TOP / 技術コラム / 工法解説
工法解説

熱交換器の洗浄方法 ― 高圧水・超高圧水と薬品の使い分けを、チューブの内外と停止期間から整理します

2026-09-26 / SANTEC COLUMN

この記事の要点

  1. 熱交換器の洗浄方法は、水の力で剥がす物理洗浄と、薬品で溶かす化学洗浄の2系統です。 付着物の性状、開放できるか、廃液をどう処理するかで使い分けます。
  2. チューブの内側と外側(胴側)では、届き方が違います。 内側はチャンネルを開ければ1本ずつ入口が並びます。外側は、管束を胴から引き抜ける構造かどうかで洗い方が変わります。
  3. 洗う時期は、定期修理の停止期間で決まります。 学会の報告でも、定期点検の期間中にすべての熱交換器を開放・洗浄することはできないとされています。

多管式(シェル&チューブ)熱交換器とは、胴(シェル)の中に多数の伝熱管(チューブ)を束ねて通し、管の内側と外側を流れる2つの流体の間で熱を移す機器です。 伝熱面にスケールや油分が付くと、熱が伝わりにくくなり、流れも細くなります。洗浄の方法は大きく2系統で、選ぶ決め手は汚れと構造と停止期間の3つです。この記事では、熱交換器に絞って、公的な資料で確認できた内容を段取りの順に整理しました。配管全般のスケール除去は、配管のスケール除去を水で行うにまとめています。

付着物の除去は、省エネ法の判断基準に書かれています

熱交換器の洗浄は、省エネ法の告示にも書かれた保守の項目です。経済産業省の告示「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」は、工場の加熱設備等について次のように定めています。

ボイラー、工業炉、熱交換器等の伝熱面その他の伝熱に係る部分の保守及び点検に関する管理標準を設定し、これに基づき定期的にばいじん、スケールその他の付着物を除去し、伝熱性能の低下を防止すること。

(経済産業省告示第66号「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」③ 加熱等を行う設備の保守及び点検)

廃熱回収用の熱交換器も同じで、保守・点検の項目に「伝熱面等の汚れの除去」があります。洗浄の周期と方法は、事業者が定める管理標準に書き込む事項です。 発注の前にその工場の管理標準を確認すると、洗浄の範囲が決めやすくなります。

洗う時期は、定期修理の停止期間で決まります

内部の洗浄は、運転を止めている間にしかできません。九州大学の研究グループは、第59回自動制御連合講演会(2016年)でこう報告しました。

化学プラントに設置されている熱交換器は,伝熱面の汚れなどにより伝熱性能が低下するため,定期点検期間中に開放・洗浄する必要がある.しかし,定期点検期間中に全ての熱交換器を開放・洗浄することはできない.

(若杉侑生・木村直樹・柘植義文「化学プラント用熱交換器の状態監視」)

同じ報告は、運転中のデータから伝熱性能が大きく落ちた熱交換器を見分ける手法を検討しています。どれを開けるかを先に絞り、限られた日数を割り振る考え方です。

熱交換器が法令上の圧力容器にあたる場合、検査の日程も停止期間に重なります。蒸気などの熱媒で液体を加熱し、容器内の圧力が大気圧を超えるものは、一定の大きさ以上で、労働安全衛生法施行令 第1条第5号の第一種圧力容器です。検査証の有効期間は1年。性能検査の結果で、1年未満、または1年を超え2年以内に更新されることもあります。性能検査の前に求められる準備は、次のとおりです。

第一種圧力容器に係る性能検査を受ける者は、第一種圧力容器を冷却し、掃除し、その他性能検査に必要な準備をしなければならない。

(ボイラー及び圧力容器安全規則 第75条)

検査前の掃除と、伝熱性能を戻すための洗浄は、同じ停止期間のなかで順番に組むことになります。

チューブの内側と外側で、届き方が違います

多管式熱交換器には、流路が2つあります。チューブの内側を流れる管側と、外側を流れる胴側です。

U字管式では、U字型の管の一端だけを管板に固定して、管と胴の温度差による熱応力を逃がしています(青森県産業技術センターの資料)。構造の違いが、そのまま洗い方の違いになります。方法を選ぶ最初の作業は、図面で構造と管の配列を確かめることです。

洗浄方法は2系統:物理洗浄と化学洗浄

方法 落とし方 届く範囲 出てくるもの
高圧水による洗浄 水の圧力で付着物を剥がす(15MPa以下〜30〜50MPa程度の領域) 開放してノズルを向けられる面 付着物が混ざった濁水
超高圧水(ウォータージェット) 200MPa以上に昇圧した水で付着物を剥がす 開放してノズルを向けられる面 付着物が混ざった濁水
化学洗浄 薬品で付着物を溶かす 薬液が回る範囲 廃液(廃酸・廃アルカリなど)

高圧水と超高圧水は、言葉が似ていても扱う圧力の桁が異なる領域です(関連:ウォータージェットの事故はなぜ起きるのか)。金属は内部に隙間が無く水が入り込めないため、超高圧水を当てても母材は残ります。剥がれるのは付着物だけです。

超高圧水が向く場面と、向かない場面

超高圧水は、硬く締まった付着物や、詰まって流れなくなったチューブで選択肢に入ります。使うのは水だけで、出てくる濁水は付着物と水が混ざったものです。火花が発生しないので、可燃性ガスが想定される設備でも施工しやすくなります。

ノズルを向けられない面には、水が届きません。

胴側に届かない、開放の日数が取れない、といった熱交換器では、薬液を回せる化学洗浄が候補です。給水と濁水の回収も、段取りに入ります(関連:ウォータージェットの排水処理)。

