TOP / 技術コラム / 工法解説
工法解説

無振動ではつる方法|打撃振動が発生しないから、音は遠くへ広がりません

2026-08-04 / SANTEC COLUMN

ピックはつり工事で問題になるのは、騒音と、粉じんです。

病院や学校が近い。工場は止められない。稼働中の施設で、隣の設備が動いている。——こういう現場で、ブレーカーやピックを入れると、削る前に別の問題が起きます。

超高圧ウォータージェットは、打撃振動が一切発生しない工法です。そのため、打撃音が躯体を伝わって外へ広がる「躯体振動音」が発生しません。粉じんも湿式のため抑えられます。

ただし、ハンドガンの近辺で発生する音そのものは小さくありません。 そこは他の工法と同じように、防音シートで囲い、作業時間帯を調整します。

「無振動 はつり」で工法を探しておられる方の多くは、近隣か、稼働中の設備を抱えておられます。その前提で、何が解決できて何が解決できないのかを整理します。

株式会社サンテックは、福岡・北九州を拠点に、九州各県と沖縄でこの工法を続けてきました。2000年から2024年までの25年間で1,530件・465,805㎡。うち、はつり(斫り)は131件です。

ノズルは対象に触れない。一定の距離を保って水を当てるだけなので、躯体に打撃が伝わらない

ノズルは対象に触れない。一定の距離を保って水を当てるだけなので、躯体に打撃が伝わらない

音は発生します。ただし、遠くへは広がりません

ウォータージェットは「静かな工法」ではありません。 ただし、音の広がり方が打撃工具とは違います。

ハンドガンの近辺では、音の大きさが最大で約120dBに達します。ブレーカーと同じか、それ以上の音が発生します。振動が出ないことと、音が小さいことは別です。

抑えられるのは、躯体を伝わる振動と粉じん、そして音の広がる範囲です。

困りごと ウォータージェットで
構造体を伝わる振動 発生しません(打撃しないため)
粉じん 抑えられます(湿式のため)
騒音 抑えられます(他の工法と同様に、防音シート等で)
近隣への飛散 抑えられます(湿式のため、その場に落ちます)

騒音を抑えたい場合は、防音シートで囲います。あわせて作業時間帯を調整します。他の工法と同じ対策が、同じように使えます。

先にこれをお伝えしておかないと、現場に入ってから「話が違う」となります。だから最初に書きました。

なぜ振動が出ないのか|打撃ではなく、水で壊しているから

ブレーカーやピックは、先端を打ち付けた衝撃でコンクリートを割ります。この衝撃は、削っている場所だけにとどまりません。躯体を伝わって、隣の部屋にも、上下階にも届きます。

稼働中の工場で機械が動いている、上下水道施設で隣の槽が生きている——こういう場所で、この振動が問題になります。

ウォータージェットは、水を当てているだけです。ノズルは対象に触れません。打撃そのものがないので、躯体に振動が伝わりません。

円筒形の槽の内部での施工。左が施工前、右が削り終えた面

円筒形の槽の内部での施工。左が施工前、右が削り終えた面

振動が出ないことの、もうひとつの効き目

残る躯体にとっても違いが出ます。

打撃で割ると、その衝撃は健全な部分にも伝わります。目に見えないひび(マイクロクラック)が残り、そこが次の劣化の起点になる可能性があります。ウォータージェットは打撃を与えません。水圧で劣化部から先に崩していくため、健全なままコンクリートを残します。

だから、後から打つコンクリートとの一体化が良いとされています。断面修復や耐震補強のように「足したものを元の躯体と一体で働かせたい」工事で選ばれるのは、この理由です。

関連記事:ウォータージェット工法とは(水圧と水くさび作用)

鉄筋を傷めない

もうひとつ、ピックはつりとの大きな違いがあります。

打撃工具は、鉄筋に当たれば鉄筋を傷めます。 かぶりが薄くなった箇所や、すでに鉄筋が露出している箇所で、これは避けにくい。断面や付着を損なうと、補修そのものの品質に効いてきます。

ウォータージェットは、鉄筋を傷つけません。 研磨材を混ぜない水だけの噴流では鋼材は割れず、鉄筋の錆や脆弱物だけが落ちます。周囲のコンクリートを落としながら、鉄筋は残す——これが可能です。

