TOP / 技術コラム / 現場レポート
現場レポート

浄水場・配水池の防食塗膜の更新|表面を削って塗り替える(福岡・九州)

2026-07-24 / SANTEC COLUMN

浄水場や配水池の内部に入ると、壁一面が水色や緑色に塗られているのが見えます。コンクリートを水から守るための防食塗膜です。この塗膜が浮き、めくれ、部分的に剥がれてくると、更新の時期になります。

下水処理場の改修とは、事情がかなり違います。上水の施設は、躯体そのものが比較的健全なまま、先に塗膜が寿命を迎えることが多いからです。したがって工事の中身も「大きく削る」のではなく、「必要な層だけを、浅く、確実に落とす」ものになります。

株式会社サンテックは、福岡・北九州を拠点に、九州各県と沖縄で浄水場・配水池の塗膜除去を続けてきました。本記事では、上水施設ならではの条件と、その進め方を解説します。

水処理施設の池内部で施工する様子。青いカッパは水を浴びる作業の必需品

水処理施設の槽内での施工(下水処理施設での例)。青いカッパは水を浴びる作業の必需品

上水施設は「躯体より先に塗膜が傷む」

下水処理場では、下水から発生した硫化水素が微生物のはたらきで硫酸に変わり、コンクリートそのものを侵します。これに対し、浄水場や配水池が溜めているのは処理済みの水です。硫化水素による腐食は基本的に起こりません。

そのため上水施設で先に寿命を迎えるのは、たいてい表面の防食塗膜です。水に触れ続け、清掃を繰り返すうちに、塗膜が劣化して浮きや剥離が出てきます。塗膜が切れれば、そこからコンクリートが水に直接さらされることになります。だから、傷んだ塗膜を落として塗り直す——これが上水施設の改修の基本になります。

もちろん、躯体がまったく傷まないわけではありません。中性化やひび割れ、目地の劣化など、別の要因で断面の補修が必要になる箇所もあります。その場合は、下水施設と同じように劣化部の除去を行います。

関連記事:下水処理場のコンクリート劣化部除去

削るのは、ごく浅い層

この工事の勘どころは、削る深さにあります。

落とすのは塗膜と、その下にある脆弱になった薄い層です。深さでいえば数ミリの世界で、健全なコンクリートまで削り込む必要はありません。むしろ削りすぎれば、断面を余計に痩せさせ、後の工程に手間を増やすことになります。

ここでウォータージェットの性質が効いてきます。水は、もろくなった部分から先に崩していきます。 塗膜と脆弱層は落ちるのに、硬く締まった健全なコンクリートは残る。圧力と水量、ノズルの選び方を調整することで、この「落ちるものだけが落ちる」状態をつくります。

吸引型アクアブラスト。削りカスと洗浄水をその場で吸引しながら施工する

吸引型アクアブラスト。削りカスと洗浄水をその場で吸引しながら施工する

削り終えた面は、細かい凹凸のある肌になります。この凹凸が、次に塗る防食材の食いつきをよくします。平滑なまま塗るより、適度に粗い面のほうが密着するからです。

研磨材を使う工法との違い

上水施設の塗膜除去では、研磨材を吹き付けるブラスト工法も使われてきました。比較すると、それぞれに向き不向きがあります。

研磨材ブラスト 超高圧ウォータージェット
異物の持ち込み 研磨材が現場に残る 水のみ。研磨材を持ち込まない
削り込みの制御 投射量と時間で管理。健全部にも一様に当たる もろい層から先に落ちる
曲面・隅部 苦手 非接触で対応しやすい
粉じん 多い 湿式で抑えやすい(飛沫養生は必要)
回収 研磨材とガラを分別回収 吸引型ならその場で回収
発生する廃棄物 使用済み研磨材+ガラ(分別・処分) 濁水とスラッジ(沈殿・脱水のうえ処分)

飲料水を扱う施設では、現場に何を持ち込むかが判断の分かれ目になります。ウォータージェットは水だけで削るため、砂などの異物を持ち込みません。一方で、濁水の処理という手間は必ず発生します。この点は正直にお伝えしています。

飲料水の施設だから気をつけること

上水施設ならではの配慮があります。

まず、異物を持ち込まないこと。 サンドブラストのように研磨材を吹き付ける工法では、砂などの異物が現場に残るリスクがあります。ウォータージェットは水だけで削るため、研磨材そのものを持ち込みません。加えて吸引型アクアブラストを使えば、削り落とした塗膜片と洗浄水をその場で吸い込みながら進められます。

次に、断水・通水の制約。 池を空にできる期間には限りがあります。系統を分けて片側ずつ施工する、夜間に工程を寄せるなど、施設の運用に合わせて計画を組みます。工程を左右するのは削る面積よりも、むしろ足場・濁水処理・池を空にできる時間帯です。

そして、閉ざされた空間での作業であること。池の中は暗く、換気も限られます。照明と送風を引き込み、安全を確保したうえで作業に入ります。

円筒形の池の内部での施工。壁面の左側が施工前、右側が削り終えた面

円筒形の槽内での施工(下水処理施設での例)。壁面の左側が施工前、右側が削り終えた面

施工の実際

装置は4t車に搭載した超高圧水発生装置と、2t車のエアーコンプレッサーで現場へ入ります。池の形と塗膜の状態に応じて、面を均一に削るハンド回転ガン、点で狙うハンド直射ガン、飛散を抑える吸引型アクアブラストなどを使い分けます。

