防食工事が終わった直後の壁は、どれもきれいに見えます。下地がどうなっているかは、表面からは分かりません。
しかし数年経つと差が出ます。浮きが出る現場と、出ない現場。その分かれ目は、多くの場合、塗った材料の良し悪しではなく、その下がどうなっていたかにあります。
「悪い下地の上に塗るのか、いい下地の上に塗るのかで、全然変わってくる」
現場でよく口にする言葉です。株式会社サンテックは、福岡・北九州を拠点に、この「下地をつくる」工程だけを25年、1,167件・428,690㎡にわたって担ってきました。本記事では、下地処理が何をしていて、なぜ寿命を決めるのかを解説します。

超高圧の水が対象を削る仕組み
防食工事は三段階の分業でできている
まず、工事の全体像です。防食工事は、大きく三つの段階に分かれます。
第一段階:劣化部の除去(下地処理)。 もろくなったコンクリートや古い塗膜を取り除きます。ここが私たちの担当です。
第二段階:断面修復。 痩せた断面をモルタルなどで元の厚みに戻します。左官業者が行います。
第三段階:防食被覆。 ライニングや塗装で、躯体を守る層をつくります。防食業者が行います。
三者が順に手を入れる構造なので、前の工程の出来が、後ろの工程の品質を規定します。 第一段階が甘ければ、第二段階も第三段階も、その上に乗るだけになります。
「弱い層が残る」とどうなるか
劣化したコンクリートは、セメント分と細骨材が先に傷みます。指で押せばポロポロ取れるような、もろい層になっている。
この層を残したまま上から材料を施すと、どうなるか。材料は、もろい層に接着することになります。 つまり、いくら丈夫な材料を使っても、下の弱い層ごと剥がれる。
厄介なのは、施工直後には分からないことです。見た目は正常で、検査も通る。数年してから、浮きや剥離として表面化します。そのときには足場をもう一度組み、施工をやり直すことになります。手直しの費用と手間は、最初にきちんと落としておく費用を、たいてい上回ります。

除去前。表面に劣化した層とモルタルが残っている状態(新築の是正工事での例)

除去後。健全な素地と鉄筋が現れる(同上)
どこまで落とすか——色と、仕様書
では、どこまで落とせばよいのか。
現場では、まず色を見ます。健全なコンクリートはイメージどおりのグレーをしていますが、傷んだものは変色しています。
「健全なコンクリートはグレーです。傷んだものは変色している。まずそこを見ます」
削っていくと、表面はゴツゴツした肌になります。傷んでいるのはセメント分と細骨材なので、そこが先に取れ、硬い粗骨材が残るからです。この「骨材が顔を出した状態」が、下地としては理想的です。表面積が増え、次の材料がしっかり噛みます。
もっとも、判断のすべてを職人の目にゆだねているわけではありません。除去の前提は、発注仕様書によって決まります。 採用される防食被覆の種別や、要求される下地の品質によって、どこまで落とすかの考え方が変わる。削り代が寸法で指定されることも多く、その場合は指定に従って仕上げます。
私たちは、仕様書と現場の状態を突き合わせたうえで、削り代の考え方を元請・防食業者と事前にすり合わせます。
付着強度という物差し
「下地が良い」を感覚で語るだけでは、発注側は判断できません。実務では付着強度が物差しになります。
補修材や防食層が、下地にどれだけの力で付いているか。これを確かめる方法のひとつが、試験用の治具を接着して垂直に引っ張り、剥がれる強度を測るやり方です。要求される値は、採用する防食被覆や適用する基準によって異なりますので、仕様書の指定をご確認ください。
逆に言えば、もろい層を残したまま施工すると、この試験で下地側から破断します。 材料の強度ではなく、下地の強度で決まってしまうからです。仕様書に付着強度の要求がある場合、下地処理の精度がそのまま合否を左右します。
目荒らし——あえて粗くする処理
劣化部の除去とは別に、目荒らしという仕事があります。
既存のコンクリートが健全であっても、表面が平滑なままでは、後から打つコンクリートやモルタルが食いつきません。そこで、あえて表面を粗くして、接着面積を増やし、機械的にかみ合わせる。これが目荒らしです。耐震補強の増打ちや巻き立て、打継ぎ面の処理で必要になります。

天井スラブの目荒らし跡
打撃工具で目荒らしをすると、健全部にまで微細なひびが入り、削りすぎも起きやすくなります。ウォータージェットは、もろい部分から先に崩れるという性質上、健全部を残しながら必要な凹凸をつくるのに向いています。
耐震補強でも、下地が効く
下地処理が効くのは防食工事だけではありません。耐震補強でも同じ理屈がはたらきます。
鉄骨ブレースの増設、増打ち、巻き立て——いずれも既存の躯体と新設部が一体になって、はじめて設計どおりの性能が出ます。境界がつるつるのままだったり、弱い層が残っていたりすれば、そこが弱点になります。
一般に、補強の前には既存面の目荒らしと劣化部の除去が行われます。見えなくなる部分ですが、ここの丁寧さが構造物の寿命を左右します。
ウォータージェットが下地処理に向く理由
- 選択的に落とせる — もろくなった部分から先に崩れ、健全部は残りやすい
- 鉄筋を傷めにくい — 研磨材を混ぜないこの圧力域では、緻密な鋼材は侵食されにくい。露出した鉄筋の錆や脆弱物だけを落とせる
- 打撃振動がない — 健全部に微細なひびを入れにくい。供用中の施設にも採用しやすい
- 形状を選ばない — 非接触なので、曲面・隅部・狭所にも対応できる
- 粉じんを抑えやすい — 湿式のため。ただし飛沫やミストの養生は必要で、濁水の処理も必須です