鉄筋を残したまま、周囲のコンクリートだけを落としていく

鉄筋を残したまま、周囲のコンクリートだけを落としていく

鉄筋に付着したコンクリートを洗い落とした状態。鉄筋そのものは傷めない

鉄筋に付着したコンクリートを洗い落とした状態。鉄筋そのものは傷めない

配筋が密な箇所や鉄筋径が大きい箇所ほど、ウォータージェットが活きる場面です。 鉄筋の裏側(かぶり裏)まで落とす場合、打撃工具は工具そのものを差し込める隙間がなければ届きません。水は鉄筋の間を通って回り込むため、手前の鉄筋の裏側にある鉄筋まで、周囲のコンクリートを落とせます。ただし当て方と角度にコツが要りますので、はつり方は元請さんとすり合わせたうえで進めています。

「表面だけ」の工法ではない

ウォータージェットは、表面を薄く削るだけの工法ではありません。道具を替えることで深さを使い分けます。

使う道具 除去厚(当社の施工例) 用途
ハンド直射ガン 300mm 斫る。ブレーカーの代わりになる領域
ハンド回転ガン 10mm 面を均一に削る。劣化部除去の主力
吸引型アクアブラスト 3mm 表面処理。回収しながら削る

直射ガンは「斫る」ための道具です。 一点に力を集めて掘り下げるので、深い除去にも対応が可能です。深く落とせるかどうかは、道具の選び方の問題です。

ただし補足させてください。300mmというのは部分的に深く掘る使い方での施工例であって、面全体を300mm落とす仕事ではありません。回転ガンの10mmも、セラミック塗膜とコンクリート劣化部を合わせた厚みです。

ハンド直射ガン。一点に力を集めて深く掘る

ハンド直射ガン。一点に力を集めて深く掘る

ハンド回転ガン。面を均一に削る

ハンド回転ガン。面を均一に削る

関連記事:装置とガン6種の使い分け

無振動はつりと、従来のはつり工法を並べて比べると

どれが優れているという話ではありません。向き不向きがはっきり分かれます。

超高圧ウォータージェット ピックはつり(ブレーカー・ピック) 研磨材ブラスト
振動 出ない 大きい 小さい
騒音 ハンドガンの近辺で最大約120dB 大きい 大きい
騒音の下げ方 防音シート・時間帯 時間帯・防音シート 防音シート・時間帯
局部を深く落とす速さ 遅い(同じ場所に当て続ける必要がある) 速い —
出来形の管理 削り代を試し削りで合わせ込む 目視で追いやすい —
粉じん 湿式のため抑えられる 多い 多い
母材への影響 マイクロクラックが出にくい 打撃が健全部にも伝わる 母材も一様に削れる
鉄筋 叩かずに周囲だけ落とせる 当たると断面・付着を損なうことがある —
形状 非接触。曲面・入隅に強い 工具が入る範囲 ノズルは向けられるが囲いが要る
必要な用役 給水・排水・電源が要る ほぼ不要 研磨材の搬入出
廃棄物 濁水とスラッジ(沈殿・脱水のうえ処分) ガラ 使用済み研磨材+ガラ
小面積での効率 段取りの比率が大きく、割高になりやすい 小回りが利く 中

向かない現場を、先に言っておきます

営業としては書きにくいところですが、はっきりさせておいたほうがお互いのためです。

① 水が引けない現場。 超高圧水発生装置は水を昇圧する機械なので、元の水がなければ動きません。目安として毎分30リットル前後を連続で確保できるか。仮設タンクで受ける方法もありますが、供給が細ければ装置の性能があっても出せません。

② 濁水の処理設備を置く場所がない現場。 削りカスを含んだ水は必ず出ます。回収し、沈殿・脱水し、産業廃棄物として搬出する。設備を置くスペースと搬出経路が要ります。コンクリートを削った濁水はアルカリ性に寄るため、放流条件によっては中和の工程も加わります。

③ 水がかかっては困る設備が近い現場。 ここが稼働中の工場でいちばん詰まるところです。振動は伝わりませんが、水は飛びます。 電気設備、計装機器、稼働中の生産ラインが至近にある場合は養生の範囲が大きくなり、それでも成立しないと判断すればお断りしています。「振動が出ないから稼働中でも大丈夫」と一律には言えません。 また、鋼材が近い現場では発錆を避けるため、給水に防錆剤を入れることがあります。

④ 次工程がすぐに乾いた下地を要求する現場。 削った面は濡れます。断面修復材や防食材の施工条件によっては、乾燥待ちが工程に乗ります。停止期間が極端に短い定期修理では、ここが効いてきます。

⑤ 面積が小さく、鉄筋を守る必要もない現場。 装置の搬入、ホースの引き回し、養生、濁水処理——この段取りは削る面積が小さくても一通り必要です。数㎡の部分はつりで、かつ鉄筋を傷めても構わない箇所なら、ブレーカーのほうが早く済みます。