化学洗浄は、開放せずに薬液を回せます

化学洗浄は、熱交換器に薬液を循環させて付着物を溶かす方法です。開放しなくても薬液が流路全体に回るので、管束を引き抜けない胴側にも届きます。薬品選びの基準は、付着物の成分と熱交換器の材質の2つ。 成分に合わない薬品では溶けず、材質に合わない薬品は母材を傷めるため、事前の分析が前提になります。

洗浄のあとに残る廃液の扱いは、法律に定めがあります。廃棄物処理法の第2条第4項第1号は、事業活動に伴って生じた「燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類」などを産業廃棄物と定めています。著しい腐食性を持つ廃酸・廃アルカリは、施行令第2条の4で特別管理産業廃棄物にあたります。廃液の処分先と費用は、洗浄の見積りと同時に確かめておく必要があります。

超高圧水の濁水も、中身は設備が扱ってきた流体で変わります。処分先を着工前に決めておくのは、どちらの方法でも同じです。

分解・内部の作業には、安衛則第275条がかかります

化学設備を清掃のために分解する作業や、内部で行う作業には、労働安全衛生規則第275条が次の措置を定めています。

  1. 作業の方法と順序を決め、あらかじめ関係労働者に周知する
  2. 作業の指揮者を定め、その者に指揮させる
  3. 危険物等の漏えいや高温の水蒸気等の逸出を防ぐため、バルブかコックを二重に閉止するか、閉止したうえで閉止板等を施す
  4. バルブ、コック、閉止板等に施錠し、開放してはならない旨を表示するか、監視人を置く
  5. 閉止板等を外すときは、近くのバルブ・コックとの間に危険物等が残っていないかを確かめる

高圧水を使う洗浄では、噴射そのものにも危険があります。厚生労働省の労働災害事例には、集じん装置の配管内でジェットガンの受け渡し中に高圧水が大腿部を直撃し、作業者が亡くなった事例が載っています。原因として挙げられたのは、動力を遮断する指示が守られていなかったことと、洗浄作業を類型化した具体的な作業手順が無かったことでした。対策の1つは「洗浄作業を行っていない時は、常に水圧をオフにする」ことです。

今日、確認できること

  1. 図面で構造を確かめる。 管束を引き抜けるか、U字管か、チューブの本数・内径・配列はどうかで、選べる方法が変わります
  2. 前回の開放記録を見る。 付着物の写真や分析結果があれば、硬さと成分の見当がつきます。化学洗浄なら分析が薬品選びの前提です
  3. 停止期間と検査日程を並べる。 第一種圧力容器なら、性能検査の準備と洗浄をどの順で入れるかを決めます
  4. 濁水・廃液の行き先を決める。 廃酸・廃アルカリは産業廃棄物です。処分先が決まると、工程と費用が組めます(関連:相談前に確認しておきたい現場条件)

まとめ

熱交換器の洗浄方法には、水で剥がす物理洗浄と、薬品で溶かす化学洗浄の2系統があります。 チューブの内側や引き抜いた管束のように、ノズルを向けられる面には超高圧水が使えます。管束を引き抜けない胴側には、薬液を回す化学洗浄が向いています。

どちらも、定期修理の停止期間のなかで、開放・検査・洗浄・復旧を順に組みます。判断の入口は4つ。 構造(管束を引き抜けるか)、付着物(硬さと成分)、停止日数、濁水や廃液の処分先です。

ご相談ください 図面と前回の開放記録を見せていただければ、超高圧水で段取りが組めるかどうかを率直にお答えします。 化学洗浄のほうが合う熱交換器なら、答えは化学洗浄です。株式会社サンテックは創業から30年以上、超高圧ウォータージェット工法を専業としてきました。


本記事で参照した資料

いずれも原典を開いて確認したうえで記載しています。法令と告示は改正されることがあります。工事の計画には、発注時点の最新の法令・告示で必ずご確認ください。

よくある質問

熱交換器の洗浄方法には、どんな種類がありますか?
大きく2系統です。高圧水や超高圧水で付着物を剥がす物理洗浄と、薬液を循環させて付着物を溶かす化学洗浄があります。付着物の硬さと成分、管束を引き抜ける構造か、停止期間の日数、濁水や廃液の処分先で使い分けます。
熱交換器の洗浄に使う薬品は、どう選べばよいですか?
付着物の成分と、熱交換器の材質の2つで選びます。成分に合わない薬品では付着物が溶けず、材質に合わない薬品は母材を傷めます。前回の開放時の分析結果があれば、それが薬品選びの前提になります。
熱交換器を開放せずに洗浄できますか?
化学洗浄ならできます。薬液を循環させるので、管束を引き抜けない胴側にも液が回ります。洗浄後の廃液は廃酸・廃アルカリなどの産業廃棄物にあたり、著しい腐食性があれば特別管理産業廃棄物です。処分先と費用を先に確かめます。
熱交換器の洗浄は、いつ行うのですか?
定期修理などの停止期間に行います。運転しながら内部は洗えません。第一種圧力容器にあたる熱交換器は、検査証の有効期間が1年で、性能検査の前に冷却と掃除が求められるため、検査と洗浄を同じ停止期間に順番に組みます。
チューブの外側(胴側)もウォータージェットで洗えますか?
管束を胴から引き抜ける構造なら、抜いた管束の外側に水を当てる段取りが組めます。引き抜けない構造では胴側にノズルを向ける道がほとんど無いため、薬液を回す化学洗浄が候補になります。まず図面で構造を確かめます。

ウォータージェット工法のご相談はこちら

コンクリート劣化部除去・塗膜剥離・狭所施工まで。現場ごとの最適解を専門スタッフがご提案します。

お問い合わせはこちら →
← 技術コラム一覧へ戻る