鉄筋と型枠が入り組んだ箇所での施工
下地処理の工法を比べる
下地をつくる方法はいくつかあります。それぞれ性格が違います。
| 斫り(ブレーカー等) | 研削(サンダー等) | 研磨材ブラスト | 超高圧ウォータージェット | |
|---|---|---|---|---|
| 除去の考え方 | 打撃で砕く | 面を削り取る | 研磨材を吹き付ける | 水圧でもろい層から崩す |
| 健全部への影響 | 微細ひびが入りやすい | 削りすぎが起きやすい | 比較的小さい | 残しやすい |
| 鉄筋 | 打撃・変形の懸念 | 傷つける懸念 | 影響は小さい | 母材を残し錆だけ除去 |
| 曲面・隅部 | 苦手 | 苦手 | やや苦手 | 対応しやすい |
| 振動 | 大きい | 中程度 | 小さい | 打撃振動なし |
| 粉じん | 多い | 多い | 多い | 湿式で抑えやすい |
| 発生する廃棄物 | コンクリートガラ | 粉じん・ガラ | 使用済研磨材+ガラ(分別・処分) | 濁水とスラッジ(沈殿・脱水のうえ処分) |
どれが優れているという話ではありません。範囲が限られた単純な撤去なら斫りが早い場面もあります。健全部を残したい、鉄筋を傷めたくない、振動を出せない——こうした条件が重なるほど、ウォータージェットの利点が出てきます。
削り代は、何で決まるか
「どこまで落とすか」は現場の感覚だけでは決まりません。実務では次の要素で決まります。
採用される防食被覆の種別。 ライニングの種類によって、要求される下地の状態が変わります。厚膜系か薄膜系か、シート系か——それぞれ必要な粗さや平滑さが違います。
劣化の深さ。 中性化や酸による侵食がどこまで進んでいるか。健全部が現れる深さまでは落とす必要があります。
かぶり厚と鉄筋の位置。 削りすぎれば鉄筋のかぶりを失います。残すべき厚みとの兼ね合いで上限が決まります。
仕様書の指定。 削り代が寸法で示されている場合は、それが基準になります。
私たちは、この4点を仕様書と現場の状態から突き合わせ、着工前に元請・防食業者とすり合わせます。

円筒形の槽内での下地処理。壁面の左側が施工前、右側が削り終えた面
現地調査で見ているもの
現地では、削る範囲以外にも確認することがあります。
電源と給水がどこから取れるか。排水と濁水処理の設備をどこに置けるか。装置車両を停める場所と、ホースの引き回し。足場の要否と規模。換気とガスの条件。搬入経路の幅と高さ。そして、施設を止められる時間帯。
これらが揃って、はじめて現実的な工程と見積もりが出せます。 図面と写真だけでも概算をお出しすることは可能ですが、条件が変わりやすい要素はここに集中しています。

装置の系統。発生装置から高圧ホースを経てガンへ送る
下地処理を「専門にしている」ということ
下地処理は、工事全体から見れば地味な工程です。当社は創業以来、この工程を主力にしてきました。25年で1,167件・428,690㎡。施工面積のおよそ92%がこの工程です。
判断の速さは工期に出ます。どこまで落とすかで迷わないぶん、無駄なく進められます。
拠点は北九州市(事業センター)、福岡県糟屋郡(福岡営業所)、沖縄市(沖縄事業所)。福岡を中心に九州各県と沖縄で施工しています。
除去状態と鉄筋の状態は写真で記録し、断面修復業者へ引き渡す資料としてお渡ししています。

ハンドガンによる施工。反力を身体で受け止めながら面を送る
まとめ
防食工事の寿命を決めるのは、最後に塗る材料だけではありません。その下がどうなっているかです。
もろくなった層を確実に取り除き、必要な粗さをつくり、健全な素地を出しておく。この最初の一手が甘ければ、後の工程がどれだけ丁寧でも結果はついてきません。逆にここをきちんと仕上げれば、断面修復材の付きがよくなり、防食層は長く持ちます。
検討にあたっては、①削り代の考え方をすり合わせられるか ②濁水処理まで含めた段取りを提示できるか ③施工記録を次工程へ引き渡せるか——この3点を確認されることをおすすめします。
ご相談ください 「どこまで落とすべきか」「この仕様書の要求をどう満たすか」という段階からご相談いただけます。現場の写真と図面、仕様書の該当箇所をお送りいただければ、除去範囲の考え方と必要な段取り、概算の工程をお返しします。 対応エリア:福岡・北九州を中心に九州全県、沖縄。 お電話:093-475-7263(事業センター)