なお、石綿(アスベスト)含有建材の除去は、当社では対応しておりません。 既存建物の改修では事前調査の結果によって工法の選択肢が変わるため、初回のご相談時にご確認ください。

現地調査でうかがったうえで、当社の出番ではないと判断すればそうお伝えします。無理に押し込んでも、現場で困るのは元請さんです。

ただし、小面積でもウォータージェットしかない場合があります

前節の⑤で「面積が小さければブレーカーのほうが早い」と書きました。ここには例外があります。鉄筋を傷めてはいけない箇所です。

新築の是正はつり——鉄筋の入れ忘れや位置ずれを直すために、打設済みのコンクリートを部分的に取り除く工事がこれにあたります。面積は数㎡、深さは数十から数百ミリ。面積だけ見れば「ブレーカーで十分」に見えますが、削る先に生きた鉄筋がある以上、打撃工具は入れられません。

当社の25年間のはつり実績131件は、その多くがこの領域です。しかも件数は増えています。2000年代は年0〜5件でしたが、直近5年は年6〜20件で推移しています。

「面積が小さいから向かない」ではなく、「小面積かつ鉄筋を守る必要がない」から向かない。 ここを分けてご判断ください。

現場に入った装置車両。4t車に超高圧水発生装置を積んで乗り入れる

現場に入った装置車両。4t車に超高圧水発生装置を積んで乗り入れる

こういう現場で使われています

逆に、向いているのはこういう条件です。

稼働を止められない施設。 工場、病院、庁舎、商業施設。隣で人が働いている、機械が動いている。振動を伝えられない現場です。

生き物や、音に敏感な対象が近い現場。 水族館の増設工事では、打撃ピックではつっていたところ、近くにいたアシカが落ち着かなくなりました。ウォータージェットに切り替えて解決しています。

近隣が近い現場。 粉じんを飛ばせない、飛散させられない。湿式のため、削りカスは水とともにその場へ落ちます。

鉄筋が露出している、あるいはかぶりが薄い箇所。 打撃を入れたくない場所です。

曲面・狭所・入隅。 工具を面で当てられない形状。円筒形の槽、マンホールの縦坑、隅部。非接触だからこそ入っていけます。

吸引型アクアブラスト。削りカスと洗浄水をその場で回収する

吸引型アクアブラスト。削りカスと洗浄水をその場で回収する

深い円形の処理槽。足場を底部まで下ろし、壁面と底部を削る

深い円形の処理槽。足場を底部まで下ろし、壁面と底部を削る

養生した屋内での施工。粉じんではなく水煙が立つ

養生した屋内での施工。粉じんではなく水煙が立つ

近隣対策として、実際にやること

届出まわりで、よく聞かれること

ブレーカーやさく岩機を使う作業は、騒音規制法・振動規制法の「特定建設作業」に該当する場合があり、その際は自治体への届出と、作業時間帯・日数・規制値の制約がかかります。

ウォータージェットは打撃工具ではないため、振動を理由とする規制の対象からは外れると考えられます。 ただし該当・非該当の判断と手続きは自治体ごとに運用が異なり、最終的には所管の窓口へのご確認が必要です。当社では、現場所在地の規制区域と運用を元請さんと一緒に確認したうえで工程を組んでいます。

一方、音は発生します。 ハンドガンの近辺では最大約120dBに達するため、近隣状況によっては防音シートの設置や作業時間帯の調整を行います。振動と騒音は別々に判断されるとお考えください。

実際にやること

「振動が出ないから大丈夫です」で終わらせません。音は出るので、そこは段取りで抑えます。

工法の切り替え(ただし、できる範囲は限られます)。 表面を薄く処理する仕事であれば、防音性能のある吸引型アクアブラスト(約80dB)に替えられます。ただしこの道具の除去厚は3mm程度で、凹凸の大きい面や入隅は苦手です。深く斫る仕事の音を、この切り替えで下げることはできません。 300mmを落とす作業は、直射ガンで120dBのまま進めるしかない——そこは時間帯と養生で対応します。

時間帯の調整。 施設の運用に合わせて、稼働時間を外す。夜間に寄せられる現場なら、日中は準備と養生に充てます。

養生と囲い。 飛沫と飛散の範囲を囲います。吸引型ならその場で回収するので、囲いも小さく済みます。

事前の説明。 「どのくらいの音が、どの時間帯に、何日出るか」を先に出します。数字を先に出しておくほうが、後から苦情になりません。

当社では、着工前に安全対策の資料をお出しし、そのとおりに現場で実行することを徹底しています。「どのくらいの音が、どの時間帯に、何日出るか」を含めて、先に紙にして共有します。

