音型建設機械に指定しています。令和8年6月現在の指定型式数は、空気圧縮機が313、さく岩機が1。技術指針は、持ち運べる空気圧縮機について次のように定めています。
可搬式のものは,低騒音型建設機械の使用を原則とする。
(国土交通省「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」第19章 空気圧縮機・発動発電機等)
ウォータージェットの装置は、政令の一覧に名指しされていません
ウォータージェットの現場には、4t車に搭載した超高圧水発生装置と、2tダブルキャブに積んだエアーコンプレッサーを持ち込みます。装置の構成はウォータージェットの装置構成にまとめています。騒音規制法施行令の8種類にも、振動規制法施行令の4種類にも、超高圧水の装置やウォータージェットの名はありません。
エアーコンプレッサーは、別表第二の四に挙がる空気圧縮機です。電動機以外の原動機で定格出力15キロワット以上なら、騒音規制法の特定建設作業に当たります。 持ち込む機械の原動機の種類と定格出力は、工程を組む段階で施工会社に確かめておく項目です。
届出の対象かどうかと、音が発生するかどうかは、別々に確かめる必要があります。ウォータージェットは水圧で除去し、打撃を与えないため、躯体を伝わる振動が打撃工具より小さい工法です。ハンドガンの近辺での音の大きさは、最大で約120dB。防音シートで囲う、装置を近隣から離して据える、といった対策で、音は他の工法と同様に抑えられます。
条例で対象の作業を広げている自治体があります
国の技術指針は、法律の一覧の外にある条例の規制も把握するよう求めています。
地方公共団体によっては,騒音規制法及び振動規制法に定めた特定建設作業以外の作業についても条例等により,規制,指導を行っているので,対象地域における条例等の内容を充分把握しておかなければならない。
(国土交通省「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」第3章 現行法令)
公開資料で確かめられた例を2つ挙げます。
| 自治体(条例) | 条例で加わる作業(資料の表記) | 届出 |
|---|---|---|
| 東京都(環境確保条例の指定建設作業) | 原動機を使用するはつり作業及びコンクリート仕上げ作業(さく岩機を使用する作業を除く。) | 不要(勧告基準あり) |
| 兵庫県条例(神戸市の案内) | コンクリート造、鉄骨造およびレンガ造の建物の解体作業または動力、火薬もしくは鉄球を使用して行う破壊作業 | 要届出(騒音) |
東京都は、はつり作業そのものを条例の対象に挙げています。ウォータージェットのはつりが条例の作業に当たるかどうかは、作業場所の区・市の窓口で確かめます。東京都環境局も、相談先を建設作業を行う場所の区または市の窓口としています。
基準:敷地の境界線で騒音85デシベル・振動75デシベル
騒音の基準は告示「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」に、振動の基準は振動規制法施行規則の別表第一にあります。
| 項目 | 1号区域 | 2号区域 |
|---|---|---|
| 敷地の境界線での大きさ | 騒音85デシベル・振動75デシベルを超えない | 同じ |
| 作業を行わない時間(夜間) | 午後7時から翌日の午前7時まで | 午後10時から翌日の午前6時まで |
| 1日の作業時間 | 10時間まで | 14時間まで |
| 同じ場所で続けて作業できる期間 | 連続6日まで | 連続6日まで |
| 日曜日その他の休日 | 作業を行わない | 作業を行わない |
1号区域は、住居の用に供されている区域や、学校・保育所・入院施設のある病院と診療所・図書館・特別養護老人ホーム・幼保連携型認定こども園の敷地の周囲おおむね80メートルの区域などで、都道府県知事(市は市長)が指定します。2号区域は、指定地域のうち1号区域以外の区域です。北九州市では、2号区域は、騒音ではおおむね工業地域・工業専用地域・臨港地区、振動では工業地域にあたります。
時間と日の基準には、例外があります。災害などで緊急に行う場合と、人の生命・身体の危険を防ぐために行う場合です。夜間と休日は、さらに、鉄道の正常な運行を確保する場合や、道路の占用・使用の許可に夜間や休日に行う条件が付いた場合なども外れます。
騒音規制法と振動規制法の第15条は、基準に適合せず周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるとき、市町村長が騒音・振動の防止の方法の改善や作業時間の変更を勧告できると定めています。勧告に従わずに作業を続けると、命令が出されることがあります。
ハンドガンの近辺で約120dBという値と、敷地の境界線で85デシベルという基準は、測る場所が違います。比べるには、敷地の境界線で測った値が要ります。 境界線での大きさを左右するのは、音源から境界までの距離、防音シート、周囲の反射です。振動の75デシベルは振動加速度レベルの値で、音圧レベルである騒音の85デシベルとは別の量を表しています。
届出:施工する者が、作業開始の7日前までに市町村長へ