現場に入った装置車両

現場に入った装置車両

ハンド直射ガン。狭い箇所や部分的な除去に使う

ハンド直射ガン。狭い箇所や部分的な除去に使う

面積の規模は現場によりますが、当社が手がけてきた上水施設の案件では、配水池で1,100〜1,300㎡、浄水場の池で600〜840㎡と、数百から千㎡台のまとまった工事が続いています。北九州の事業センターを拠点に、九州各県のほか、沖縄事業所を置いて沖縄の施設にも対応しています。

工程の目安として、吸引型アクアブラストを2ガンで運用する場合、1日あたり約80㎡が一つの基準になります。ここに足場の架け払いと濁水処理の日数が乗ります。

削り上がりは、人によって差が出ます。ハンドガンは噴射の反力を身体で受け止めながら操作するため、同じ角度・同じ幅で面を送り続けられるかどうかで仕上がりが変わる。とくに上水施設は削る深さが浅いぶん、ムラが出やすく、精度が問われます。当社では一人前になるまでに5年以上をかけ、最初に機械の構造の知識から教え込みます。

仮設足場を組んだ池内での作業

仮設足場を組んだ槽内での作業(下水処理施設での例)

ハンド回転ガン。面を均一に削るのに使う

ハンド回転ガン。面を均一に削るのに使う

大型タンク上部での施工。屋外の明るい現場では、飛散と養生の範囲が段取りを決める

大型タンク上部での施工。屋外の明るい現場では、飛散と養生の範囲が段取りを決める

断水を止められる時間から逆算する

上水施設の工事は、池を空にできる期間が計画の起点になります。配水池は水道の供給に直結するため、系統を切れる時間帯が限られます。

現場では、次のように工程を組みます。系統を分けられる施設なら片側ずつ施工する。夜間に工程を寄せられるなら、日中は準備と養生に充てる。足場が大がかりになる池では、その架け払いの日数も断水期間に含めて逆算します。

削る面積よりも、足場・濁水処理・断水可能な時間帯のほうが工期を左右します。 お見積りの際に最初に確認させていただくのも、この3点です。

現場に入った装置車両。雨天でも段取りを止めない

現場に入った装置車両。雨天でも段取りを止めない

施工の流れ

  1. 現地調査 — 塗膜の劣化範囲、躯体の状態、池の形状、断水条件、電源・給水・排水先を確認
  2. 計画 — 削る範囲と深さ、足場、換気、濁水処理、断水スケジュールに合わせた工程を組む
  3. 準備 — 装置搬入、足場・照明・送風の設置、養生
  4. 除去 — 圧力・水量・ガンを設定し、塗膜と脆弱層を除去
  5. 確認・清掃 — 除去状態を確認し、記録を残す。施設の基準に沿って清掃
  6. 引き渡し — 防食工事の工程へつなぐ

まとめ

浄水場・配水池の改修は、下水処理場とは劣化のしかたが違います。躯体は比較的健全なまま、先に防食塗膜が寿命を迎える。 だから工事も、深く削るのではなく、必要な層だけを浅く確実に落とすものになります。

ウォータージェットは、もろくなった部分から先に崩れるという性質上、この「落ちるものだけを落とす」作業に向いています。研磨材を使わないため異物を持ち込まず、吸引型なら削りカスを回収しながら進められる。飲料水を扱う施設に採用しやすい理由が、ここにあります。

ご相談ください 「塗膜がどの程度傷んでいるか」「どこまで落とすべきか」という段階からご相談いただけます。池内部の写真と図面、断水可能な期間をお知らせいただければ、除去範囲の考え方と必要な段取り、概算の工程をお返しします。 対応エリア:福岡・北九州を中心に九州全県、沖縄。 お電話:093-475-7263(事業センター)

関連記事:下水処理場のコンクリート劣化部除去/防食工事の下地処理が寿命を決める/装置とガン6種の使い分け

よくある質問

下水処理場とは何が違うのですか?
下水は硫化水素によって躯体そのものが腐食しますが、上水はその反応が基本的に起こりません。そのため浄水場・配水池では、コンクリートより先に表面の防食塗膜が寿命を迎えるケースが中心になります。削る深さも下水より浅く済むことが多く、その分だけ精度が問われます。
飲料水を扱う施設ですが、削りカスは残りませんか?
吸引型アクアブラストを使えば、削りカスと洗浄水をその場で吸い込みながら施工が可能です。研磨材を使わない工法のため、砂などの異物を持ち込まない点も上水施設に向いています。最終的な清掃・確認は施設の管理基準に沿って行います。
断水できる期間が限られています。対応できますか?
池の系統を分けて片側ずつ施工する、夜間に工程を寄せるなど、断水・通水の条件に合わせて計画します。工程を左右するのは削る面積よりも、足場と濁水処理、そして池を空にできる時間帯です。早い段階でご相談ください。

ウォータージェット工法のご相談はこちら

コンクリート劣化部除去・塗膜剥離・狭所施工まで。現場ごとの最適解を専門スタッフがご提案します。

お問い合わせはこちら →
← 技術コラム一覧へ戻る