仮設足場を組んだ槽内での作業

仮設足場を組んだ槽内での作業

施工の流れ

  1. 現地調査 — 対象の状態、削る範囲と深さ、給水・排水・電源、濁水処理設備の置き場、搬出経路、近隣の条件、作業可能な時間帯を確認
  2. 工法の判断 — 前述の「向かない3条件」に当てはまらないかを見る。当てはまればその旨をお伝えします
  3. 計画 — 削り代、使用するガン、養生、濁水処理、工程を組む
  4. 準備 — 装置搬入、養生、給排水の接続
  5. 試し削り — 圧力・水量・ノズルを設定し、実際に当てて削れ方を確認。ここで削り代を合わせます
  6. 除去 — 面を送りながら削る
  7. 確認・記録 — 除去状態と鉄筋の状態を写真に残し、次工程へ引き渡す
劣化が進んだ槽内。曲面と天井を、形状に沿って削っていく

劣化が進んだ槽内。曲面と天井を、形状に沿って削っていく

まとめ

ピックはつりの騒音と粉じんが問題になる現場に、超高圧ウォータージェットという選択肢があります。打撃を与えないため構造体に振動が伝わらず、躯体を伝わって外へ広がる音も発生しません。湿式なので粉じんも抑えられ、鉄筋を傷つけずに周囲だけを落とせます。

一方で、ハンドガンの近辺で発生する音そのものは小さくありません。 そこは他の工法と同じく、防音シートと作業時間帯で対応します。水・排水・濁水処理という用役が要り、小面積では段取りの比率が大きくなります。

この両方をご理解いただいたうえで、現場ごとに選んでいただくのが一番だと考えています。当社の出番でないと判断すれば、そうお伝えします。

ご相談ください 「この現場で使えるか」「ピックはつりと比べてどうか」という段階からご相談いただけます。対象の写真と、給水・排水の条件、作業可能な時間帯をお知らせいただければ、工法の適否と概算の工程をお返しします。 お問い合わせフォームからは、写真・図面を添付してお送りいただけます。 対応エリア:福岡・北九州を中心に九州全県、沖縄。 お電話:093-475-7263(事業センター)

関連記事:ウォータージェット工法とは/装置とガン6種の使い分け/下水処理場のコンクリート劣化部除去

よくある質問

ウォータージェットは静かな工法ですか?
ハンドガンの近辺では静かではありません。音の大きさは最大で約120dBに達し、ブレーカーと同じか、それ以上の音が発生します。ただし打撃を与えないため、打撃音が躯体を伝わって外へ広がる「躯体振動音」が発生しません。現場のすぐそばの音は変わらなくても、外へ広がる範囲は小さくなります。騒音そのものは、他の工法と同じ防音シートや作業時間帯の調整で対応します。
振動が出ないのはなぜですか?
打撃ではなく、水で壊しているからです。ブレーカーやピックは、先端を打ち付けた衝撃でコンクリートを割ります。その衝撃は構造体を伝わって、隣の部屋まで届きます。ウォータージェットはノズルが対象に触れず、水圧で除去します。打撃そのものがないため、躯体に振動が伝わりません。稼働中の施設で、隣の設備を止められない現場で使われます。
ブレーカーの代わりに、どこまで削れますか?
当社の施工例では、ハンド直射ガンでコンクリートを300mm厚まで掘り下げたことがあります。部分的に深く掘る使い方での実績で、面全体を300mm落とす仕事ではありません。面を薄く均一に落とすなら回転ガンで10mm、表面処理なら吸引型アクアブラストで3mmと、道具を替えることで深さを使い分けます。「表面だけ」の工法ではありません。
粉じんは出ませんか?
湿式なので、乾式のはつりに比べて粉じんは抑えられます。ただし飛沫は飛ぶため、養生は必要です。そして粉じんが出ない代わりに濁水が発生します。これを回収し、沈殿・脱水などの処理を経て産業廃棄物として搬出する工程が必ず付きます。ここは正直にお伝えしています。
向かない現場はありますか?
あります。水が引けない、濁水の処理設備を置く場所がない、水がかかっては困る設備が近い、次工程がすぐに乾いた下地を要求する、面積が小さく鉄筋を守る必要もない——この5つです。水と排水の条件が成立しない場合はそもそも施工できませんので、他工法をご提案します。なお石綿含有建材の除去は当社では対応しておりません。

ウォータージェット工法のご相談はこちら

コンクリート劣化部除去・塗膜剥離・狭所施工まで。現場ごとの最適解を専門スタッフがご提案します。

お問い合わせはこちら →
← 技術コラム一覧へ戻る