指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、当該特定建設作業の開始の日の七日前までに、環境省令で定めるところにより、次の事項を市町村長に届け出なければならない。
(騒音規制法 第十四条第一項。振動規制法 第十四条第一項も同じ書き出し)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者。北九州市は「工事元請負人」、福岡市は「工事の施工方法・工期を統括管理している元請業者」としています |
| いつまでに | 作業開始の日の7日前まで。北九州市・福岡市は、届出日と作業開始日を除いて7日としています |
| どこへ | 市町村長。北九州市は環境局環境監視課、福岡市は作業場所の区役所生活環境課 |
| 何を | 氏名・住所、工事の目的の施設や工作物の種類、作業の場所と期間、騒音・振動の防止の方法など。添付は付近の見取図と、特定建設作業の工程を示した工事工程表 |
| 緊急時 | 災害その他非常の事態で緊急に行う場合は、事後に速やかに届け出ます |
日数の数え方には、福岡市の例があります。作業開始が13日(金)なら、届出の期限は5日(木)です。 北九州市は、実施期間が2か月以上中断する場合には、改めて届け出るよう求めています。
届出をしなかった場合や、虚偽の届出をした場合には罰則があります。罰金は、騒音規制法で3万円以下(第31条)、振動規制法で10万円以下(第26条)。
着工前に確かめる5つのこと
- 作業場所が指定地域か。 指定地域の中なら、1号区域か2号区域かも確かめます。市町村の地図や窓口で分かります
- 使う機械を、施行令の別表第二に当てる。 ブレーカーが手持式かどうか、空気圧縮機の原動機の種類と定格出力を見ます
- 作業が1日で終わるか。 場所を移しながら進める場合は、1日の2地点間の最大距離が50メートルを超えるかを見ます
- 条例で加わる作業が無いか。 はつり作業や破壊作業を条例で挙げている自治体があります
- 届出の期限と添付書類。 作業開始の7日前(届出日と開始日を除く)までに、付近見取図と工程表を付けて出します
まとめ
はつりで使うさく岩機は、手持ちのブレーカーを含めて騒音規制法の特定建設作業で、振動規制法の対象は手持式を除くブレーカーです。 指定地域の中なら、元請が作業開始の7日前までに市町村長へ届け出て、敷地の境界線での大きさと作業時間の基準を守ります。
ウォータージェットの超高圧水発生装置は、政令の一覧に名指しされていません。持ち込むエアーコンプレッサーの原動機と定格出力、作業場所の条例は、工事ごとに確かめる項目です。ハンドガンの近辺では音の大きさが最大で約120dBに達するため、防音の対策は他の工法と同様に組み立てます。
ご相談ください 作業場所と工程、近隣の状況をうかがえれば、ウォータージェットで施工する場合に持ち込む装置と、音が発生する時間帯を率直にお答えします。 打撃式のはつりのほうが合う現場なら、そうお伝えします。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。
本記事で参照した資料
- 騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)e-Gov法令検索(第二条・第三条・第十四条・第十五条・第三十一条)
- 騒音規制法施行令(昭和四十三年政令第三百二十四号)e-Gov法令検索(第二条・別表第二)
- 振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)e-Gov法令検索(第二条・第三条・第十四条・第十五条・第二十六条)
- 振動規制法施行令(昭和五十一年政令第二百八十号)e-Gov法令検索(第二条・別表第二)
- 振動規制法施行規則(昭和五十一年総理府令第五十八号)e-Gov法令検索(第十条・第十一条・別表第一・付表)
- 環境省「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」昭和43年11月27日 厚生省・建設省告示1号(最終改正 平成27年4月20日 環境省告示第66号)
- 環境省 申請・届出等手続案内「特定建設作業の実施の届出」
- 国土交通省「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」昭和51.3.2 建設省経機発第54号(改正 昭和62年3.30 建設省経機発第58号)
- 国土交通省「騒音・振動対策」(低騒音型建設機械指定状況)令和8年6月現在
- 北九州市「騒音・振動規制法に基づく届出(特定建設作業)」更新日 2025年11月27日
- 北九州市 環境局環境監視部環境監視課「騒音と振動の手引き」令和4年2月(Ⅲ 特定建設作業の規制)
- 福岡市「特定建設作業の届出について」更新日 2023年12月1日
- 東京都環境局「建設工事に係る騒音・振動の規制」更新日 2022年12月1日/同「簡易表」更新日 2025年4月22日
- 神戸市「特定建設作業の種類」最終更新日 2026年8月4日
いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。指定地域・区域の区分・条例の内容は、自治体ごとに違います。 工事の計画には、作業場所の市町村の最新の案内で必ずご確認ください。