この記事の要点
- 更生工法と下地処理は別の工程。更生材を選ぶ前に、下地をどう作るかが決まっていないと成立しない。
- 硫化水素による劣化層を残したまま更生材を施工すると、材料の性能にかかわらず早期に剥がれる。
- マンホール内は酸素欠乏・硫化水素の危険がある閉所。工法の話の前に、入れる体制かどうかが問われる。
マンホールの改修を検討すると、まず出てくるのは更生工法の名前です。どの工法を採用するか、どの材料を使うか——検討はそこから始まります。
ただ、実際に耐久性を左右するのは、その前の工程であることが少なくありません。この記事では、下地処理の側から整理します。
更生工法と下地処理は、別の工程です
言葉が似ているので混同されがちですが、順序はこうです。

| 工程 | 何をするか |
|---|---|
| ① 下地処理 | 劣化してもろくなった既設のコンクリート面を取り除き、健全な面を出す |
| ② 更生 | その面に、更生材で新しい層をつくる |
担当する会社が分かれることもあります。 更生材のメーカーや工法協会が②を担い、①は別の施工会社が入る、という組み方です。
ここで起きやすいのが、①の要求水準が曖昧なまま②の工法だけ決まっているという状態です。更生材には、それぞれ「どういう下地であれば所定の性能が出るか」の条件があります。採用する更生工法の仕様を先に確認しないと、下地処理の範囲が決められません。
なぜ劣化層を残してはいけないのか
下水道の躯体が劣化する仕組みは、他の構造物と違います。
下水から発生した硫化水素が、躯体表面で微生物のはたらきによって硫酸に変わり、コンクリートを腐食させます。いわゆる微生物腐食です。表層からじわじわともろくなり、放置すれば断面が痩せ、鉄筋の露出につながります。
問題は、このもろくなった層の上に新しい層を作っても、下の層ごと剥がれるということです。更生材がどれだけ優れていても、接している相手がもろければ、そこから壊れます。
だから下地処理では、「削れるだけ削る」でも「表面をきれいにする」でもなく、健全な層に届いたかどうかが判断基準になります。
どこまで削るかは、削りながら決まります
正直に申し上げると、着工前に深さを一律で決めることはできません。
硫化水素による劣化の進み方は、同じマンホールの中でも場所によって違います。水面付近、気相部、流入口の周辺——条件が違えば進み方も変わります。
実際の現場では、削りながら対象の状態を見て加減し、打音などで脆弱部が残っていないかを確認していきます。 想定より深かった、逆に浅くて済んだ、というのは起こります。
そのため、想定と違ったときの扱いを着工前に決めておくことをおすすめしています。範囲や深さが変わるなら、費用と工期への影響も含めて相談したうえで進める。この取り決めの有無で、着工後のやり取りがまったく変わります。(関連:除去深さと中性化層の考え方)
ウォータージェットが向く理由
超高圧の水で削る工法が、この下地処理に向くのには理由があります。
もろい部分から先に取れる — 健全でしっかりしたコンクリートは削れにくく、劣化して隙間が増えた部分から除去が進みます。「劣化層だけを選んで取る」が成り立ちます。
鉄筋を傷めない — 金属は内部に隙間がなく水が入り込めないため、母材は削れず、付着したサビや脆弱物だけが落ちます。そのまま次工程へ渡せます。
円形の内壁と狭所に入る — マンホールの内壁は円筒です。刃物や打撃工具は平面を前提にした道具が多く、曲面や入隅は苦手です。水の噴射は非接触なので、形に縛られません。 サンテックが人の手でハンドガンを扱う施工を続けているのも、この「届く」を成立させるためで、過去には約60cm角・高さ約2mの塔の内部という現場も手がけました。
打撃を与えない — 既設躯体への負担が小さく、健全な部分に微細なひびを残しにくくなります。
閉所作業として、入れる体制かどうか
工法の話より前に問われるのが、ここです。
マンホール内は酸素欠乏と硫化水素の危険がある閉所です。換気、ガス測定、監視体制、退避の手順、そして有資格者の配置が前提になります。
サンテックには酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者が9名在籍しています(従業員14名)。(関連:施工体制と資格)
「入れる会社かどうか」は、発注者として率直に確認してよい項目です。体制を聞いたうえで判断してください。
水の段取りは、ここでも課題になります
ウォータージェットは水を使う工法なので、使った水をどうするかが必ずついてきます。
出てくるのは水ではなく、削りカス(劣化したコンクリート片)が混ざった濁水です。下水道の中だからそのまま流せる、とは限りません。回収の方法、処理、処分までを施工計画に織り込む必要があります。
ここは発注者側と事前に詰めておく項目です。着工後に判明すると、日程にも金額にも響きます。(関連:排水・濁水の処理)
今日、確認できること
- 採用予定の更生工法が要求する下地条件を、仕様書で確認する。 ここが決まらないと下地処理の範囲が決められません。工法協会や材料メーカーの資料に記載があるはずです
- 劣化の深さについて、調査結果があるか確認する。 無い場合は「削りながら決める」前提で、変更時の扱いを契約に入れておきます
- 濁水をどこへ流すのか、誰が手配するのかを決める。 「分からない」で構いません。分からない前提で段取りを組むほうが、着工後に判明するより影響が小さくて済みます
まとめ
マンホールの更生では、更生材そのものよりその下の面がどうなっているかが耐久性を決めます。硫化水素で劣化した層を残したまま新しい層を作れば、材料の性能にかかわらず、そこから壊れます。
下地処理の判断基準は「どれだけ削ったか」ではなく、健全な層に届いたかどうかです。そして深さは、削りながらでないと分かりません。
工法を決める前に、更生工法の要求する下地条件と、入れる体制があるかの2つを確認しておくと、そのあとの検討が速くなります。
ご相談ください 「採用予定の更生工法に対して、どこまで下地を作ればよいか」という段階からで構いません。仕様書と現場の状況をうかがったうえで、当社で対応が難しい場合はそのようにお伝えします。 株式会社サンテックは1993年の設立以来この工法だけを手がけ、下水道・マンホールを含む幅広い分野で、年平均92物件・累計1,500件以上の現場を重ねてきました。